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第32話 祭りの後、いえ祭り中です・・・

第32話 祭りの後、いえ祭り中です・・・


写真撮影後、再び部員たちは集合した。

「んじゃぁ、1年と2年の男子部員とパーカッションは引き続き楽器運搬頼むわ。後は打ち上げあるまで自由行動な。いつもの『七転び八起き』で7時集合やで。あと、明日は昼からや。では、解散。」

南川の言葉で部員たちはぞろぞろと動き出した。


「よっしゃ、トラック組と電車組に分かれんで~。柏原~、後学の為に1年ら乗せたいけどええか?」

「ん~、まぁええわ。2年は全員電車で帰るで。」

「ついでにラッパも載せとけ。スペースあんで。」

「ほいほい、じゃぁ頼むわ。丸ちゃんと藤本さ~ん、楽器、トラックに載せてや~」

呼ばれた丸谷と藤本はトランペットケースを持ってくる。藤本の足取りはおぼつかないが・・・

「次、1年。とっととトラックに乗り込め~、クソ暑いから気合入れろよ。」

ニヤニヤしながら島岡は言うと、三浦・小路・鈴木はトラックの貨物室に乗り込んだ。

「柏原~先に待ってるからな。更科さ~ん、閉めますから後よろしく頼んます。」

島岡は扉を閉めると、柏原は鍵を閉めた。それを確認した更科はトラックを動かしたのであった。


貨物室の中は案外明るい。電灯もある為である。

「お前ら、どうや?初めて乗ったか?」

島岡の問いに3人は「「はい」」と答えた。

そのまま島岡は話を続けた。

「まぁ、楽器の転倒防止で乗ってるけどな、実際転倒なんかせえへんねん。チャイムとかシンセサイザーとかの時だけや。神経使うのは。」

「じゃぁ、何で乗っているんですか?」

三浦は聞いてみた。

「ん~、金の節約と・・・こういうのなんか面白いやん。」

確かに、こういう経験はそうあるものではない。

しかし、段々暑くなって来た。真夏に乗るのも考え物である。額から汗が流れてきた。

「ほれ、イキナリやから持ってきてないやろ。使え。」

島岡の手にはタオルがあった。水に浸して絞ったのであろう。冷たそうだ。

三浦がそのタオルを掴もうとすると、ニヤニヤしながら島岡は言った。

「ちなみにそれ、行きしなに俺らが使ったタオルやで。」

「え!」

三浦は一瞬にして手を引っ込めた。その反応を見た後、島岡は続けた。

「うそやうそ、新しい奴にさっき水に濡らした奴や。本気にするとは思わんかったで~」

島岡はひとしきり笑った後、3人は少し笑いながらタオルを手に取ったのであった。


「ごくろうさん。中は暑くなかったか?」

扉を開けた更科は島岡たちに言った。

「さすがにもう慣れましたわ。よっしゃ、降りるで~。涼んだら運搬始めるからな。」

島岡はそういうと3人は動き出した。

休憩後、まずは一人で持てる小物から搬入を始めた。校門から音楽室まで結構遠い。

暫くすると、電車組が追いついたので、ティンパニーなどの大物は二人で運んでいく。

今日は特に棚になおさず、音楽室に入れるだけなので案外早く片付いた。最終的な片付けは明日行う予定である。


男子部員たちは住吉大社の近くにあるファミレスに移動していた。まだ打ち上げには時間が有るからだ。

「しかしお前ら、ほんま上手なったな。特にラッパの3人・・・あ、部長はまだ向こうか。合同のときより一段とよかったで。」

更科はそういうと柏原は言った。

「ありがとうございます。でも、こいつにはかないませんわ。なんせ、あそこのホルンソロ、俺も後ろで聞いてても鳥肌立ちましたもん。」

「なんか、お前に褒められてもうれしくないなぁ。俺はいつもお前の爆音、後ろからもろに受けてんねんで。横からは中嶋のスライドがニョキニョキきおるし。」

「当たり前や、わざとやっるからな。なぁ、中嶋~」

柏原から振られた中嶋は、ニコニコではなくニヤニヤしている。

「あと、1年もようやったな。3人共初心者なんやろ。来年が楽しみやな~」

「「「あ、ありがとうございます」」」

更科に褒められた3人は、同時にどもって答えたのであった。


そして7時、部員の面々と3人のOBは、居酒屋『七転び八起き」の2階にいた。座敷になっている。

「とりあえず始めよか。今日のコンクールお疲れ様でした。」

「「お疲れ様でした」」

南川のいつもの言葉に部員が反応した。

「色々あったけど最後はええ演奏できてよかったと思ってます。では、コンクールの結果を発表します。」

