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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
二部・第三章 ホリデーを楽しもう!

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ミシャとレナ殿下の放課後

 帰りのホームルームで、思いがけない報告がホイップ先生よりあった。


「魔法学校で毎年行われていた降誕祭は、小舞踏会の事件を受けて、今年は中止となったそうなの。残念だけれど、ご理解いただけると嬉しいわあ」


 そういえば年間スケジュールに、降誕祭があった気がする。

 なんでも当日は講堂でお祈りをしたり、聖歌隊の歌を聴いたり、巨大ツリーを飾り付けたり、寮で降誕祭のごちそうを食べたり、とさまざまなイベントをやっていたらしい。

 クラスメイト達は残念がるような声をあげていた。


「降誕祭がない代わりに、校長先生がみんなに、魔菓子の詰め合わせを贈ってくださるそうよお」


 その言葉を聞いた途端、皆、歓声をあげる。

 子どもがお菓子好きというのは、世界共通なのかもしれない。


 そんなわけで、大きな不満の言葉など上がることはなく、平和にホームルームが終わったのだった。


 さて、帰ろうかと席を立った瞬間、レナ殿下から声がかかった。


「ミシャ、このあと予定などあるだろうか?」

「ええ、一応、ホイップ先生から任されている温室で育てている薬草の世話をする予定だけれど」

「そうか。ならば、私も手伝おう」


 王太子殿下に労働させるなんて、不敬にもほどがあるだろう。

 当然、断ったのだが、レナ殿下はやると言って聞かなかった。


 どこかでノアが監視していたらどうしよう、と思ったのだが、彼の姿はない。

 ホッと胸をなで下ろす。


「その、手や靴が汚れますよ」

「問題ない」


 レナ殿下はまっすぐ私を見つめていた。私がいくら何を言っても、聞く耳なんて持っていないのだろう。

 こちらが折れるしかないようだ。


「わかりました。では、少々手を貸していただけたらな、と思います」


 ヴィルは放課後監督生の集まりがあると言っていたので、突然現れることもないだろう

 レナ殿下と一緒にガーデン・プラントを目指したのだった。


 朝、ふるまえなかったフレッシュハーブティーを飲んでもらいたいという気持ちがあったものの、一度座り込んだら立ち上がることがいやになりそうなので、仕事をさっさと終わらせる。

 今日はジェムが手を貸してくれるようなので、比較的早く終わるだろう。


 レナ殿下には明日ホイップ先生の授業で使う薬草を摘んでもらった。私とジェムはその間、種まきをしたり、雑草を取ったり。

 薬草摘みが済んだら、魔石を混ぜた水を撒いて仕事は完了である。


「レナ殿下、お手伝いしてくれてありがとう」

「いえいえ」

「お茶を淹れてるから、庭で待っていてね」

「ああ、わかった」


 庭に生えているアップルミントとレモンバームを摘んで家に持ち帰る。

 まず、薬草を洗って水分を軽く拭き取ったあと、ぶちぶちとちぎっていく。これをすることにより、ハーブティーが豊かに香るのだ。

 それをポットに入れ、あつあつの熱湯を注ぐ。しばし蒸らしたら、フレッシュハーブティーの完成だ。

 お茶請けのお菓子はクラッカーに、昨日作った焼きリンゴの余りをカットしたものを載せてみた。

 朝、外にだした食卓がそのままだったので、そこでいただこう。


 庭を見学していたレナ殿下に、お茶の準備ができたと声をかける。


「庭の薬草で作ったお茶なの。どうぞ召し上がれ」

「ああ、ありがとう」


 フレッシュハーブティーを飲んだレナ殿下は、やわらかな微笑みを浮かべつつ、おいしいと言ってくれた。


「こっちのクラッカーに載っているのは、昨晩作った焼きリンゴをカットしたものなの」

「おいしそうだな。いただこう」


 パンケーキやフレンチトーストにも合いそうだな、と思っていたが、今日のところはクラッカーと合わせてみた。


「ほどよい甘みと酸味があって、サクサクとしたクラッカーとよく合う。おいしいな」

「よかった」


 しばらく世間話をしていたのだが、レナ殿下は急にキリリと表情を引き締める。


「して、ミシャよ。聞きたいことがあるのだが」

「何かしら?」


 聞かずともわかる。朝、彼女が目撃したヴィルとの抱擁についてなのだろう。


「ミシャはヴィルの恋人なのか?」


 思いっきり直球で聞いてきた。もっと遠回しな感じで質問してくると思っていたので、内心びっくりしてしまう。


 この件に関してヴィルがなんとかすると言っていたものの、具体的に何をするか把握していない。怖くて聞けなかったのだ。

 何も説明しなくてもいいとヴィルから言われていたものの、今回に限っては恋人かとストレートに聞かれてしまったので、否定しておいたほうがいいのだろう。


「恋人ではないわ」

「ではなぜ、朝、あのように熱烈に抱き合っていたのだ?」

「あれは、私が魔力の制御ができるようになったことを、喜んでいたの。その、ヴィル先輩に事情があって、一ヶ月間顔を合わせていなかったものだから、余計に嬉しくなって、私に抱きついてしまったみたい」

「そう、だったのか」


 レナ殿下はホッと安堵したような表情を見せる。

 その瞬間、私は勘づく。もしかして、レナ殿下はヴィルに対して恋心を抱いているのでは? と思ってしまった。

 ずきん、と胸が鈍く痛む。

 この感情はいったいなんなのか。私には理解できなかった。

 

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