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第44話 もう一つの戦い

第44話 もう一つの戦い


夏合宿が終わった次の日のことである。

三浦は今高祭の曲の練習をしようと、昼過ぎに練習に来ていた。

そこには2年生の部員も着ており、その中には島岡もいた。島岡は朝から来ているらしい。

そして早速島岡に、今高祭の曲を教えてもらっていたのだ。

暫らくするとそこへ柏原が近づいてきた。

「今からあそこ行かへんか?お前、ず~と急がしい言うて全然付き合ってくれへんかったやろ?」

突然の柏原の言葉に島岡は少し考えてから、「ええで~、今日は予定ないしな~」と答えた。

「一体どこいくんですか?」

三浦は少し首をかしげてそう聞くと柏原は言った。

「ビリヤードや。なんやったらお前も来るか?」※1


その場所は学校から徒歩15分のところにあるボーリング場の2階。

そこには6人の男たちが自分の体に合ったキューを持ち、3台のビリヤード台を取り囲んでいた。

ホワイトボードには、南川・柏原・沢木・島岡・中嶋・三浦の名前が書かれていた。

彼らの行う競技の名前は「9ボール」。要するに9の数字の玉を落とした人が勝ちというあれだ。技術もそうだが運の要素も強い。

ここで彼らのビリヤードの特徴をしておこう。結構、性格が出ている。


・三浦

我らの主人公である。優等生の彼は手堅く、確実に一つづつ玉を落とす。コントロールもあり、安定感がある。

・柏原

『爆音トランペッター』の名に相応しく、豪快に玉を弾き飛ばす。玉がポケットに落ちるときは「ガシャン、ゴトン」と大きな音を立てる。特にブレイクショットによるエースは要注意だ。※2

・中嶋

ニヤニヤしながらトリッキーなクッションボールを多用し、積極的に9ボールを狙う。玉が数多く散在している序盤にめっぽう強い。

・南川

ミスするような配置にして相手側に渡す。その後、フリーで白玉を置き有利に試合を展開する。体格に似合わずちょっと姑息だ。※3

・島岡

一か八かのジャンプショットやマッセで一気に9ボールを攻めてくる。また、右手と左手を変えてショットが打てるため背面打ちがない。※4

・沢木

平凡。かなり平凡。とてつもなく平凡。一番普通である。キューを持った謎の・・・「ほっとけ!」


勝負と言うからには彼らは賭けていた。一番負けた人はジュースおごりという罰ゲームが。

各対戦の試合内容はこうだ。


1週目

・柏原vs三浦

ブレイクショットから柏原が豪快にガンガン攻める。そして、8ボールを狙ったとき・・・勢いがありすぎ台から白玉がこぼれファール。三浦が難なく8、9と落とす。

・南川vs沢木

これでもかという南川のボール配置に沢木は苦戦。ファールが連発し南川の勝利。

・中嶋vs島岡

台には、すべてのボールが残る混戦に。中嶋は3クッションで9ボールを狙うが・・・勢いがなくなりポケット寸前で止まる。島岡のジャンプショットが炸裂し、9ボールがポケットに落ちる。


2週目

・三浦vs南川

三浦が手堅く攻めるが、6・8・9を残して南川に代わる。しかし、この玉数では南川の戦術は余り効果が無く、8・9を残す。三浦が難なく落とし、三浦2連勝。

・沢木vs中嶋

ボールがどんどん減っていき、少なくなったところで何故かお互いボールをポケットに入れることができなくなってしまう長期戦に。こうなると中嶋はとたんに弱くなる。沢木の勝ち。中嶋、痛恨の2連敗。

・柏原vs島岡

柏原必殺のブレイクショットが炸裂。9番ボールはよたよたとポケットへ。あっけなく終了。

「納得できん!」


3週目

・南川vs島岡

台にはボールが結構残り南川有利に見えたが、島岡には南川の戦術が通じなかった。無理やりのジャンプショット・マッセを使用し、結果的に南川が追い込まれる。島岡2勝1負、南川1勝2敗。

