かき氷を食べよう!
「カキゴオリってなんだ?」
「削った氷にシロップをかけた氷菓よ」
「うわ、おいしそう!」
たしか、ジェムにヤマモモのシロップを預けていたはず。それをかけて食べたらおいしいだろう。
すぐ近くに殺菌作用のある薬草があったので、それをコーンみたいにくるくる巻いて器代わりにする。
雪を丸めて雪玉にするイメージを浮かべながら、呪文を再度唱えた。
「しんしん降る、雪よ!」
降ってきた雪玉を、葉っぱのコーンで受け止めた。それに、ヤマモモのシロップをたっぷりかける。
「はい、どうぞ」
「いいの?」
「ええ、召し上がれ」
一口食べたエアが、瞳を輝かせながら「おいしい!!」と言ってくれる。
その反応を見た他の人達も食べたいというので、人数分のかき氷を作った。
スプーンがないのでこの形状にしてみたのだが、レナ殿下やエルノフィーレ殿下は、かぶりついて食べることに少し戸惑っている様子だった。
そんな高貴なお二人に向けて小さな葉っぱと木の枝を使い、簡易スプーンを作ってみると、嬉しそうに受け取ってくれた。
「ミシャのかき氷を食べたら、体が涼しくなりました!」
「本当に! ミシャさんのおかげだ」
アリーセやノアもお気に召したようで、何よりである。
すっかり元気を取り戻したので、進行を再開しなければ。
さあ出発だ、と立ち上がろうとした瞬間、レナ殿下が「待て!」と声をかける。
唇に人差し指を当て、喋らないように指示を出した。
いったいどうしたのか、と思ったものの、エルノフィーレ殿下が指差す方向を見てギョッとした。
短剣を手にした男が、少し離れた場所を通過していったのだ。
ボロボロの服を着ていて、痩せ細っており、目つきがギョロッとしている。
何かを探すように、辺りをキョロキョロと見回していた。
幻獣保護区の職員にはとても見えない。
どくん、どくんと胸が嫌な感じに脈打つ。
しばらく息を潜めていると、男はいなくなった。
「さっきエアが感じた視線って、あの人のものだったのかも」
「そうかもしれない」
一応、レナ殿下に報告していたものの、エアは気のせいかもしれないと重ねて言っていたのだ。
「あのとき、もっと詳しく報告していたら……」
「いや、事前に聞いていたおかげで、警戒していたのだ」
すぐにホイップ先生に報告しよう。
そう思って辺りを見回す。
「あれ?」
妖精の姿がどこにもない。
「休憩前には傍にいたのですが」
エルノフィーレ殿下がしっかり確認していたという。
「もしかしてここに座ってから、私達の姿や気配が消えたと思って、はぐれたと勘違いした?」
「その可能性が高い」
妖精もしっかりレジャーシートの中に入っているものだと勘違いしていた。
まさか、気配及び姿消しの魔法がこのような結果を招くとは……。
「宿泊施設に行って、先生に報告したほうがいい」
他の生徒にも危険が及ぶ可能性があるのだ。
急いでホイップ先生から貰った魔法巻物を取りだしたのだが、目にした瞬間ギョッとする。
「え、何これ……!?」
魔法巻物に書かれた呪文が、湿気で滲んでいたのだ。
これでは転移魔法は使えない。
どうしたものか、と天を仰いでしまった。