その言葉を聞いて部員は一斉に静かになった。今、この時点で結果を知っているのは部長の南川のみであったからだ。

「府立今高高等学校吹奏楽部・・・金。」

その瞬間歓声が沸いた。中には涙を流すものさえいる。しかし、次の言葉が沈黙に変える。

「但し、代表には漏れた。・・・残念や。」

この南川の発言で、今年のコンクールはこれで終わりだと告げたのである。

「なんやなんや、この静まりようは。代表やなくても金は金や。もっと喜こばんかい。」

そう静かに発言したのは河合だった。そのまま話を続ける。

「この数年、俺はコンクールの指揮してきたけどな、この年が一番良かったと思ってる。3年にはこれが最後のコンクールで、俺の力及ばず申し訳ないことしたと思ってるけど、1年2年にはまだ来年がある。去年が銀やったんや、そして今年が金。じゃぁ来年は代表と繋げようやないか。」

河合がそう言った瞬間、場に歓声が再び沸く。上田・菊野・前田の3人は大泣きだ。悔し泣きではない。嬉し泣きである。

「よっしゃ、乾杯するで。みんなグラスもて~」

南川がそういうと場は徐々に静まり、皆片手にグラスを持った。勿論、中身はジュースである。

「河合さん、指揮者としてもう一回皆に言葉頂けませんか。」

河合は一瞬考えたから言った。

「せやなぁ~、さっきも言ったけど、今年が一番良かった。俺にとってはお前らが代表や。せやから来年こそは森之宮行こう。では、乾杯~」

「「「乾杯~~」」」


乾杯のあと、各人は思い思いに暴れている。

雑談に熱中している者。(普通の部員)

人の顔に落書き(額に『肉』等)を始める者。(寺嶋&平田、犠牲者石村)

3人の女性に囲まれている者。(犠牲者辻本)

罰ゲーム無しで色々なジュース類?を混ぜたものを飲まされている者。(沢木)

人の癖を観察してノートに書き留めている者。(坂上)

いきなり個人ライブを始める者。(金沢)

なぜか上半身を脱ぐ者。(島岡)

それを見てなぜかうっとりしている者。(島岡ファンの女子)

さらに別角度から腹筋や胸筋を見て恍惚(こうこつ)としている者(甲斐)

二人だけの世界に入っている者。(南川&岩本)

その二人を見て手を取り合ってうっとりしている者(小路&犬山)

ひたすらニコニコしている者(中嶋)

この狂乱の中寝ている者。(犬井)

まさに混沌(カオス)がここにあった。

言っておくが、ここには酒類はない・・・はずだ。


普通の部員に含まれている三浦は、これまた普通の部員に含まれている柏原に話しかけた。

「そういえば、コンクールで寸評あったと思うんですけど。あります?」

「ああ、あるで~、確か今、古峰が持ってるんちゃうか。せやけど・・・島岡には見せるなよ。」

「え?は、はい」

三浦は「なぜ?」という顔をして返事をすると、古峰のところに行った。4~5人の女子が固まっている。

「古峰先輩、コンクールの寸評あります?」

「ええ、あるわよ・・・けど、島岡君には見せないでね。勿論、言うのも禁止ね。」

古峰も柏原と同じ様なことを言っていたので更に謎が深まった。

そして寸評を見てみた。

(ホルンが素晴らしかった。が、周りが小ぶりにまとまり過ぎていた。今後期待する。)

(全体的によくまとまっていたが、ホルンソロが突出しすぎる。)

(ホルン以外が弱い。全体の強化を計るべき)etc.

これを見た三浦も思った。絶対、島岡には見せるものではないと・・・


打ち上げも終わり、部員は『七転び八起き』を出る。

そして最後に南川が一言言った。

「野郎共!!最後に一仕事するぞ~」

「「応!!」」

何も打ち合わせもしていないが、空気を読んだ男子部員は河合を囲むと胴上げを始めた。

そして、南川が言う。

「河合さん、指揮ありがとうございました!!」

「「ありがとうございました!!」」

南川の掛け声で部員全員、心をこめて感謝を言ったのであった。

それは、青春の1ページが閉じた瞬間であった・・・そして、明日には次のページが開かれる。


コンクールの結果は代表漏れの金・・・でも、彼らにとってそれは通過点でしかないと、心に刻んだようです。

しかし、一つの影を残しました・・・


これで第2部「怒涛のコンクール編」の終了です。

次話からは第3部「祭りだ!今高祭!編」の開始です。


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