表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/115

第15話 初めての合奏

第15話 初めての合奏


音楽室は合奏の準備中であった。

中央にあったグランドピアノは奥に動かされ、そのグランドピアノを中心としてコの字で並べられていた机のうち、右側と左側は壁際に寄せられている。

黒板の前には一段高い台(指揮台)があり、その前には高級そうな譜面台が置かれていた。椅子はまだ中央に散らかっている。

黒板の対面にある机の上には、三浦が初めて音楽室に入ったときのように、パーカッションの各楽器が並べて置かれている。

先ほど会った河合は、グランドピアノのところで柏原と話し込んでいるのが見えた。合奏の打ち合わせであろう。


「よっしゃ、椅子並べるの手伝おうか~。お~い、今日フルート何人や~。」

すると柏原は3本指を示した。その要領でホルンとパーカッションの人たちで席を並べていく。

そうしているうちに他のパートも続々帰ってきた。自分の席であろうところに楽器を置き、譜面台をセットする。

三浦はホルンパートの一番端の席に座らされた。指揮台から見て、中ほどの列の一番左端である。

すると後ろから島岡が近づき2枚の紙を手渡してきた。

「お前の楽譜や。」

それを受け取った三浦は、楽譜の左上に「4th Horn in F」の文字を見た。※1

「楽譜は読めるか?」

「音楽の授業で習った程度であれば・・・」

「それで十分や。今日は指揮見てどこを演奏しているんか目で追っていき~。わからんようになったら横に石村さんがおるから、休止中に聞いたらええ。」

それを聞いた三浦は楽譜を見てみると、見たこと無い記号があった。

「これはなんです?」

三浦が指を差した先には、小節の真ん中にに大きく「4」と書かれていた。

「あ~それは、4小節休みと言う意味や。他にもあるやろ、ちらほらと。そこに入ったらきっちり小節数えるんやで。」

そう言った島岡は自分の席に戻って行った。彼の席は合奏隊形のほぼど真ん中の位置である。

暫くすると、「チューニングを始めます」の岩本の声と共にチューニングが始まった。

「チューニングはB♭(ファ)でするんや。」

横にいる石村が三浦に小声で教えてくれる。

フルートからチューナーの電子音を聞いて一人一人合わせていく。

「20高い」といわれると管を伸ばし、「10低い」と言われると管を縮める。

フルート、クラリネット、サックスが終わると次はホルンである。

島岡がチューニングを一発であわせると、の音を出した。岩本が「10やね」というとF管の主管を少し伸ばしてもう一度吹く。岩本が軽くうなづくと島岡は音を止めた。

「F吹いてたみたいですけど?」

三浦は石村に聞いてみた。

「あいつは特別や。高音域でもF管普通にこなしよる。」※2

「はい、石村さん」

松島もチューニングが終わったらしく、岩本が石村に声を掛けた。

石村はあわててホルンを構えるとチューニングを始めた。岩本はうなづくとトランペットパートに移る。一発OKである。


全員のチューニングが終わると、河合が指揮台の上に立った。それに合わせて全員が席を立つ。

「よろしくお願いします」

「「よろしくお願いします」」

「はい、よろしく」

南川の掛け声と共に全員が挨拶をし、河合も挨拶を返す。合奏開始前の一連の儀式のようだ。

全員が席に付くと(指揮台の上にもピアノ用の椅子が用意されている)、河合は言った。

「とりあえず、課題曲さらっと流そうか~新人も見てるからええとこ見せとけよ、先輩共。」

部員たちは河合の言葉に「はい」と返事をし、課題曲の楽譜を用意した。

河合が席を立ち指揮棒を構えると、曲の頭から入るパートが楽器を構える。

三浦は横の石村に課題曲の楽譜を教えてもらうと手にもってその楽譜を眺めた。

(『交響的舞曲』かぁ~どんな曲なんやろ)※3

河合の前振りの後、曲が始まる。

クラリネットの静かな旋律が始まる。但しテンポが速い。

その後色々な楽器の伴奏が入ってくる。特にホルンからは今まで聞いたことが無い音がした。よく見ると手をベルの奥に突っ込んでいる。※4

そして前半部の最大の盛り上がりの部分に差し掛かり、徐々に楽器の数が減ってくる。この時点で三浦は落ちてる。※5

最後はチューバが吹いて前半部は終了する。

ここで三浦は石村に今どこの箇所なのかを教えてもらい、復帰することができた。

ゆっくりした中間部が始まる。中低音域の濃厚な旋律が心地いい。

そして中間部の山場の後の伸ばしの部分で前半部の旋律が早いパッセージで入りアクセントを添えている。そして再現部に入る。※6

色々な楽器が入ってきて演奏するが、まだ合わせれるレベルではないのであろう。あまりの混乱ぶりに河合は指揮を止めた。

それでも音が鳴っている。楽譜に集中しているので、指揮を見ていないのである。徐々に音が鳴り止み完全に音が消えると河合が言った。

「初めて合わせたからな、こんなもんやろ。頭の部分は練習しとるみたいやからそこ合わせよか~」

「「はい」」


合奏は序盤の部分を中心として進んでいく。

時折河合から指示が飛ぶ。その度に注意を受けた人及びパートは、ペンを持って楽譜に何か書き込んでいく。

「あれは何しているんです?」

三浦は石村に聞いた。

「あれな、注意受けたとこに注釈書いているんや。ほれ。」

石村は自分の楽譜を三浦に見せた。そこには音符に赤い丸や記号のところに棒線が引いてある。休符のところにはパート名が書いてある。

「これは事前に自分でつけたところや。合わせるのが難しいところとかテンポ変わるところに印付けてんねん。お前もその内、楽譜印だらけになるで」

「なるほど~楽譜に直接書けば言われたことも忘れないということですね。」

三浦の言葉に石村はうなづく。

「あと、ペンは何使ってもええからな。例えば・・・ほれ」

石村はあごでバリチューパートを指した。

「耳のところ見てみ。」

三浦は石村の言うとおり見た。耳に赤ペンを掛けている。それも坂上・平田・寺嶋3人共だ。

どこかで見たことのある風景である。

「お前、競馬場行った事あるか?」

三浦は「ああ」と行った感じで納得した。

「あそこは、ああ言うところは一致団結するかなぁ。」

石村はそう言った後、ホルンを構えた。そろそろ彼の出番であったからである。


※1 ホルンの楽譜には「F」と「E♭」があります。殆どが「F」ですが、マーチやオーケストラになると「E♭」が出てくる時があります。

※2 普通は低音域でF管を中音域以上はB♭管を使用します。詳細はウィキペディア等で「ホルン」参照のこと。

※3 1988年度第36回全日本吹奏楽コンクールの課題曲B。小林徹 作曲。

※4 「ゲシュトップ」と言われる奏法。金属的な音がする。カナ表記にすると「ケッ」というのが適切でしょうか。

※5 現在演奏されてるところを楽譜から見つける事ができない状態。

※6 多くの曲はA-B-A’のソナタ形式を取っています。A’の部分を再現部と言います。(かなり大まかなわけ方ですが)詳細はウィキペディア等の「ソナタ形式」を参照のこと。


三浦は見学とはいえ初めての合奏に加わりました。まだまだ発展途上中をうかがわせますね。

しかし、バリチューパートは相変わらず・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