・三浦vs中嶋

三浦が律儀に1番からどんどん玉を落としていく。だが、安定はしている。このままストレートで三浦が勝つかと思われたとき、痛恨のミスショット。中嶋が勝ちを拾う。三浦2勝1負、中嶋1勝2負。

・沢木vs柏原

沢木がブレイクショットをミスし、全く玉が散らばらない状態に。その後、柏原が豪快に玉を弾き飛ばす。5回もクッションに当たった9ボールがよろよろとポケットにIN。勝利の女神は柏原の元へ。柏原2勝1負、沢木1勝2分


時間的に最終戦になる。ここでは3人で行うという変則ルールで行う。

2勝している三浦・島岡・柏原と1勝している中嶋・南川・沢木の2組に分かれた。

2勝組みで勝った人に、1敗組みの負けた人二人が奢るというルールとなった。


まずは負け組みから見てみよう。

順番は、沢木・中嶋・南川だ。

沢木のブレイクショットは6番がポケットへ。9番は真ん中で動かなかった。

1番を落とすも、2番が落ちず中嶋へ。残るボールは2・3・4・5・7・8・9。

中嶋は9番は無理と見て、2番から7番を落とし、2番も次で入れる。次は南川の為、余り残したくなかったが、3番から5番を狙い5番が落ちず交代。3・4・5・8・9。

南川が3番を落とし、ここでいやらしくいつもの戦術へ・・・4番が8番の影に。

困った沢木は、一か八か3クッションを使って4番を狙うが・・・白玉は4番でなく9番に当たる。9番はころころとポケット付近へ・・・

そして、順番は・・・中嶋だ。南川は(しまった!)と思ったが後の祭りだ。フリーで置いた白玉で難なく4番から9番を落とし勝負が決まった。負け確定、沢木・南川。


一方勝ち組戦では・・・。

順番は、島岡・三浦・柏原の順だ。

島岡が何を血迷ったのか、ブレイクショットをジャンプショットで行った。一番に当たったが、白玉は奥へバウンドした。玉も散らばらず1番は玉の塊の向こう側だ。

「くそ、1番の後9番当たって蹴散らせるはずやってんやけどなぁ~」

島岡はそう言ったが、三浦は大変困っていた。最低でも3クッションしないと1番には当たらないのだ。慎重に打つ。ゆるゆると白玉は1番に吸い込まれる。軽くカツンと当たると、そのまま止まった。白玉と1番の間は数ミリである・・・

柏原も困った。この距離だといつもの豪華なショットの威力が半減するからだ。しかし、かまわず打つ。が、予想通り玉はあまり散らばらず、どの玉もインしない。

そして再び島岡だ。ニヤッと笑うと、またもやジャンプショット。6番を飛び越し、1番から9番へとつなげるつもりだったが・・・失敗し6番に当たる。台の上は9個の玉がある。

三浦は、白玉を端に置くと1番を狙う。1番は9番に当たり、ポケットへ。あっけなく幕を下ろしたのであった。


「な~んか納得いかんぞ~」

「それは俺の台詞や!」

島岡の言葉に柏原が突っ込む。横では三浦が勝利のジュースを飲んでいるのであった。


※1 当時、映画「ハスラー2」の影響でビリヤードが流行っていました。この小説に出てくるルールはかなりローカルです。実際のルールと異なる箇所がありますが気にしないでください。

※2 一番初めの状態から9番ボールを落とすこと。そうそう出るものではない。

※3 ルールとして最初に白玉を一番若い数字のボールに当てないといけない決まりである。これが失敗するとファールとなり、相手が白玉を自由に置ける権限を持つ。本当のルールでは置く範囲が決まっていますが、ローカルルールとして白玉を自由に置いていいということにしています。

※4 背面打ち。キューを後ろに回して打つ打ち方。白玉と的玉の位置が普通の体制で打てない時行う。やってみると判るが、あまり力が入らず、白玉の上っ面を突いて結構失敗する。あと、マッセは普通禁止です。(笑)


吹奏楽とはまったく関係のない話でしたが、ちょっとした彼らの一面でした。


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