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第3話 離れの木造小屋

第3話 離れの木造小屋


「なぁ、鈴木。お前クラブどっか入る予定あるん?」

昼休み中、三浦は鈴木に聞いた。

「いや、まだやけど?」

「ならちょっとクラブ見学に行かへんか?」

「ええけど、どこにするん?」

「吹奏楽部。」

「ふ~ん、まぁええけど。部室はわかってんのか?」

「音楽室みたいやで。」


音楽室。大抵の学校であれば校舎内にあると思われるが、この学校は違っていた。

場所は正門からグラウンドの挟んでちょうど対面にある木造2階建ての建物で、校舎と体育館の間にある。

音楽室に行くには、校舎から申し訳程度でしかない雨よけがある渡り廊下でいくか、グランドを横切るかである。


放課後、三浦たちは音楽室に向かった。

既に部活は始まっているらしく、楽器を持った部員たちが渡り廊下の金網側(金網の向こうはテニスコート)に立ち、メトロノームをその反対側(グランド側)に置き、渡り廊下の幅一杯を取って様々な音色を奏でている。

時折、ラグビー部やらサッカー部の体育会系の部員たちがその廊下を走っていく。

(あれって、お互いに邪魔にならへんのかな?)

三浦はそう思っていたが、本人たちはそう思ってはいないらしく、どちらも何事もなく練習をしている。


そうして渡り廊下を進むと音楽室のある建物に着いた。

1階をみると綺麗な木目の和式の引き戸がある。こちらは茶道部らしい。※1

音楽室はそのまま階段を上がった2階にある。

2階からは「カタタッカタタッ」という軽快な音や「ブォー」という低く大きな音が聞こえる。

三浦たちが階段の下まで来ると、その「ブォー」という低音の音が止まったと同時に声がした。

「お前ら、入部希望者か?」

声は2階の踊り場にいる男子生徒が発したものだ。

彼の背は170cmくらいであろうか。体は細身である。

だがそれよりも大きな楽器を軽々と操っていた。

「はい、クラブ見学にきました。」

三浦はそう答えると、その男子生徒は楽器を逆さまにして床に下ろした。そして大声で言う。※2

「新入部員が来たぞ。それも男二人だ。誰か岩本か古峰呼んでこい。」

そうすると2階から「カタタッ」という音が鳴り止め、替わりに「お~」とか「きゃ~」とか歓声が聞こえる。

そのうち、一人の女子生徒が音楽室からでてきて、二人を音楽室に入るよう手招きをしたのであった。

二人は音楽室に入り、中を眺める。そこには、色々な打楽器が所狭しとなく並んでいた。

三浦らがその打楽器群をぼ~と眺めていると、先ほど踊り場で吹いていた男子生徒が話しかけてきたのである。

「おい、そこのでかいほう。名前はなんちゅうんや?」

「鈴木といいます。」

「そうか、俺は寺嶋や。一応3年な。そっちのは?」

「三浦です」

「そうか~。でだ、どっちかチューバせえへんか?低音の渋みがええぞ~、俺がみっちり教えるから、な、な」

すると、打楽器の方から声がした。

「寺嶋さ~ん、ダメですよ。可愛い後輩を悪の道に誘っちゃ~。どうせ麻雀とか競馬とか教えるんでしょ。」

三浦がそちらの方を見ると皆「うんうん」とうなずいていた。

「あほか~、それはそれ、これはこれや。部活中にはせえへんちゅうねん。」

すると打楽器の方から一人の男子生徒が三浦のところにきた。

「金沢っていう、2年や。当然、パーカッションに来るよな。」

さらっと勧誘文句を言う。

勿論、そんなやり取りを寺島が黙って見ている訳はない。

「おいおいおいおいお~い、パーカッション人十分いるやろ~。こっちとら一人しかおらんねんぞ。こっちにも人回して~な。」

「いえいえ、まだまだこっちは人が足りてませんよ。」

寺島と金沢は二人そっちのけで、新入部員の取り合いをはじめたのである。彼らはまだ『入部』するとも言っていないのにだ。二人は呆然とそのやり取りを見ている。


その時、後ろからパタパタと足音が聞こえた。

「はいはい、そういうのは二人に希望聞いてからね~」

三浦は後ろを振り向くとそこには、長く綺麗なストレートヘアーの黒縁眼鏡を掛けた女子生徒を見た。色白で知的な顔つきは『お姉さん』といった感じだ。

「初めまして、マネージャーをしている岩本(いわもと)といいます。とりあえず、ここに名前と希望するパート書いて。」※3

そう言って岩本は『クラブ見学者名簿』という紙を三浦たちに差し出した。

既に10名ほど書かれており、名前や希望するパート等が書かれてあった。

さっと名前だけは書いた三浦であったが、希望パートで悩んでしまった。

自分としては金管楽器をしてみたいが、詳しい楽器が浮かんでこないのである。

それは鈴木も同様であって二人は取り合えず名前だけ書いて岩本に返したのであった。


それを見た岩本は、「もしかして、初心者?」と聞いてきた。

二人は頷く。

「じゃぁパート回って楽器紹介しましょうか。付いて来て。」

岩本がそういうと音楽室を出ようとする。二人はその後を付いて音楽室を後にするのであった。


※1 著者が在籍していた3年間、茶道部員の姿は数回しか見たことがありません。どうしてでしょう・・・

※2 チューバを床に置く時はベルを下にしてそのまま置きます。

※3 マネージャー。このクラブでは体育会系のクラブの様な雑用係ではなく、主に部員の管理や渉外等の仕事をします。


さぁ、いきなり濃い部員に絡まれた二人。それはさておき、二人はどの楽器を選ぶのでしょうか?

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