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第96話 あるトランペット吹きの苦悩

第96話 あるトランペット吹きの苦悩


さて、『女』という漢字がある。一つでは性別を表すが、これが3つ集まるとどうなるであろう。それは『姦』と書ける。

『姦』・・・

さて、この漢字の意味を調べてみる。耳障りでうるさい。やかましい。かしましい。

そう、これはこの漢字にぴったりな少女たちと苦労性の男の話である・・・


ここは校舎内にある教室。そしてここには3人の女子生徒と一人の男子生徒が居た。

「ねぇねぇ、揚子ちゃん。昨日『YAWARA』見た~」

「見た見た、あれうち好きやねん。」

「あっ、それ私も見たわ、『柔ちゃん』カッコ良かったわよね~」

女子生徒はトランペットパートの黒松・揚子・生駒である。そして、教室の隅ではパート長である小路がその3人の様子を、手をプルプルと震わせながら見ていた。

彼女たちはこの教室に入ってからかれこれ20分もおしゃべりをしているのだ。

ちなみに、もう一人の2年生である丸谷は家の用事で今日は休みだ。

「そうそう、あんな可愛い子が大きな男の人投げ飛ばすんだもん。憧れちゃうわ~」

黒松がそう言うと何だか様子が変だ。ぼ~とし始める。

「あっ、あかん。こいつトリップ入りだした!あっちゃん~何とかして~」

「え~、私?無理無理。この子、このモード入ったら中々帰ってけえへんもん。」

「ど、どないしよ~よっしゃ、耳元にラッパを・・・」

『パーーーーーン』

「あ、あかん。これでも効き目無しや。あっちゃんも一緒に。」

「わ、わかった。せ~の!」

『『パーーーーーン』』

「だ、駄目や。これでも効き目ない~~」

「あっ、そうだ。明ちゃん呼んだら・・・」

「そ、それや!!じゃぁちょっとうち、明ちゃん呼んで・・・」

「お前ら!!練習せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

ついに小路が切れる、が・・・

「あれ~」

「あっ、戻ってきた・・・」

「よ、よかった~」

「私・・・何してたのかな?」

「えっとなぁ~、ちょっとあっちの世界に行ってただけや。」

「あ~そっか、でねでね、昨日ね・・・」

「だ・か・ら、お前ら練習せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

さらに小路は切れた・・・しかし・・・

「「「うるさわ!!ぼけ!!」」」

「は、はひぃ・・・」

青筋を立てた三人に怒鳴られた小路は小さくなったのであった・・・


「・・・今日そんなことがあってん。俺、もうどないしよ・・・」

部活の帰り道、三浦と小路と鈴木は並んで下校していた。

「どないしょ~言うてもなぁ・・・俺とパート違うしな・・・」と、三浦。

「ええやん。まだ、こっちには誰も新入生来てへんで~」と、鈴木。

二人とも我関せずと言った感じである。

「そんなこと言うなよ。一緒にええ手考えてぇな・・・ええよな、三浦のところは。真面目な女の子が入って・・・それもめちゃめちゃ可愛いやん。」

「う~ん、それを言われるとな・・・ほんまあの子ええで。素直やし、筋もええし・・・めちゃ教え甲斐あるわ。それにな、すっげ~気利くねん。ほら、この制服のボタン。取れかかってんやけど、さささっと直して・・・」

「「はいはい」」

二人は三浦ののろけ話を最後まで聞くこともなく同時に突っ込む。

「まぁ、真面目な話、南川先輩や沢木先輩、柏原先輩がおるからなんとかなるんちゃんか?丸ちゃんもおるんねんやろ?」

三浦は軽く言う。しかし・・・

「それがな・・・柏原先輩は最近、為ちゃんの練習に付きっきりやねん。丸ちゃんは、毎日俺と交代で3人見てるからなぁ・・・それにな・・・」

「「それに?」」

「南川先輩も沢木先輩もあの3人が入ってから別の教室で練習するようになってん・・・」

小路はちょっと目に涙を浮かべて切実に語りかける。

「「さ、さすがだ・・・」」

それに対し二人は、3年生たちの危機回避能力の高さに関心するのであった・・・


次の朝、三浦はいつもの様に朝練習に来ていた。いつもの様にロングトーンを吹く。

するとまもなく校門から一組の男女の姿が見えた。

(あれは・・・柏原先輩ともう一人は・・・揚子ちゃんやな。)

三浦はロングトーンをしながらその姿を確認する。

「よう~いつも早いな~」

「三浦先輩、おはよ~」

柏原と揚子は音楽室の前まで来ると三浦に挨拶をする。

「柏原先輩、おはようございます。揚子ちゃんもおはよう~」

三浦はちょうどロングトーンが終わって休憩中だったので二人に挨拶を返す。

そして三浦はふと思い出す。昨日の小路の訴えを・・・

「あっ柏原先輩、それと陽子ちゃん。ちょっとええかな?」

「なんや~」

「なんですか?」

三浦に呼び止められた二人は同時に三浦に振り返る。

「えっとですね、昨日ちょっと小路から泣き付かれまして・・・」

「あ~あれか・・・それな・・・」

揚子から聞いていたのであろう。三浦の言葉に柏原は少し苦笑いする。

「あ、あれは、その~・・・あの~」

揚子に関しては罰が悪そうな顔だ。何時もの豪快さは無く、ちょっとモジモジしている。元々素材が良いだけに、思わず三浦は一瞬目が奪われる。

「あ、あれからな~3人で話合ってん・・・もうちょっと小路先輩の言うこと聞こうって・・・」

さすがに昨日の事はまずいと思ったのか、揚子は俯いてそう話す。その様子に三浦も『しゃ~ないな~』という気持ちにさせられてしまう。

ついつい、「そうか~小路もきっと喜ぶと思うで。」と、彼女を安心させる言葉を掛ける。

するとその言葉に揚子は安心したのか、顔を上げて言った。

「分かりました。二人にも言っときますね~」

そういうと、走って音楽室へ駆け上がって行ったのであった。

「なんや、結構彼女も可愛いところあるじゃないですか。これで、この問題も解決ですね。」

「せ、せやな~」

柏原は三浦の言葉に相槌をする。しかし、心の中では違っていた。

(あれが、そんなことでめげる玉かいな・・・)


そして、何時ものパート練習にて・・・

「でねでね、ザビエルがねぇ・・・」※1

「ほんまかいな。信じられへんわ~」

「でも、あの先生ならやりかねないわね・・・」

「だ~か~ら~、練習して下さい・・・」

「「「は~い」」」

小路に言われると3人は各々練習を始める。教室に入ってから10分はおしゃべりをしていたのだ。

そう・・・彼女らはもう『ちょっと』小路先輩の言うことを聞くようになったのである。

その様子を聞いた三浦は小路に言った。彼女らは『今高怒涛のマシンガントリオ』であると・・・


※1 ザビエル。英語教師のあだ名である・・・


新しい3人娘のエピソードでした。しかし、小路君・・・君に選ばしてあげよう。沢木属性がいい?それとも辻本属性がいい?

小路「勘弁してください・・・orz」

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