草原エリアへ
転移魔法で下り立ったのは、爽やかな風が吹き抜ける草原。
その光景を見て、エアが呆然としながら感想を口にする。
「嘘だろう、湿地帯とはぜんぜん環境が違うじゃないか!!」
あちらはジメジメしていて不快でしかなかったのに、ここはほどよく乾燥していて過ごしやすい環境だった。
「魔法で管理されているとはいえ、こんなにも気候が違うのはすごいと思うわ」
「だな!」
幻獣保護区を設計した、マリウス・リヒテンベルガーの偉大さを改めて実感したのだった。
見渡す限りの草、草、草――そんな環境だが、ここには五十種類ほどの幻獣が棲んでいるという。
また空を自由に飛び回る幻獣もいるので、きっちり五十種類というわけではないらしい。
そんな情報を、調べてくれたレナ殿下が教えてくれる。
「地中で暮らす幻獣もいるようだから、なるべく刺激しないよう、慎重に歩き回ったほうがいいかもしれない」
そんな話を聞いたノアが、モグラの幻獣もいるのだろうかとワクワクした様子を見せていた。
最後に、妖精に注意事項を聞く。
「他、気をつけたほうがいい部分などあるだろうか?」
『うーーん、ここは比較的平和なエリアだけど、個体によっては獰猛な奴もいるかもしれないから、油断は禁物でちゅう!』
「わかった、ありがとう」
今回、レナ殿下は独自の方法で幻獣探しをすることを提案する。
「ペアを組んで、片方が幻獣を探し、片方は周囲を警戒するようにしよう」
皆が皆、幻獣探しをしていたら注意散漫になる。
前回の密猟者の件もあるので、慎重に進めたいようだ。
また、幻獣探しに夢中になるあまり、危険な植物が目に入らずに触ってしまう可能性もある。それらの危険を回避するために、ペアを組んだほうがいいと判断したようだ。
もちろん皆も賛成する。
ペアの組み合わせはレナ殿下が決めてくれた。
「私とエルノフィーレ殿下、アリーセとエア、ミシャとノア――この組み合わせにしよう」
エルノフィーレ殿下とレナ殿下はさておき、成績のバランスがいいように組んでくれたようだ。
さすがレナ殿下である。
「ノアさん、よろしくね」
「ああ、よろしく、ミシャさん」
そんなわけで幻獣探しを始めることとなった。
「始めはノアさんが幻獣を探してくれる?」
「いいの?」
「ええ」
「ミシャさん、ありがとう」
ノアは嬉しそうに魔導眼鏡を装着する。
どうやら幻獣探しを楽しみにしていたらしい。
「小さいときに読んでいた、魔物を水晶に閉じ込めて戦わせる物語が大好きで、それみたいだなと思って」
話を聞いていると、前世の世界でもそういうゲームがあったなと思い出す。
どこの世界でも、バトルとコレクション要素のある作品は人気が高いようだ。
近くを散策するエアは空を飛ぶ幻獣を探しているようだが、ノアは地面を一生懸命見ていた。
「――!!」
ノアは何か発見したようで、前方を指差す。
そこには巣穴から顔を覗かせる、白ウサギがいたのだ。
私も魔導眼鏡をかけて確認する。
魔導眼鏡に幻獣の情報が示される。
〝フィールド・ラビット〟と書かれていて、発見者欄にノアの名前があった。
「ノア、まだ誰も発見していなかったみたい!」
「よかった!」
皆も魔導眼鏡を使って発見したフィールド・ラビットを見たかったようだが、すぐに巣穴に隠れてしまったようだ。
「私達も頑張らないといけないな」
「せめて、一種類は発見したいですね」
レナ殿下とエルノフィーレ殿下の言葉に私も頷く。
「次、ミシャさんが探してみなよ」
「ありがとう」
そんなわけで、私も幻獣探しに挑むのだった。




