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第102話 緑地公園へ行こう!(前編)

第102話 緑地公園へ行こう!(前編)


さて、季節も早くも巡り5月。

5月といえばゴールデンウィークである。そしてこの小説でゴールデンウィークと言えば・・・


「と言うわけで、日曜日に『新歓遠足』に行きます。」

部活の終わりのミーティングで朝倉が言った。

「『新歓遠足』って・・・どこか違う場所で練習するんですか?」

常識人の田川は朝倉の言葉を聞いて三浦にそう聞いた。何だか去年の三浦を見ているようだ。

しかし、横ではある意味素直な黒松が「遠足だ~やった~」とはしゃいでいる。

「えっとな、これはそのまんま言葉の通り『遠足』や。みんなで遊びにいくねん。」

「『遠足』ですか・・・」

「せや、弁当持って行ってな、バトミントンやらバレーとかボート乗ったりして遊ぶねん。」

その言葉に田川は「そっか~」と少し考え言った。

「それじゃぁ、伊達さんと大原先輩と私でパートのみんなのお弁当作ってきましょうか?」

「あっ、それいいですね~」

「うんうん、そうしよ~」

田川の提案に二人も乗り気だ。その3人の言葉を聞いた三浦と松島は去年の散々たる弁当の内容を思い出し、

「「お、女の子ってええなぁ~~」」

と、涙を流して喜んだのであった・・・


そして日曜日。

集合場所は去年と違い学校の前。去年は『仁川』だったが今年は『服部緑地公園』というところだ。この公園は『千里』に近く、少し足を伸ばせば『万博公園』もある。学校の近くの地下鉄から乗り換え無しで行けるところである。

いつもは制服姿の彼らであるが今日は私服だ。いつもと違った新鮮味がある。

「大原先輩、その服可愛いですね。」

大原の姿を見た田川が言う。大原は白のワンピースに白の大きな帽子。そして首にネックレスとよく見ないと分からないが耳に小さなピアスもしている。あまり派手ではないか、実は結構な代物である。

「そう?明ちゃんも似合ってるわよ~」

田川は薄いクリーム色のシャツにジーパンという格好である。今日は遠足と言うこともあり、動きやすい格好なのであるが、彼女の場合はこういう服も見栄えが良い。

「あっ、伊達ちゃんが来たわ。おはよう~」

「おはようございます。弁当作るのに手間取っちゃって・・・」

大原が伊達に気付き挨拶をする。その伊達はゆったりとしたトレーナーに足にぴったりフィットした短めのジーパンで、綺麗な脚線美を披露している。手には大きなバスケットを持っていた。結構な大きさである。

「結構大きいね・・・弁当。」

田川はその弁当の大きさに感嘆する。

「かな?だって、三浦先輩に松島先輩もいるでしょ。だからつい・・・」

「だけど・・・持てるかな?」

「え?」

田川の言葉に伊達が不思議そうにする。確かに女子では少し重いかも知れないが、男子であれば十分許容範囲内だと思ったのである。そして、伊達は三浦を探し見つけ・・・思わず目が点になった。

三浦の足元には既に4つの大きな包みがある。伊達のを含めると5つになるのである。

「ちょっと一杯もってき過ぎたみたい・・・てへ♪」

そう、犯人は大原であった。彼女はこれでもかこれでもかと都合3つの大きな包みを用意したのだ。ちなみに、彼女は学校まで車で来ていた。車種はあえて控えるが・・・

華やかなのはホルンパートだけではない。勿論、木管パートは辻本以外は全員女子であるのでいつものことであるが、金管パートの中でもトランペットパートは大いに華やいでいた。

