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第33話 次なる舞台は?

第33話 次なる舞台は?


コンクールの翌日、音楽室に適当に置かれていた楽器類はきれいに片付けられた。

机や椅子は合奏の隊形ののままではあるが。きっと夏休み中はずっとこのままだろう。

今日は練習はない。今後の予定されている行事のミーティングだ。


黒板にはこう書かれてあった。

8月中旬:夏合宿

9月下旬:今高祭

3月下旬:合同定期演奏会


ここで各行事を説明しよう。

夏合宿は、元々は府大会・支部大会へ向けての強化合宿であったが、この数年は楽しい行事として定着している。

今高祭(いまこうさい)は、文化祭と運動会(体育祭)が一緒になった学校行事である。2日に掛けて行われる。

合同定期演奏会、通称『合同』は、吹奏楽部とOB・OGが中心となって活動してる一般団体『今高ウィンドオーケストラ』と一緒に行う定期演奏会のことだ。更科や大橋・河合はこの団体に所属している。


「夏合宿は例年通り最終日の前日の夜にアンサンブルコンテストするからな。曲は出演団体で探しといてや。今高祭は、文化祭の曲と体育祭の曲募るわ。文化祭は6曲くらい、体育祭はマーチ3曲や。とりあえず、今、こんなんしたいちゅうのがあったら言ってええで。1年もどしどし言ってや。」

南川はそういうと周りはざわざわしはじめた。


「先輩、アンサンブルコンテストってどういう編成になるんです?」

三浦は島岡にそう聞いた。

「各パートで1団体は確定や。それと、有志で組む団体も有りや。木管五重奏とか金管五重奏とか。金打・木打でもええで。所属する団体は自信があるんやったら、何団体でも掛け持ちありや。まぁ、大体は自分とこのパートとプラス1くらいやな。」

「じゃぁ、ホルンパートは三重奏ですね。」

「そういうこっちゃ、それとお前は1年金管で組むんもありやな・・・なんや、ラッパ2ホルン1ボーン1ユーフォ1かいな、ええ編成やな。あと、ホルンやったら木管にも混ざれるで。」

「木管にもですか?」

三浦は驚いて言った。

「そや、そういう編成もあるっちゅーことやな。まぁ、合宿まで期間あるし、坂上に言うてどんなんあるか聞いてみたらどうや?ええのなかったら、ヤマハの2階に見に行くのええしな。」(第16話 楽器屋へ行こう!!参照)

「なんか面白そうですね。」

「せやな、部内で競うのこれくらいしかないからな。一応、金、銀、銅と審査員特別賞があって商品でるで。」

「へ~、審査員って誰がするんです。」

「OBの人らやな。毎年結構きてはる。あ、そやそや、合宿には顧問の小柳先生も引率としてくるで。」

三浦は、そういえば顧問の先生なんていたな~、と思い出した。それはそうである、今まで見たことが無い。コンクールの時でさえ来ていなかったのだ。

「その小柳先生ってどんな先生なんですか。」

三浦は気になって聞いてみた。

「数学の先生でな、確か今は3年の学年主任や・・・あ、せやから今年顔だしてないんか。忙しいもんな。堅物で真面目な先生やけど、あの先生悪く思ってる奴、少なくともここにはおらへんな。」

三浦は「へ~」と言うと島岡は話を続ける。

「何故かと言うとな、顧問引き受けるまで楽器の「が」の字も知らん人やったんや。でも、何年か前かは知らんけど、吹奏楽部に顧問いなくて困ってるって時があってな、私でよければって引き受けてくれたらしいで。」

「それはまた、凄いですね。」

「せやろ。でそのあと、楽器のこと理解しよ言うてな、フルート購入しはってん。時間が空いたらたまに来て、生徒に教えて貰ってるらしいで。去年は何回か来てたわ。俺には真似でけへんな。」

三浦はそりゃそうだと思った。昔、吹奏楽やっていたらまだしも、全くしていなかったのである。それが社会人デビューとは恐れ入ったのである。


「島岡~お前からなんか曲ないか~」

不意に南川が島岡に聞いた。

黒板には、「星条旗よ永遠なれ」「海を超える握手」「双頭の鷲の旗の下に」などのマーチや「ディズニーメドレー1」及び「2」「アルヴァマー序曲」「スターウォーズ」「ムーンナイトセレナーデ」などニューサウンズインブラスの曲やオリジナル・映画音楽・ジャズなどてんこ盛りだ。

「せやな~『木星』か『新世界』の第4楽章なんてどうや?」※1

島岡はニヤニヤしながら言った。

「あほか!んな曲今高祭にやってどないすんねん。合同のメイン級やないか。」

島岡の言葉に南川が突っ込んだ。

「冗談や冗談・・・ん~音8(オンパチ)系が全然ないやん。米米の「コメコメウォー」とかはどないや?」※2※3

島岡はまたもやニヤニヤしながら言ってる。

南川はその言葉を聞いて坂上を見た。

坂上は首を振る。

「ないそうや、って俺も好きやけど、そもそもあれ楽譜化できる曲やと思うか?」

南川は少し残念そうに言う。

「無理にきまってるやろ~、ちょっと考えたら判る。」

島岡はまだニヤニヤしている。

南川はメニューから「諦める」を選択した。

「お前に聞いた俺があほやったわ・・・他の人~演奏したい曲ないか~」

「なんやなんや、大事な曲出てないやろ。」

寺嶋がそう言う。しかし、南川は予想がついていた。

「パチンコ行進曲がないやろ。」

南川は無言で黒板に「軍艦行進曲」と書いたのであった。


「今日はこれで曲を締め切るで。3日後選曲するからな、坂上~、譜面の手配頼むわ。古峰と岩本は音源の手配頼む。あと、選曲当日にも持ち込みありやで。その時は最低限でも音源は持ってきてや。」

南川はそう言ってミーティングを締めた。

黒板には結構な数の曲が上がっていた。その曲の後ろには「○」「△」「×」の文字がある。

「○」は楽譜が即用意できる曲、「△」は他校から譜面を借りれる曲、「×」はすぐには手配できない曲だ。

(しかし、即座に楽譜の存在が分かるなんて坂上先輩の頭はどういう構造してるんやろ。それも他校のも覚えてるって・・・)

三浦は感心してそう思ったのであった。


※1 グスターヴ・ホルスト作曲、組曲『惑星』にある『木星』とアントニン・ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番『新世界より』の『第4楽章 Allegro con fuoco』のこと。

『木星』に関しては、近年平原綾香が歌った「ジュピター」の原曲である。

※2 オンパチ。ミュージックエイト出版の略。歌謡曲からブラスバンド編曲を探すときに良くお世話になる。大概は「エムハチ」と略すようだが・・・

※3 米米クラブの曲。当時はバンドブームのまっさかりで、「ブルーハーツ」「プリンセスプリンセス」「レベッカ」等が流行っていた。


今後の行事を見て胸を高鳴らせる三浦。まずは、夏合宿のアンサンブルに標準を定めたのでした。

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