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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・四章 新たな任務

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お買い物

「いかがですかな?」


 魔法の付与について説明しないようだ。

 もしや知らないのだろうか。

 ヴィルも気になったようで、質問を投げかけていた。


「これはどこで入荷した品だろうか?」

「ああ、これは実を言うと借金の形に貰った物で、どこの誰が作ったかはわからないんだ」


 どうやら商品についての紹介は、前の持ち主が言っていたことをそのまま伝えただけだったらしい。

 価値のわからない者から、価値のわからない者へと引き継がれた、高価な魔技巧品のぬいぐるみだったようだ。


「贈り物にもいいし、遊んでもいいし、どうかな?」

「いくらか聞いてもいいだろうか?」

「うーーーん、そうだねえ」


 もう何年も売れないまま、持ち歩いているという。


「ここ最近は金貨三枚で販売していたんだけれど、なかなか売れなくてねえ」

「金貨一枚でどうだ?」


 ヴィルは大胆な値切りを提案する。


「金貨二枚だったら……」

「ならばいい。この話はなかったことにしてくれ」


 ヴィルがすぐに立ち上がり、去ろうとする。

 その様子を見た商人が、慌てて引き留めた。


「ま、待て! わかった! 間を取って、金貨一枚と半金貨にしようではないか!」

「金貨一枚。この値段以外で買うつもりはない」

「ええ~~~~~~!」


 ヴィルの意志が固いと思ったのか、商人が折れてくれた。


「わかったよ。持ってけ泥棒、金貨一枚で売ろう」

「感謝する」

「その代わり、この船に良心的な商人がいるって教えてよね」

「約束しよう」


 すごい。ヴィルは魔技巧品のぬいぐるみを、たった金貨一枚まで値切った。

 ぬいぐるみを受け取ると、ふわふわと手触りがよく、魔技巧品でなくても、かなり造りが丁寧でいい品であることがわかった。


「うちは商店街にも出店しているから、ぜひとも覗いてね。洗練された商品がたくさんあるから!」


 言われてふと思い出す。そういえばアイテムが雑多に置かれた、なんだか怪しいお店があったような。


「もしかして、アイテムの森、ですか?」

「そうそう! よく知っていたね!」

「出航前に見かけて」

「気になったんだ!!」

「ええ、まあ」


 あまりにも怪しくて……というのは言わないでおこう。


「ぜひとも遊びにきてね」


 ここで商人と別れ、部屋に戻る。

  レヴィアタン侯爵夫妻はヴィルの交渉術を絶賛していた。


「さすがだったな」

「商人顔負けの値切りでしたわ」


 ヴィルにぬいぐるみを渡そうとしたら、首を横に振る。


「それはミシャが携帯しておいてくれ」

「いいのですか?」

「ああ。守護の魔法がかかっているようだから、何かあったときに役立つだろう」

「ありがとうございます」


 船内を動き回るときは、このぬいぐるみを相棒にしよう、と心に決めた。

 

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