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第38話 大阪超特急(エクスプレス)?

第38話 大阪超特急(エクスプレス)


「昨日の模試どうやった?」

「あかん、散々やった。」

「俺もそうやったけど、そういうときこそパ~と遊びに行かんとな~」

3人の男たちはそういうと愛車に乗ったのであった。


合宿2日目、大阪と違い朝は涼しい。そして朝ごはんも美味しかった。

三浦はいつも思うのである。いつもならめんどくさがって食べない朝食も、なぜか旅にくるときちっと食べてしまう。ご飯と生卵、のりに焼き鮭、香の物と温かい豆腐の味噌汁。旅館の定番の朝食であるが、全員がぺろりと平らげたのであった。


基礎練習も終わり、今高祭に向けてパート練習を始めるとき、島岡は1枚の楽譜を渡した。

「パー練の前に、ちょこっとこれせえへんか?」

「これ、もしかして・・・アンコンの曲ですか?」

「せや、ちょーどホルン4重奏でええ曲あったから、もってきたんや。」

「用意ええなぁ。グリーンスリーブスか。それに手書きや。島岡が作ったんか?」※1

「んなわけあれへん。作ってもらったんや。」

「坂上にか?」

「それは・・・内緒や。」

三浦は「ん?」と傾げたが、もらった譜面には「1st&2nd」と書かれていた。

「これ僕は2nd吹いたらいいんですよね。」

三浦の言葉に島岡は「ん~」と一呼吸置き続きを話した。

「これなぁ~、三浦か松島どっちでもいいから1st吹かへんか?俺は今回3rd吹くから。」

「「ええ!?」」

二人は驚いた、いつもならこういう場合は1stが島岡だ。

「そんなに驚かんでもええやろ。譜面も中音を中心とした旋律や。難易度も高くないし身内だけのコンクールや。たまにはええやろ。」

「え、でも・・・」

三浦はどもった。島岡はそう言うが、中音こそ島岡の独壇場である。あの澄んだ響く音は誰にも真似出来ない。

「よっしゃ、先輩命令や。三浦1stな。俺2nd吹くわ。」

松浦は理不尽に言う。この中で一番下っ端の三浦は、どうすることもできなかった。

「さっそくやってみよや。三浦~トップやから合図頼むで。」

「え!?」

もう、三浦は驚きの連続だ。1stそれも合図も出せというのだ。いつも合図はもらっている側なので、とっさにどうすればいいか判らなかった。

「合図って・・・口でサンシーって言えばいいんですか。」

「それでもええで~、格好つけるんやったら、ベルで振ってもええ。さんで下に振ってしーで上げるんや。ちょうど正拍でいつもの吹く位置になるからやりやすいで~」

「う~~ん」

三浦は少し悩んだ末、「練習で試していいですか?」と言う。

島岡の「ええで~」の声でさんしーと頭で数えながら上下に振る。思った以上にやりやすかった。

「ではいきます。」

三浦はグリーンスリーブスのテンポに合わせホルンを振る。3本が織り成すグリーンスリーブスが始まった。

三浦の明るい音が旋律を勤める。それを松島の音が支える。派手でもないがホルン独特の優しい音だ。そしてそれを引っ張るのが島岡の伴奏だ。力強いその低音は、土台をしっかり支える。3rdと言いながら場面場面で4thを吹いているのだ。

(これは・・・)

