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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・三章 幻獣保護区でのひと騒動

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お風呂に入ろう

 浴室は大理石でできていて、お湯は獅子の口から出てくるという高級仕様だった。

 魔法仕掛けのお風呂で、蛇口を捻っただけでお湯が流れてくる。

 汚れた制服を脱いでかごに入れ、浴室に行こうとしたら、なぜか私よりも先にジェムが滑り込むように入ってきた。


「ジェム、あなたもお風呂に入りたいの?」


 訊ねると、そうだとばかりに跳ねた。

 こうやって一緒に入りたがるのは初めてだった。

 今日はジェムも頑張ってくれたので、背中でも流してあげよう。

 石鹸を手に取って、泡立ててからジェムをごしごし洗う。

 気持ちいいのか、目がとろんとしてきた。

 お湯で泡を流すと、真珠みたいな照りが生まれた。

 きれいにしたジェムを、浴槽に入れておく。

 私も髪を洗おうとしたら、ジェムの触手が伸びてきた。


「え、洗ってくれるの?」


 ジェムは器用に洗髪剤を泡立てて、私の髪を洗い始める。


「ええ、嘘……気持ちいい……!」


 凄腕美容師のヘッドスパを受けているような心地よさ。

 ジェムにこんな特技があるなんて、知らなかった。

 その後、ジェムは私の体も洗ってくれた。

 特に、背中をごしごし洗ってもらうのは爽快で、ありがたい気持ちになる。

 最後にお湯で泡を流すところまで、きっちりしてくれた。

 ジェムが洗ってくれたあとの髪はつやつやと輝きを放ち、肌もしっとり潤っている。


「ジェム、あなた天才よ!」


 褒めると、ジェムは嬉しそうな様子で湯船にぷかぷか浮かんでいた。

 ゆっくりお湯に浸かったら、疲れも取れたような気がする。

 その後、少し仮眠をさせてもらおう、だなんて思っていたら、三時間ほどぐっすり眠っていたようだ。

 コンコンコンコン、という控えめなノック音で目覚める。


「はあい」


 半分寝ぼけたような声で返事をすると、ノアとアリーセの声が聞こえてきた。

 扉を開くと、お茶と食べ物を持った二人が立っている。


「どうしたの?」

「ミシャさんとお茶会がしたくて」

「よろしいでしょうか?」

「もちろん!」


 そういえば、昼食を食べ損ねていた。思い出した途端、お腹が空腹を訴える。


「ミシャさん、昼食食べにこなかったからさ」

「心配しておりましたの」


 宿泊施設の人にお願いして、サンドイッチやフリットなどの軽食を用意してくれたようだ。


「ありがとう……! 嬉しい」

「僕らも、お昼はあんまり食べることができなくって」

「疲れていたのでしょうね」


 ノアやアリーセも、お風呂に入って少し仮眠したら元気になったという。


「エルノフィーレ殿下は僕達より二時間もあとに戻ってきたみたいで」

「きっと今頃お休みになっていることでしょう」


 エアも誘いたかったようだが、ここが女子生徒しか入れないエリアらしく、今回はこのメンバーでお茶会をすることとなった。


 サンドイッチやフリットの他に、クッキーやチョコレート、ケーキにチーズもある。

 ありがたくいただこう。


「それにしても、酷い事件でしたわね……」


 まさか密猟者に出くわすなんて、運が悪いとしか言いようがない。


「密猟者側も、僕らみたいな魔法学校の生徒達がいて、同じことを思っていたかも」

「おそらくそうでしょうね」


 もう二度と出くわしたくない。心から思ったのだった。 

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