お風呂に入ろう
浴室は大理石でできていて、お湯は獅子の口から出てくるという高級仕様だった。
魔法仕掛けのお風呂で、蛇口を捻っただけでお湯が流れてくる。
汚れた制服を脱いでかごに入れ、浴室に行こうとしたら、なぜか私よりも先にジェムが滑り込むように入ってきた。
「ジェム、あなたもお風呂に入りたいの?」
訊ねると、そうだとばかりに跳ねた。
こうやって一緒に入りたがるのは初めてだった。
今日はジェムも頑張ってくれたので、背中でも流してあげよう。
石鹸を手に取って、泡立ててからジェムをごしごし洗う。
気持ちいいのか、目がとろんとしてきた。
お湯で泡を流すと、真珠みたいな照りが生まれた。
きれいにしたジェムを、浴槽に入れておく。
私も髪を洗おうとしたら、ジェムの触手が伸びてきた。
「え、洗ってくれるの?」
ジェムは器用に洗髪剤を泡立てて、私の髪を洗い始める。
「ええ、嘘……気持ちいい……!」
凄腕美容師のヘッドスパを受けているような心地よさ。
ジェムにこんな特技があるなんて、知らなかった。
その後、ジェムは私の体も洗ってくれた。
特に、背中をごしごし洗ってもらうのは爽快で、ありがたい気持ちになる。
最後にお湯で泡を流すところまで、きっちりしてくれた。
ジェムが洗ってくれたあとの髪はつやつやと輝きを放ち、肌もしっとり潤っている。
「ジェム、あなた天才よ!」
褒めると、ジェムは嬉しそうな様子で湯船にぷかぷか浮かんでいた。
ゆっくりお湯に浸かったら、疲れも取れたような気がする。
その後、少し仮眠をさせてもらおう、だなんて思っていたら、三時間ほどぐっすり眠っていたようだ。
コンコンコンコン、という控えめなノック音で目覚める。
「はあい」
半分寝ぼけたような声で返事をすると、ノアとアリーセの声が聞こえてきた。
扉を開くと、お茶と食べ物を持った二人が立っている。
「どうしたの?」
「ミシャさんとお茶会がしたくて」
「よろしいでしょうか?」
「もちろん!」
そういえば、昼食を食べ損ねていた。思い出した途端、お腹が空腹を訴える。
「ミシャさん、昼食食べにこなかったからさ」
「心配しておりましたの」
宿泊施設の人にお願いして、サンドイッチやフリットなどの軽食を用意してくれたようだ。
「ありがとう……! 嬉しい」
「僕らも、お昼はあんまり食べることができなくって」
「疲れていたのでしょうね」
ノアやアリーセも、お風呂に入って少し仮眠したら元気になったという。
「エルノフィーレ殿下は僕達より二時間もあとに戻ってきたみたいで」
「きっと今頃お休みになっていることでしょう」
エアも誘いたかったようだが、ここが女子生徒しか入れないエリアらしく、今回はこのメンバーでお茶会をすることとなった。
サンドイッチやフリットの他に、クッキーやチョコレート、ケーキにチーズもある。
ありがたくいただこう。
「それにしても、酷い事件でしたわね……」
まさか密猟者に出くわすなんて、運が悪いとしか言いようがない。
「密猟者側も、僕らみたいな魔法学校の生徒達がいて、同じことを思っていたかも」
「おそらくそうでしょうね」
もう二度と出くわしたくない。心から思ったのだった。