三浦はとても吹きやすかった。どれほど旋律が歌っても、対旋律・伴奏がそれに答えてくれる。曲は2分と短かったが至福の時間を過ごしたのであった。

「ええ感じやん。」

「ほんまやな~ちゅうか、三浦歌いすぎや~。対旋めっちゃ大変やったぞ。」

松島は笑いながら言う。言葉と違い結構うれしそうだ。

「いや~、もうすっごく吹きやすくて、調子に乗っちゃいました。」

三浦は頭をかいて答える。

「しかし、もう1本欲しいなぁ・・・ところどころ4番吹いたけど、やっぱり4本用に書いてもらったからものたりんなぁ・・・」

「いざとなったら、更科さんにしてもらわれへんのか?」

松島は名案とばかりに言った。

「どうなんやろ~パートでOB混ぜたらまずいんちゃうかな・・・石村さん着てくれたら問題ないんやけどな~」

「確か・・・3年生は模試中ちゃうんですか?」

「まぁ、考えてもしゃ~ない。更科さん無理やったら、3本でいこや~」

島岡が最後にそうまとめると、もう一回合わせたのであった。


「なぁ、おれらででアンコンせぇへん?」

昼食時の食堂で三浦は鈴木・小路の前で言った。

「ええけど・・・曲あるんか?」

「おっ、ええで。やろやろ。」

鈴木と小路は三浦の言葉に反応した。

「音楽室の楽譜漁ってたらでてきたんや。金管四重奏やで。」

三浦はそういうと楽譜を二人に見せた。結構古い楽譜であるが、特に問題はない。題名がイタリア語なのかドイツ語なのかはわからないが、カンタータの部分だけは読めた。

「これラッパ2本いるなぁ。丸ちゃん呼ぼか。」

小路はそういうと、少し離れた席に居る丸谷を呼びにいった。

「三浦~しかし、ようこんなの見つけたなぁ。高音部分あるけど、そんなに早くないし、俺でもいけそうやな。」

「そうそう。俺もちょっとむずいけど、これやったら吹けそうなんや。」

二人でそう言っていると、小路は丸谷を連れて戻ってきた。どうやら出てくれそうである。

「ほい。これラッパの分。どういけそう?」

「ん~~2ndならいけそ・・・あれ、途中で1stと2nd入れ替わってるやん。」

丸谷は譜面を見ながらそう言うと、少し冷や汗をかいていた。

「いけるいける~入れ替わってるのもちょっとの小節やし問題ないやろ~」

小路は軽く言う。丸谷はそれでも「う~ん~」と悩んでいた。

「まぁ身内の大会やし、気軽にいこう。練習曲やと思って。」

三浦はそういうと、やっと丸谷は観念したのか「わかったわ」と言う。

「じゃぁ、メンバーも揃ったところで、明日の昼に合わせへん?それまでに各自さらっておくってことでええかな?」

「「「了解!!」」」

3人は揃っていうと、早速楽器の置いてある広間に向かうのであった。


「・・・というわけで、明日の昼ちょっと抜けていいですか?」

三浦は島岡に明日の話をした。

「かまへんで~ええ機会やし、どんどんやったらええねん。アンサンブルほど気楽に自分の音楽作れるもんないからな。お互い聞いて、言い合ったらええねん。」

「あ、ありがとうございます。」

三浦はほっとしてお礼を言った。さらに島岡は続ける。

「せや、俺の方から中嶋と沢木に言っといたるわ。ついでに俺も他の団体の練習するかな。松島はどうする?」

「せやな~俺も木管とこ行くかな。今から言っといたら調整つくやろ。」

「へ~島岡さんも松島さんも、他の団体で出るんですか?」

二人の言葉を聞いた三浦はそう問うと島岡が答えた。

「俺は金管5重奏や。松島は木管6重奏の中にホルンとして入るんや。」

「それほんまはお前に木管の連中来っとたのに、無理やり俺に回したんやないかい。」

「ん~、木管やったら俺よりもお前の音のほうが栄えると思ったんやけどなぁ~」

松島の愚痴に島岡はそう答えると、松島は「ほんまかいな~」と言って頭をかいた。ちょっと照れているみたいだ。

「そういうことで今から調整しに行くか。あとで集まってパー練するで。」

「はい」「OK~」

3人はそう言うと、分かれて各パートに回るのであった。


三浦はその晩、2階の窓で金管4重奏のスコアーを眺めていた。ヘ音の譜面の読み方も島岡に教えてもらい楽に読めている。「そのままト音にして、E♭読みしてみ~」という無理やりな読み方だったが・・・※2

そのままぼ~と外を見てみると、小さな明かりが動いてた。三浦は「なんやろ~」っと思っていると、その明かりはどんどんこのロッジに向かっていた。明かりは3つだ。

近づくにつれその正体が明らかになる・・・自転車だ。3台の自転車がエッチラホッチラとロッジに向かって来るのである。

「「「つ、着いた~~~~~~」」」

ロッジの前についた3台の自転車は崩れるように倒れ、3人の男がロッジに転がり込んできた。

「石村さん・・・それに平田さんと寺島さんじゃないですか。ここまで、自転車ですか!?」

玄関に下りた三浦は、3年の3人にそう問いかけた。

「そ、そうや~ほんま、疲れたわ~~もう寝る~~~~っ」

寺嶋はそういうとそのまま倒れこみ、ピクリとも動かなかった。残った二人も同様である。

(・・・帰りも自転車で帰るんかな・・・)

三浦は集まった南川たちと一緒に3人を運ぶと、呆れ顔でそう考えたのであった。


※1 グリーンスリーブス。伝統的なイングランドの民謡で、ロマネスカと呼ばれる固執低音の旋律をもつ。作者は不詳である。

※2 トロンボーン・チューバなどの中低音・低音の譜面はへ音記号のC調譜面です。(ピアノと同じですね)五線譜の第5線のさらにもう1本上(上第1線)がCになるのですが、そこを無理やりト音記号のCとすると・・・あら不思議、その位置はE♭調譜面のCの位置だったりします。無理やり読んでいる為、半音違うところがあったりしますが概ね合ってます。


本格的にアンサンブルコンテストの準備が進み、三浦も初めて1年だけで演奏に臨みます。しかし・・・3年の方々は相変わらずです。

最近、落ちでサブタイトル決めてるなぁ・・・

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