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第47話 忘れた頃に・・・

第47話 忘れた頃に・・・


「はぁ?なんやそれ、もう一回言ってみぃ!!」

島岡はすごい剣幕で怒鳴った。その声は音楽室中に響き渡る。

皆はビクッとした。比較的温厚である島岡が、ここまで怒りをあらわにするのは見たことなかったからだ。

「まぁ、落ち着けって。ちょっと謹慎になっただけの話なんやから。」

島岡と話をしていた沢木が、少し冷や汗をかきながら島岡を落ち着かせようとした。

「あほか!これが落ち着いてられるか!!あいつらだけが謹慎ちゅ~のが気に食わんのや。ある意味部全体の責任やろうが!」


話を少し前に戻そう。

三浦は放課後になってすぐ小柳先生に呼ばれた。なんやろうと思い数学研究室に入るとそこには南川・朝倉・小路の3人がそこにはいた。

「これで全員揃ったな。」

小柳先生は少し剣の入った声で言った。

三浦は少し首を傾げた。どうも事情を把握していないようである。

「とりあえず、事実確認だけするぞ。お前ら合宿の4日目の朝、無断で山に登ったな?」

三浦はその言葉を聞いた瞬間、「あっ!」と声を出してしまった。

三浦は即座に小柳先生に睨まれると、少し小さくなった。

「おい、南川!何か言ったらどうなんや!」

ドンッと机を小柳先生が叩くと、

「はい、間違いありません。申し訳ありませんでした。」

と、南川が頭を下げて言った。

「「申し訳ありませんでした。」」

3人も同じく頭を下げる。

その様子を見ていた小柳先生は先ほどの怒気はなかった。静かに答える。

「そうか、事実か・・・」

少し考えた後。小柳先生は話を続けた。

「1年3人、お前らは3日間クラブ停止と今回のことについて反省文提出。」

「「はい・・・」」

3人は少しうなだれて答える。

「それから南川、お前は監督不行き届きもあるから、無期限クラブ停止と反省文提出。その間、副部長が部長代理になる。分かったな。」

「はっ、はい」

南川も同じく返事をするのみであった。


「・・・というわけで、暫く私が部長代理となります。では、よろしくお願いします。」

「「・・・」」

「返事は?」

「「・・・よろしくおねがいします。」」

いつのも騒がしい音楽室はなく、部員も覇気がなかった。

挨拶の後、皆黙って楽器を持って音楽室を出た。

「松島~ちょっとええか!」

島岡はまだ怒っているのか、怒気を含ませた言葉で言う。

「な、なんや?」

松島は少し引き気味だ。

「悪いけど、今日は一人で練習してくれへんか?」

「ええけど、何する気や?」

「そんな怯えた顔するなや、ちょっと職員室行くだけや。」

「ちょっとってお前・・・」

「島岡君、あかんよ!これは決定事項なんやから・・・」

後ろにいた古峰が言う。

しかし、島岡は止まらなかった。

「別に殴りこみにいくわけやないんや、ちょっと話をしに行くだけや。せやから・・・どかんかい!!」

島岡の怒声に古峰は一瞬目をつぶってしまった。若干涙目だ。

その隙に島岡は、すっと音楽室から出て行った。

「あ、あんたまで謹慎なったら今高祭どうすんのよー!」

古峰は島岡の後姿に大声で言ったのであった。


それから15分後・・・

「失礼しま~す、小柳先生いますか~?」

島岡はぶっきらぼうに言う。

「なんだ?島岡か。ちょっと待ってくれるか。」

小柳先生は島岡の姿を確認してそういうと、机の上を片付け始めた。

「ええぞ、ちょっと場所変えるか。」

2、3分後、小柳先生はそういうと奥の部屋へ移動した。島岡も「失礼します」と言って続く。

そこはちょっとした談話室だった。机と椅子が4脚ある。

小柳先生は島岡に席を勧めると、お互い向き合うように座った。

「で、話ってあれか?」

小柳先生から切り出す。

「そうです、南川の謹慎の話です。」

「お前、不服か?」

「不服とか違うでしょ?あれはみんなが止めれなかったんです。部として全員が背負うべきだと思っているんです。」

「お前も加担したんか?」

小柳は問う。島岡は歯切れの悪い感じで答えた。

「自分は・・・寝てました・・・」

「他の部員も大半は寝てたんちゃうか?」

「・・・そうですね」

「そうれでどうやって止めれるんや?」

小柳先生の言葉に島岡は少し考えた。そして答える。

「・・・事後に先生に報告しなかった責任はあると思います・・・隠しただけでも共犯かと・・・」

「確かにそれはあるな・・・でも、今は私も知っている。これで十分だと思うが、違うか?」

「・・・」

島岡は答えられない。さらに小柳先生は続ける。

「責任いうたら、私も監督不行き届きあるからな。親御さんから大事な子供を預かっておきながら危険な目に合わせたんや。事故がなくてもな・・・」

島岡には返す言葉がなかった。

しかし、小柳先生はそんな島岡を見て、ニッコリ微笑んで言った。

「あと、お前勘違いしているようやから言っとくけど、無期限クラブ停止って言っても、あれの反省文次第ですぐ解くつもりやぞ?」

「!?」

その言葉に島岡は驚いた。彼はてっきり南川は部長職を解かれ、さらに退部になると思っていたからだ。

「但し、反省文によっては無期限のままやがな。あいつは部長なんや。それなりの覚悟がないと困る・・・その為の反省文やからな・・・」

「ええ・・・まぁ・・・」

「まったく、お前と言い古峰と言い南川も相当慕われてるな。」

「古峰さん・・・もですか?」

「そうや、ここだけの話、『私にはこのまま部長を続けれる自信がありません。もし、彼を辞めさせるなら私も副部長辞めさせてもらいます。』って言ってきたわ。」

「・・・」

「あと、お前の胸に仕舞ってる紙、処分しとけよ。受け取る気はないからな。」

「・・・!」

何もかも見抜かれた島岡は、もう言葉は出なかった。最後に小柳先生は優しく言う。

「心配するな、一週間もしたら南川はクラブに顔出せるはずや。私が思っている通りの男やったらな。」

「わ、分かりました。」

そういうと島岡は「失礼しました」と大きな声で言うと、談話室から出て行った。


それから一週間後、南川は音楽室に顔を出した。ちょっとばつが悪そうな顔をしたが、皆は笑顔で「「お勤め、ご苦労様です。」」と言って出迎えたのである。

そして、今高祭まであと一週間に迫っていた。


夏合宿の付けがこんなところで・・・でも、心なしか皆の団結力が強くなった気がします。

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