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詩の目次

箱のなかで

作者: 冬野三月

箱のそとから声が聴こえる


誰だろう


だけど僕には関係ないな


僕の箱は頑丈で


誰もなかには入って来れない


箱は誰にも気づかれず


だから僕はどこにもいないことになる


箱のなかの世界で僕は


僕はひとり生きている


……声が聴こえる


そとから声が聴こえてくる


僕には関係ない


笑っているように聴こえる


僕には関係ない


泣いているようにも聴こえる


僕には関係ない


……関係ないはずだけど


気になって最近はよく眠れなくなった


箱の隙間からそっとそとを覗いてみる


目に飛び込んでくる虹色に輝く光


次いで目を刺す痛み


痛い!


僕は反射的に叫ぶ


痛い痛い痛い


箱のなかで僕は繰り返し叫んだ


声は頑強な箱のなかでむなしく響く


痛い痛い痛い……


しばらくするとようやくその痛みに慣れてきた


強くつぶっていたまぶたを開いてみる


痛みの残る瞼に恐る恐る触れ――


ピリッとした痛み


大丈夫だろうか


永遠にこのままなのかもしれない


怖くなってくる


その恐怖の得体の知れなさに目に涙がにじむ


けれど泣いても誰かが助けてくれるわけじゃない


そう諦めると恐怖も少し気にならなくなった


痛みはそのまま


……箱のそとからはもうなにも聴こえない


もう二度と箱のそとに出ようなんて思わない


そう自分に誓った


……そうだった


あの日たしかにそう誓ったのだ


けれど日が経ち 目の痛みも薄れた僕は考えてしまう


誰なんだろう


僕ではないひと


顔も知らないひと


ときどき声だけが微かに聴こえてくる


誰なんだろう


僕はそのひとに会ってみたい


またあの虹色の光があって


刺すような痛みに見舞われるかもしれない


怖い


けれどそれでも


僕は会いたい


僕はそのために生まれたのだとすら思った


もちろん勘違いだったとすぐにわかるのだけれど


今の僕はまだそれすら知らない

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