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第43話 さよなら高原、ただいま音楽室

第43話 さよなら高原、ただいま音楽室


次の日の朝食後、部員・OB全員が広間に集まっていた。さすがに昨日の晩は皆ぐっすり眠ったらしく、眠そうにはしていない。一人を除いては・・・犬井は相変わらず船を漕いでいる。

「いつも教えている側の私ですが、ここでは教わる側でとても新鮮でした。そして昨日のアンサンブルでは楽器の難しさを痛感し、またすばらしさを教えてもらいました。戻ってからも時間が許す限り寄ると思いますので、楽器のすばらしさを引き続き教えてください。また、OBの方々もこの生徒たちにご指導をどうかよろしくお願いします。最後になりましたが、ロッジアサヒのスタッフの方々、短い間でしたがありがとうございました。」

顧問の小柳先生が、最後の挨拶を締めた。部員・OB全員から大きな拍手が起こる最中、

「ありがとうございました!」

と、南川がロッジアサヒのスタッフに礼をする。

「「ありがとうございました!!」」

それに続き、部員たちも声と共に礼をしたのであった。

これで、今年の夏合宿は終わりだ。後は帰路に着くだけなのだが・・・

(そういえば、石村さんたち・・・・やっぱり帰りも自転車なんかなぁ・・・)

三浦はふとそう思った。しかしそれも杞憂に終わったようだ。実はあの自転車たちはあの後宅急便で自宅に送ったらしく、現役生ということで帰りは一緒に観光バスで帰れるそうだ。小柳先生が前もって手配していたらしい・・・3人は自転車で帰る気満々だったのだが・・・


「おい、そこ~、さっさとパーカッション運べよ~」

島岡が楽器運搬の指揮を取る。平田も同様に指揮を取っていた。実は平田は楽器部の前部長で、今では永久名誉部長(なんじゃそりゃ)という形で楽器運搬を手伝っている。

そもそもティンパニーやベードラの手作りケースは彼の作だ。リヤカーを引き、学校の周りの商店からダンボールを集めて作ったという(つわもの)だ。今年は補強するのだと張り切ってるとか・・・余談ではあるが、余ったダンボールはそのまま売り、リヤカー引きのメンバーのジュース代となったとか。※1

この二人の指揮、船頭多しという感じはするが二人の息は合っている。主に島岡が指揮を取るが、目が届かないところは平田が取るという自然な流れだ。行きの搬入より早く終わった。

観光バスは駐車場から離れ、彼らがお世話になったロッジはどんどん遠くになる。

三浦はその風景を見て色々思い出す。楽しい思い出ばかりであった。が、いつもの面々はバスの中。大人しくしてるわけではなかった。

まずは前席。島岡・大倉が座っている。帰りも大倉が古峰と入れ替わったのだ。

「は~い♪あ~ん♪」

「自分で食えるわい!」

いちゃついてるのか、いちゃついていないのかよく判らない風景だ。追う大倉に逃げる島岡という感じか。

そして通路を挟んで横の席・・・小路が怖い顔をしていた。オーラが黒い。視線の先は・・・島岡であった・・・

小路の隣は犬井である。だが既に夢の中だ・・・・

(あの人、一体何時間寝るつもりなんだろ。)

前は前で南川と岩本が二人の世界に入っていた。普段はそういう素振りをまったく見せないのだが、いつの間にかそういう雰囲気を作っている。近くでは小柳先生が狸寝入りを決め込んで、見てみぬ振りをしている。さすが大人?だ。

一番後ろでは、石村・平田・寺嶋の3人組|(途中で来たため席は特に決まっていない)と中嶋はこっそり盛り上がっていた。小さい声ではあるが「リーチ」とか「ロン」とか聞こえる。

そして意外なのが、楠田と松島の二人だ。いい感じで話をしているようだ。

そんな面々を見ていた三浦だったが、不意に肩に重さが掛かった。

古峰が三浦にもたれ掛ったのだ。可愛い顔をして「すーすー」寝息を立てている。

三浦は、まいったな~と思ったが、ちょっとにやけてしまった。普段の彼女の凛とした姿はどこにもなく、可愛い顔で可愛い寝息を立てているのだから。

起こすのも可愛そうだと思った三浦は、そのまま肩を貸してぼーと窓の外を眺めることにした。しかし、心地いい車内は、三浦を夢の世界へと(いなざ)うのであった。

観光バスは、そんな彼らを乗せて一路大阪を目指した。


楽器を音楽室に運び込み、綺麗に直し終わったのはもう5時近くなっていた。OBたちも車に分乗して音楽室に来ていた。

「ごめんね、三浦君。なんか巻き込んじゃって。」

古峰は苦笑いしながら手を合わせて言った。

実はバスが高速を降りたときに、二人が寄り添うように寝ていたのに気づいた鈴木がはやし立てたのだ。まぁ、からかうと言うより羨ましい度合いが強かったが・・・

「そんなことないですよ。役得でした。」

三浦は笑って答えると、古峰は「もぅっ」と言って叩くふりをする。はたから見たらちょっとしたバカップルであるが、本人たちはつゆとも思っていない。

「はいはい、いちゃつくのは帰りにでもして~や。」

後ろから南川はニヤニヤして言ったが、二人はお前がいうなっ!と心で叫んだのであった。

「それじゃ~はじめんで~」

南川が前に立つとざわめきがだんだんと静かになる。

「これで夏合宿も終わりです。次の部活は3日後、午後1時からになります。一応、明日から練習の許可取ってるから、練習しててええで。では、お疲れ様でした~」

「「お疲れ様でした~」」

南川の挨拶に皆がいつものように答え、夏の大イベントであった夏合宿は終了した。

次のイベントは一ヶ月半後に迫った今高祭である。

三浦は気持ちを切り替え、明日から練習に来ようと心に誓ったのであった。


※1 リヤカーも借りました。当時で1日50円だったと思います。(少し記憶が曖昧ですが・・・)


夏合宿も終わりホームグラウンドに戻ってきた今高吹奏楽部。次は今高祭に向けて練習を始めるのでした。

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