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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・三章 幻獣保護区でのひと騒動

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エルノフィーレ殿下の選択

「それは、なんなのでしょうか?」


 エルノフィーレ殿下の問いかけに対し、ホイップ先生は「あなたの寿命を百年寄越すのよ~」と言わんばかりの笑みを浮かべつつ答えた。


「使い魔としての契約を結ぶことなの~」

「契約、ですか?」

「ええ。仮契約でもいいと思うの。そうすればあの子に契約者の魔力が行き渡って、元気になるはずだから~」


 通常、幻獣保護区内の幻獣と契約することは禁じられている。

 けれども今回のような、命の危機に瀕している場合は、保護を目的に契約することが許されているようだ。

 これも、授業でしっかり習ったことである。


「どうするのお? この子を助けるのか、助けないか~?」


 エルノフィーレ殿下は顔を上げ、契約者に名乗り出ようとした。

 けれども途中で思いとどまるような表情となる。


「どうかしたのかしらあ?」

「いいえ、私が契約してしまったら、ルームーン国に帰るまでの限定的な関係になると思いまして。他の誰かと契約したほうがいいのかと」

「それはできないわあ。魔法学校の生徒が契約できる使い魔は、一体のみですもの~」

「そう、だったのですね。では、ホイップ先生は?」

「ごめんなさいねえ。私は人里で暮らすエルフ族の規律があって、新たに使い魔と契約することはできないのよお」


 つまり今、ここでヘッジホッグの仔と契約できるのは、エルノフィーレ殿下だけなのである。


「早くしないと、この子の生命力が保たないわよお」

「わ、わかりました、私が契約します!」

「そうこなくっちゃ!」


 使い魔の契約には三種類あるという。

 一つは名付けをもって関係を成立させるもの。

 一つは魔力で強制的に従わせるもの。

 一つは契約対象が望んで関係を結ぶもの。


「この子は意識がないから名付けを受け入れたり、望んで契約を持ちかけたりすることはできないと思うのよお」

「となれば、残るは強制的に契約を取る方法ですね」

「そうねえ」

「方法を教えていただけますか?」

「簡単よお。血を使えばいいの~」


 通常であれば血を用いて魔法陣を作り、契約を成立させるもののようだ。


「この子は衰弱しているから、血を舐めさせて契約の呪文を唱えるだけで大丈夫だと思うの」

「わかりました」


 エルノフィーレ殿下は採取用のナイフを取りだすと、躊躇うことなく指に押し当てる。

 そして、契約の呪文を唱えた。


「――我に従え、幻獣ヘッジホッグよ!」


 ヘッジホッグの口に血を押し当てると、ぺろりと舐めた。

 魔法陣が浮かび上がり、空中で弾ける。

 無事、契約は結ばれたようだ。


 ヘッジホッグはハッと目覚めたかと思えば、元気よく立ち上がる。

 心配そうに覗き込むエルノフィーレ殿下のもとへやってきたようだ。


「あなた、大丈夫ですか?」


 エルノフィーレ殿下の問いかけに答えるように、ヘッジホッグは『プププ!』と鳴いた。

 そっと手を差し伸べると、ごろんと転がるようにしてエルノフィーレ殿下の手のひらに飛び乗る。


「名前を付けてあげないと~」

「少し、考えておきます」

「ええ、それがいいわねえ」


 無事、契約は完了し、ヘッジホッグの命を助けることができたようだ。

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