攻撃魔法
床には短距離走のコースみたいなラインと、呪文が刻まれている。
放った攻撃魔法が他の生徒に飛んでいかないような、障壁の役割をこなす魔法だとか。
本当に、よく考えられている部屋だ、としみじみ思ってしまった。
杖を取りだすと、エアが反応する。
「おお! ミシャ、杖、新しくなっているじゃん!」
「あ、そうなの! スノー・ホワイトって言ってね」
杖を握ったからか雪の精霊達が私の周囲に出現し、ふわふわ漂いながらエアに話しかけてくる。
『かわいいでしょう~?』
『自慢の品なんだ』
『世界でただ一本だけなんだよ!』
雪の精霊を見たエアはギョッとしていた。
「な、なんだ、その綿雪みたいなのは!?」
「雪の精霊なの」
私がスノー・ホワイトを持っているときのみ、私を含めて周囲の人達に目視できるようになるようだ。
「へーー、雪の精霊って、こんななんだ! かわいいな!」
エアにかわいいと言われ、雪の精霊達はてれてれと照れながらも、嬉しそうだった。
「これからもミシャのこと、よろしくな!」
『もちろん、王様!』
『うんうん、王様のお願いは絶対!』
『王様、かしこまり~』
「え?」
エアが驚いた顔で私を見つめる。
「えーっと、ほら! エア、みんな、攻撃魔法を試してみましょう!」
「ああ、そうだな」
きっと雪の精霊達には、エアが正統な王位継承者であるとわかっていたのだろう。
しかしながら、本人に向かって言わなくてもいいのに。
「エア、落ち着いてからやりましょうね」
「ああ、わかってる」
気持ちの乱れが、魔法の乱れに繋がるのだ。
雪の精霊達には大人しくするように言ってから、攻撃魔法の練習を行う。
魔力を紡いで、矢を弓に番えるようなイメージを作り――。
「衝撃よ走れ、エナジー・アロー!」
スノー・ホワイトの先端から、雪を固めて作ったような矢が突き出し、まっすぐ飛んで行く。
壁に書かれたターゲットの真ん中に当たっただけでなく、壁にヒビが入った。
「え!?」
「ミシャ、すごいな!!」
他のクラスメイトはターゲットに届かず、途中で落ちる者がほとんどだった。
リオール先生が皆に攻撃魔法の中止を呼びかけながら、血相を変えて駆けてくる。
「リチュオル、大丈夫か!?」
「はい、この通り、なんともありません」
びっくりした。
雪属性を付与したつもりなんてないのに、勝手に雪の矢が放たれたから。
「すみません、壁にヒビが入ってしまいました」
「信じられん。あの壁は絶対に破損しないよう、強力な防御魔法をかけてあるというのに」
なんでも稀に、壁を破損してしまう生徒がいるらしい。
「このようなことは、ヴィルフリート・フォン・リンデンブルク以来だ」
まさかヴィルも同じように壁を壊していたとは。
「気にすることはない。制御もできているようだし、属性が付与されるのは稀にあることだ」
ただ練習はこれで終了し、見学しているようにと言われてしまった。