「ねぇねぇ、揚子ちゃん。その服はどうしたの?」

揚子の横にいた黒松が揚子に声を掛ける。いや、今日集まってから聞こうと思っていたのだが、ついついそのタイミングを逃していたのだ。

「え?これ。これな~お兄ちゃんに貰ってん。ええやろ~」

揚子は得意気にそう言う。

「え?そ、そうなの。な、中々似合ってるよ・・・」

いつもは元気な黒松もこのときは少々歯切れが悪い。揚子の格好は上は確かに普通のパーカーなのであるが、ズボンが迷彩服なのである。いや、良くあるファッション的な迷彩調の服ならここまで黒松も気にしなかったのであるが、その色合いが思いのほか本格的なのである。そう、迷彩服は迷彩服でも模様が『タイガーストライプ』。そして、靴も編み上げの長靴・・・中々凝ったミリタリーファッションである。※1

「へへへ、まだ家に、砂漠戦用とか雪上戦用もあんで~」

黒松の言葉にさらに気をよくした揚子は更にそう言った。

「それって全部、お兄ちゃんの趣味?」

「せやで~。うん、我がお兄ちゃんながらいい趣味してるわ~」

「そ、そうなんや。凄いね・・・」

さすがの黒松もあっけに取られるのであった・・・

そんなこんなで集合時間の10時となる。そしてお約束の・・・

「中嶋先輩が居ません~」

柴田が細い体に似合わず大きな声で言う。そう、遅刻常習犯の中嶋はある意味予定通りの遅刻だ。

「まぁ~あと10分位でくるんちゃうか~」

いつものことなので柏原はそう答えた。そして・・・10時5分。ゆっくりとした足取りでニコニコ顔で中嶋が登場する。3年の男共はここぞとばかりに中嶋を吊るし上げたのであった・・・しかし、中嶋はそんな中でも笑っていたのである。


「ちょっと早いけど先にお昼にしましょうか。」

「「は~い」」

朝倉の掛け声に皆は大きな返事をする。ここは緑地公園に入って暫く奥に入った広場である。さすがにゴールデンウィークともあり、ちらほらと露店もあった。

「ふう、やっと肩の荷が降りるわ~」

「せやな・・・なんやここまで来るのにえらい疲れたわ・・・」

三浦と松島が大きな荷物を4つ抱えてその場に下ろす。

「す、すいません・・・ちょっと多すぎましたね・・・」

横には大原が少し『しょぼ~ん』とした感じで二人に言う。

「いやいや、かまへんかまへん。お陰で美味しい弁当にありつけるしな~、なぁ三浦。」

「そ、そうですよ。だから大原もそんな顔せんでええで~」

二人はそんな大原を励まそうとなんとか取り繕うとする。すると横から別の人物が彼らに声を掛けた。

「おい、これここに置いたらええんか?」

沢木である。根の優しい彼は、持ちきれない荷物を持ってあげていたのだ。

「すいません、沢木先輩。あとで御裾分けに行きますね。」

「いや、ええって。ちゅ~か、うちのところもな・・・よ~さんあるんや。ほら・・・揚子がかなり作ってきたみたいやから・・・」

そうなのだ。以外ではあるが、揚子の料理の腕は半端ではない。元々家が中華料理屋をしている為、いつの間にか覚えたらしい。

そうして楽しい昼食タイム。ホルンパートの5人は座って弁当を広げたのであるが・・・

「重いわけや・・・」

「これ・・・食いきれるのか・・・」

「というか、高そうですね・・・」

「弁当という枠を超えてます・・・」

大原を除いた4人の感想である。

そこには、三段重ね重箱が3つあり、中には伊勢海老やらアワビやらの高級食材をふんだんに使った料理があった。勿論、田川の作ってきたから揚げやおにぎり、伊達の作ってきたサンドイッチもありかなりのボリュームなのである。しかし、これを食べ切らないと失礼だと思った三浦は、果敢にもその無謀なる挑戦に挑むのであった・・・


後編へ続く・・・


※1 軍用ブーツ。足が蒸れにくく、滑らない。登山靴、安全靴等にも使えます。案外、使用用途は広いです。ファション性はゼロですが・・・


さて、恒例の『新歓遠足』です。まだ序盤ですが、後半は意外な彼らの一面が出てきますよ。お楽しみに~

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