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第2話 『春研』と言う名の勧誘大会

第2話 『春研』と言う名の勧誘大会


始業式も終わり4月の中旬に差し掛かる頃、三浦はまだクラブを決めていないでいた。

今高高校では、全員どこかのクラブに所属しなければならないという校則は無い。

無所属のまま(俗に言う帰宅部)でも特に問題は無いのである。

ただ、三浦にとってもせっかくの高校生活である。何かしらのクラブ活動でもしようかとは思っているのだ。

とは言っても、この高校。クラブ活動に関しては特別有名なものはない。(昔、野球部が大阪地区予選の決勝まで進んだことがあるらしいが・・・)


「なんか今日から『春研』が始まるらしで。」

「『春研』?なんやそれは?」

三浦は聞いたことが無いフレーズに鈴木に聞き返す。

「さぁ、俺にも詳しいことは分からんけど・・・『研究発表会』って聞いたわ。」

三浦の疑問に鈴木はそう答えた。


春の研究発表会、通称『春研』。

今高高校ではこの時期、文化系のクラブ全てが行っている行事である。

写真部や美術部などは作品の展示を行い、吹奏楽部・演劇部・軽音部では講堂を使って演奏や劇を行う。

勿論、これらは新入生に対するクラブ勧誘の一環ということだ。


その日の昼休みの冒頭、放送のアナウンスがあった。

「12時50分頃より講堂にて吹奏楽部が『春研』を行います。是非聞きに来てくださいね。」

そのアナウンスの後の放送は、いつもの如くリクエストされた曲を流したりしていた。ちょとしたラジオ番組のようである。


「鈴木殿、では暇つぶしに向かおうか。」

「ついていくでござるよ、三浦殿。」

三浦と鈴木は少しお茶らけると講堂に向かった。


この学校の講堂は校舎の西側にあり、入学式で込み合っていた校舎の玄関口の真上に当たる。

3、4階が吹き抜けになっており、1学年(500人)程度の収納力を持つ。

舞台上の照明も一通り揃っており、ちょっとしたミニホールである。


三浦たちが講堂に着くと結構人が入っていた。座席は8割ほど埋まっている。

「ここの吹奏楽部ってうまいんか?」

「さぁ?俺はこういうのは詳しくないで?」

鈴木は三浦の問いを軽く流している頃、時間が来たらしく、客側の照明が落とされた。


「こんにちわ、今高高校吹奏楽部の春研にようこそ~。是非楽しんでくださいね。」

舞台上ではマイクを持った女子が可愛い声でそう言うと、幕があがり演奏が始まった。

ドラムセットの導入の後、クラリネットとサックスの軽快なメロディが始まった。

間々にトランペット・トロンボーンの金管群の音が合いの手のように入る。

どこかで聞いたことのあるような曲である。確かジャズにあったような・・。

三浦はいつの間にか足でそのスィング独特のリズムを取っていた。ノリノリである。

そして最後はトランペットが強烈なハイトーンを披露し(※1)その曲を閉じる。

(すげぇ、カッコイイ。)

三浦は素直にそう感じた。


「只今演奏した曲は、ジャズで有名な『シング・シング・シング』という曲でした。一度くらいはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?さて、次の曲は『大草原の歌』です。皆様にはなじみのない曲と思われますが、吹奏楽の醍醐味を是非感じ取ってください。」

先ほど挨拶をした女子がそう告げると演奏が開始された。


木管による緩やかなメロディが終わったと思っていると、曲が急にアップテンポに変わる。

各楽器の打ち込みの後、木管による流れるすばやいパッセージと後につながるトランペットによるメロディ。その後、他の楽器も混じり深みが増していく。

極めつけは、メロディの後ろから聞こえるもうひとつのメロディだ。※2。

それが組み合わさったとき三浦は鳥肌を感じた。

最後はテンポを落としつつ力強い和音が講堂を包み曲が終わったのである。


「すげぇな、これ。」

三浦は思わず思ったことを口に出した。

吹奏楽部が行った春研はこの2曲であったが、彼に対しては十分なインパクトを残したのである。


※1 本来の譜面より1オクターブあげてみました。知り合いのトランペッターはよくこの手のことを本番時にしていました。

※2 対旋律のことですね。


三浦君と吹奏楽部との2度目の遭遇です。ここで大きく引かれたわけですがどうなることやら。

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