うさんくさい店主の正体
サーカスが始まる時間まで、船上ショップ街の見回りを兼ねた調査をして回ることとなった。
お守りとなる、守護の魔法がかかったくまのぬいぐるみを持つのも忘れない。
ジェムは今日もお留守番をするようだ。
いってきます、と声をかけてから出かけることとなる。
船上ショップ街は営業開始時間になったばかりだからか、人通りが多く賑わっている様子だった。
一日目に行ったショコラトリーは人気店のようで、行列ができていた。
「早いうちに買っておいてよかったな」
「本当に」
昨日、レヴィアタン侯爵夫人と一緒にこっそり食べたのだ。
「ホットミルクと一緒に食べたら、とてもおいしかったです」
うっとりしながら話していたのだが、途中でハッとなる。
「すみません、お仕事をされていたのに」
「いや、いい。心配しながら帰りを待たれるよりは、チョコレートでも食べてどっしり構えておいてほしい」
レヴィアタン侯爵夫人が言っていたとおり、心配して手つかずになるより、おおらかな気持ちで待ってくれるほうがいいようだ。
そんな話をしているうちに、〝アイテムの森〟に行き着く。
本人同様に、うさんくさい店構えである。
営業中の看板が下がっているようだが、お客さんの気配はなかった。
「どうします? なんだか入店したら、怪しい品物を買わされそうな気配がぷんぷんしていますが」
「そうだな、帰ろうか」
なんて話していたら、うさんくさい店主が私達を逃がすまい、と出ていた。
「いらっしゃい! ああ、君らは昨日の!」
撤退する前に見つかってしまった。
なんて勘が鋭いのか。
観念してお店の中を見せてもらうこととなった。
店内は儀式に使われそうな怪しい人形や古い壺、理解できそうにない芸術を発揮している絵画に、木彫りの民族など、個性的な商品がぎっしり隙間なく陳列されていた。
「今日のオススメは――これ!!」
店主がそう言って目の前に差しだしてきたのは、サーカスのペアチケットだった。
「じゃーん! 世にも珍しい、船上サーカスのチケットなんだ! しかもペア!」
「残念ながら、すでに所持している」
「がーーーーーーーん!!!!」
基本的に私達は料金込み込みで、サーカスや舞台などの興行を見る代金も含まれているのである。
ただそれもほんの一部の乗客だけで、ほとんどの人達がお金を払って楽しんでいるのだろう。
「もしや君らは、一等船室の乗客なのかい?」
「想像に任せる」
「そ、そうか」
なんでも店主は、借金の形にサーカスのチケットを受け取ったらしい。
「また借金の形か」
「そうなんだよ。私は金貸し屋さんだからね」
「商人ではないのか?」
「うん、そう」
店内に並んである商品のほとんどは、借金の形に受け取った物ばかりだという。
「どうして金で回収しないんだ?」
「みんなお金を持っていないんだよおおお」
この船に乗ったのも、借金を回収するためだったという。
けれども皆、お金を持っていなかったようで、泣く泣く現物で返済してもらったという。
「ここのテナントも、借金の形なんだ。出店するとしたら、一日金貨十枚もいるらしいよ! 高いよね」
さらに、私達の情報も借金の形だったらしい。
「常連さんだから、特別に教えるけどね!」
「いつ常連になったんだ」
「昨日、くまのぬいぐるみを買ってくれたじゃないか~」
ちなみに、私達が初めての客だったという。
「どうしてかな~。ぜんぜんお客さんが寄りつかないんだよねえ」
それはうさんくさいから、の一言だろう。




