豪華客船の旅
なんでも幻獣保護区での密猟騒動を受けて、怪しい競売会場に潜入するよう国王陛下の勅命が下されたようだ。
そこで幻獣の売買が行われているだろうと確信し、競売に参加したものの、出品されるものの中にはいなかったという。
「幻獣どころか、他の出品物もごくごく普通のもので、怪しい品などはなかったらしい」
けれども最後に出品されたのが、豪華客船の旅へのチケットだった。
「ツィルド伯爵の名前は出さずに競売が開始となったようだが、怪しいと踏んで落札したようだ」
その後、チケットを調べて客船について調べたところ、ツィルド伯爵が別名義で経営する関連商会が押さえたものだということが判明する。
「別名義もわかっているんですね」
「ああ」
さらに参加する面々も、裏社会で暗躍している者達がいるようで、これは怪しい……となったようだ。
「現場を押さえられないように、船上で競売を始める気なのかもしれない」
三日間という短い日程なのも怪しい。さらに今度こそ、ツィルド伯爵の犯行の現場を押さえられるかもしれない。そんなわけで、ヴィルは豪華客船の旅に参加することとなったようだ。
「それで、頼みがある」
ヴィルは居住まいを正し、まっすぐ私を見つめた。
「ミシャにも私のパートナーとして、参加してほしい」
「私も、ですか?」
「ああ」
幻獣の密猟事件の影響で休暇が伸びたと聞き、ヴィルは私も参加してほしいと望んでいるという。
突然の申し出に驚いてしまう。
「あの、私が足手まといになるとは思わなかったのですか?」
「まったく思ったことなどない。むしろ、頼りにしている」
思いがけない言葉に、胸がジーンとしてしまう。
「もちろん、無理強いはしないが」
「いいえ、私も参加します!」
幻獣を競売に出すなんて見逃せないし、因縁のツィルド伯爵が関わっているとなれば、余計に許せなくなる。
「今回はレヴィアタン侯爵夫妻も揃って潜入するゆえ」
「そうなんですね」
豪華客船の旅への参加者は他にもいるという。
「孤立無援状態ではないから、安心してほしい」
レヴィアタン侯爵夫人もいると聞いて心強く思う。
なんでも豪華客船の旅への参加はパートナーが必須なのだとか。
「その、私が断ったらパートナーはどうするつもりだったのですか? もしかしてノアに頼んでいたとか?」
「いいやそうではなく、私が女装して、誰かのパートナーとして参加するつもりだった」
ヴィルの女装!?
見てみたいような、怖いような……!
絶対美人なのはわかる。
けれども自分自身の自信をなくしそうなので、やはり見ないほうがいいだろう。
「それはそうと、明日出発ということは、荷造りを急いでしないといけないですね」
「ある程度必要な物はすでに用意してある」
なんでも豪華客船なのでドレスコードがあるらしく、レヴィアタン侯爵夫人に頼み込んで既製品を買い集めてもらったという。
「何から何までしていただき……恐縮です」
身一つで来てもいいようだ。
「えーっと、その、ジェムと一緒に頑張ります」
それはそうと、船旅なんて初めてである。山沿いの雪国育ちなので、船とは関わらない暮らしをしていたのだ。
ワクワクしてはいけないのだが、どんな感じなのか気になってしまう。
「ああ、そうだ。学校側への許可は」
「このあと取るが、大丈夫だろう」
さすが、監督生長様だ!
「安心して待っていてほしい」
「わかりました」
そんなわけで、私は明日から豪華客船の旅に出ることとなった。




