幻獣についてその①
三学期は行者遠足の目的地である、幻獣保護区に行くことを意識した授業がおのずと多くなるようだ。
今日は総合魔法の授業で幻獣について習った。
「幻獣の定義というのは、人、精霊、妖精、魔物以外の、知性ある生き物の総称である」
基本的に人語は話さないが、人間の言葉を理解するほど知性が高いようだ。
それなのに普段は森の奥地や高山、湖の水底など、人目につかない場所に生息しているという。
「研究者の一節では、幻獣は徳を積んだ人間嫌いの高僧の生まれ変わりとも言われているという」
たしかにそれならば幻獣が人語を理解するのに、人から遠く離れた場所に生息している理由がよくわかる。
「普通に暮らしているならば、一生幻獣を目にする機会は訪れないだろう」
それくらい、幻獣というのは稀少な存在だという。
幻獣についての詳しい説明が深くなるにつれて、皆の眠気を誘っているようだ。
近くの席に座る男子は、すでに櫂で船をこぐようにこっくりこっくりと居眠りしていた。
先生はそれに気付いたようで、分厚い教本をばたん! と大きな音を立てて閉じた。
その音で隣の男子もびくっと反応し、目覚める。
ここで先生は生徒達がもっとも興味のある話題に移った。
「次に、幻獣の種類について説明しよう。もっとも有名な幻獣と言えば、〝竜〟だろう」
先ほどまで眠そうにしていた男子の多くが、眠そうだった瞳を瞬時にキラキラ輝かせる。
やはり竜というのは男子の永遠の憧れらしい。
前世でも、学校で使う裁縫道具入れや簡易リュック、エプロンなどに竜が描かれた物が多数あった。
年頃の男子が竜に憧れるというのは、世界共通なのかもしれない。
「竜には多くの属性があり、四大属性の他、氷、闇、暴風、毒、雷、炎などがある」
ヴィルの使い魔であるセイグリットは聖属性。
エアの使い魔であるリザードは炎。
同じ竜でも、見た目や属性に相違あるの特徴なのだろう。
それはそうと先生が言う例にはなかったのだが、雪属性の竜は存在するのだろうか?
考えるだけでもワクワクしてしまう。
「幻獣の中でも竜の希少性は第一位で、強さ、魔力、知力は群を抜いて高い。あまりにも目撃されないため、伝承の中でのみ登場するのではないか――などと囁かれているくらいだが」
ヴィルが聖竜であるセイグリットを従えているので、あまりピンとこないだろうと先生は言った。
「王家に連なる家系に生まれた男児が、竜を従えることがあるという。竜を使役し王位につく者は、いつの時代も名君とされていたようだ」
王太子であるレナ殿下が在籍するクラスで、その話題に触れるかと内心思う。
ちらりとレナ殿下のほうを見たら、特に感情を表に出すことなく、真剣に授業を聞いていた。
そこから少し離れた席に座るノアは、凄まじい表情で先生を睨んでいる。
きっとレナ殿下にそんな話を聞かせるな!! と訴えたいのだろう。
ここで竜の話題は終わったので、ホッと胸をなで下ろす。
「竜以外の幻獣で有名なのは、鷹獅子だろう。鷹の気高さ、獅子の勇敢さを会わせもつ孤高の幻獣は、さまざまモチーフに用いられることが多い」
それ以外にも、一角馬や翼馬、宝石獣に不死鳥などなど、有名どころの話を聞かせてくれた。
まるでおとぎ話を聞いているような気分になる。




