模擬戦を終え
傍で見守ってくれていたレナ殿下が「素晴らしい戦いだった」と絶賛してくれる。
「とても勇敢だった」
「そう? 単に無我夢中だったの」
以前も、ノアと共に雪山でスノー・ディアに対峙したときがあった。
けれどもあのときはヴィルに助けてもらったのだ。
改めて、魔物は恐ろしいと思ってしまった。
「先ほどリチュオルがしたように、いずれは攻撃魔法に属性を付与させる授業も行う。魔法式など、各自で考えておくように」
リオール先生の話を他人ごとのように聞きながら、元の位置へ戻った。
そんな私をエアとアリーセが迎えてくれる。
「ミシャ、すごかったじゃん!」
「とても立派でした」
「ありがとう」
まだ胸がばくばく鳴っていた。
心臓に悪い授業だと思ってしまう。
「次、アリーセ・フォン・キルステン。それからノア・フォン・リンデンブルク、双方前に出るように」
アリーセとノアも攻撃魔法の成績優秀者のようだ。
二人は何やらボソボソと内緒話をしていた。
きっと私やレナ殿下の戦いを見て、作戦を立てているのだろう。
「杖を構えるように――始め!!」
もはやお馴染みとなったジャッカロープが登場する。
私のときみたいに大きな個体が出てきたらどうしよう、なんて思ったが杞憂だった。
レナ殿下が戦ったのよりやや小ぶりのジャッカロープである。
まずはノアが先手を打った。
「衝撃よ走れ、エナジー・アロー!!」
すばやい矢はジャッカロープめがけて飛んでいったものの、ひらりと回避されてしまった。
ただそれは想定内だったようだ。
回避のさいにできた隙を、アリーセは見逃さなかった。
すかさず攻撃魔法を放つ。
「衝撃よ走れ、エナジー・アロー」
アリーセが撃った矢は見事ジャッカロープの脳天を貫通。
無事、仕留めることができたようだ。
「コンビネーションが見事だった。いい戦いを見せてもらった」
アリーセとノアが戦う前に話していたのは、これだったのだろう。
二人で戦うときはむやみに攻撃するのではなく、戦略も必要なのだ。
学びのある模擬戦だった。
それから次々とクラスメイト達が模擬戦に挑む。
中には倒せずに、降参するコンビもいた。
エアは果敢に攻撃魔法を展開させ、二撃目で仕留めていた。エルノフィーレ殿下は華麗に一撃で仕留める。皆、私よりはスマートにジャッカロープを倒していた。
そんなこんなで授業が終わる。
教室の外に出ると、どこからともなくジェムが登場し、怒っている様子だった。
「あら、ジェム、あなたどこにいたのよ」
それはこっちの台詞だ! とばかりに憤っているように見えた。
「え、何? どうしたの?」
「ここの教室は使い魔の侵入を禁じていた」
私の疑問に答えてくれたのは、リオール先生だった。
「使い魔が傍にいたら、主人を守ろうと行動する。そうなれば授業にならないからな」
「ああ、そういう目論みがあったのですね」
無理矢理出入り禁止扱いされたので、ジェムは怒っていたのだろう。
「まあ、主人を守ろうと出しゃばる、我が強い使い魔はごく稀だがな」
「そうだったのですね」
たしかに、周囲のクラスメイトを見てみても、ジェムのように怒っている使い魔はいない。
私と二度と離れまい、と思っているのか、腕にしがみついてきた。
ジェムは我が強い、という言葉がぴったりだなと思ってしまった。
授業が終わっても皆、高揚しているようで、休み時間も興奮した様子で授業について話していた。
「いやー、やっぱミシャの巨大ジャッカロープとの戦いが一番熱かったな」
「私は二度とあのサイズの魔物と戦うのはごめんだわ」
どうして私だけあんなに大きな魔物と戦うはめになったのか。
運が悪いとしか言いようがない。




