模擬戦
「この二名は攻撃魔法の成績優秀者、上位二名である」
まさかクラス内でいい成績だったとは。
実は攻撃魔法の才能があったとか?
これからは力を入れて学んでいこう、と心の中で誓った。
「では、始めるから、杖を手に取るように」
自慢の杖であるスノー・ホワイトを手に取り、前に構える。
レナ殿下のほうを見ると、「ミシャ、頑張ろう」と声をかけてくれた。
リオール先生が床をつま先で叩くと、ジャッカロープが登場する。
即座に、レナ殿下は攻撃魔法を放った。
「衝撃よ走れ、エナジー・アロー!!」
杖の先端から鋭く伸びた矢が飛び出してくる。
早い!
私なんてまだ、形にすらなっていないのに。
レナ殿下の放ったエナジー・アローは、ジャッカロープの胸辺りを貫く。
仕留めることに成功したようで、その姿は消えてなくなった。
「レナ・フォン・ヴィーゲルト、よくやった!」
クラスメイト達はさすがだ! と絶賛し大盛り上がりだった。
私は手も足も出なかったわけだが、当然ながらこれで終わりというわけでなく……。
「次、ミシャ・フォン・リチュオル、一人で仕留めてみろ!」
「は、はい」
やっぱりそのパターンか、と内心思う。
レナ殿下と二人だったらなんとか倒せそうだ、なんて思っていたのに。
リオール先生はもう一体、ジャッカロープを作り出す。
現れたのは、体長一メートル半はありそうな大きな個体。
「ええええ!?」
これまでのジャッカロープは四十センチくらいだったのに。
ジャッカロープはギラリと目をぎらつかせ、私を見つめる。
「嘘っ!?」
次の瞬間には、大きく跳躍した。
「きゃーーーーー!!」
頭の中が真っ白になったが生存本能なのか、体が勝手に動く。
横に避けた瞬間、ジャッカロープがすぐ傍を通過していった。
着地したジャッカロープは私を振り返り、なぜ避けたんだと訴えるように睨んできた。
前歯をガチガチ鳴らし、明らかに怒った様子でいる。
「ひいいいい!!」
今度は角を前に突き出し、後ろ足で床を掻く。
角で攻撃を繰り出そうとしているのだろう。
次は避ける自信がない。
ということは、攻撃魔法で倒さなければならないのだ。
『ギャアアアアアア!!』
ジャッカロープが咆哮するのと同時に、呪文を叫んだ。
「衝撃よ走れ、エナジー・アロー!」
放たれた矢が途中で雪を纏い、まっすぐ飛んでいく。
『ギャッ!!』
命中したものの、片方の角を折る程度の威力だった。
「ええええ~~~!」
模擬戦なのだから、攻撃が当たって終了でいいのではないか!?
こんなリアルな幻獣を作り出さなくても……!!
なんて叫びたくなる。
ジャッカロープはさらに怒っているようで、全身ぶるぶると震えていた。
『ギャアアアアアアア!!!!』
渾身の一撃を与えてやろう! とでも言っているのか。
そんなジャッカロープにもう一撃、攻撃魔法を放つ。
「衝撃よ走れ、エナジー・アロー!!」
今度はひらりと回避されてしまった。
「もう、嘘でしょう?」
成績優秀者なのだから、華麗に終えてみせよう。
なんて、心のどこかで思っていました。
ごめんなさい。
一位のレナ殿下と、二位の私とは天と地ほども実力に差があったのだ。
なんて悲しい現実に直面しているうちに、ジャッカロープが目の前に迫る。
どうしようか、なんて思っている間にリオール先生が叫んだ。
「リチュオル、雪属性を付与して攻撃してみろ!!」
「えええええ!?」
そんな無茶な、と思いつつも、やってみるしかない。
「雪よ舞え、スノー・アロー!!!!」
スノー・ホワイトから放たれたのは、雪を押して固めて作ったような純白の矢。
まっすぐ飛んでいったものの、またしてもジャッカロープに避けられてしまう。
「ああ!」
声を上げるのと同時に、雪の精霊が出現する。
彼らはきゃっきゃと楽しそうに、矢の軌道を変えてくれた。
雪の精霊達の誘導でスノー・アローはジャッカロープめがけて飛んでいき、見事、胸に深く突き刺さった。
『ギャアアアアアアア!!!!』
ジャッカロープは断末魔の叫びを上げ、消えていった。
わっ!! と沸いたクラスメイトの声で我に返る。
どうやら無事に勝つことができたらしい。
「ミシャ・フォン・リチュオル、よくやった」
リオール先生が褒めてくれた。
ここで安堵が押し寄せる。
模擬戦にて、無事、合格点を貰ったのだった。




