仮面舞踏会へ
純白ウサギ耳仮面に変身を遂げた私は、姿見を前に絶句する。
全身白だというのに、あまりにも派手な装いだった。
胸元はレヴィアタン侯爵夫人が言っていたように、ファーのマフラーがあるのでそこまで気にならない。
スリットも大きく動かなければ、足は見えないようだ。
ただ、網タイツを穿いているので、見えたときの衝撃がすごい。
背中のほうもスースーするが、気にしないでおこう。
「ミシャさん! 天才的に愛らしいです!」
「そう、ですか?」
「ええ! 美しい雪原でしか生きられない、儚い雪うさぎのようです!」
そうだろうか?
前世で言うところの、何かのキャラクターのコスプレにしか見えないが。
今は大絶賛してくれたレヴィアタン侯爵夫人の言葉を信じよう。
続けてヴィルがやってくる。
黒騎士風のサーコートに身を包んだその姿は、あまりにも眩い。
髪も黒いカツラを被っているので、全身黒の装いである。
「ヴィルフリートさん! すごいです! 本物の黒騎士のようです!」
レヴィアタン侯爵夫人はあまりの似合いっぷりに感激していた。
たしかにかっこいい。私も普段見ないヴィルの姿から、目が離せなくなる。
「ヴィルフリートさん、よくお似合いですので、自信を持って参加されてくださいね!」
キャッキャと盛り上がるレヴィアタン侯爵夫人を前にしたヴィルは、遠い目をしていた。
「ミシャさんと並んだ姿を拝見したら、黒と白の対比が美しくて……! はあ、とため息が零れます。お二人の姿を夫にも見てもらいたかったのですが、時間切れのようですね」
外はすっかり暗く、もうすぐツィルド伯爵の屋敷で仮面舞踏会が始まる時間となる。
レヴィアタン侯爵夫人は馬車の手配もしてくれた。
「どうかお気を付けて」
レヴィアタン侯爵夫人に見送られながら、私達は出発することとなった。
馬車で二人きりになった途端、ヴィルはため息を吐いた。
「ただ着替えるだけなのに、ここまで盛り上がるとは」
「いえ、その、特別かっこよかったので」
「私がか?」
「ええ」
他に誰がいるというのか、と聞きたくなる。
「ミシャの装いは似合っているが――」
「何か至らない部分がありますか?」
「いいや、完璧過ぎて、誰にも見せたくない」
まっすぐな瞳で言われると、照れてしまう。
「このまま仮面舞踏会なんぞ参加せず、連れて帰りたい」
「何をおっしゃっているのですか!」
冗談に聞こえなかったので、強めに言っておく。
「その、仮面を外した姿を見せるのは、ヴィルだけですので」
恥ずかしいけれど、きちんと伝えておく。
するとヴィルは満足したような顔で頷いてくれた。
そんな話をしているうちに、会場に到着する。
仮面舞踏会は大盛況のようで、ツィルド伯爵の屋敷へ繋がる道は馬車が渋滞していた。
やっとのことで下車しエントランスで受け付けを済ませる。
詳しい身分確認をされたらどうしよう、と思っていたが、あっさり中へ入ることができた。
それにしても、思っていた以上の盛況っぷりだ。
ツィルド伯爵がこれまでしたことを考えると、だんだん腹が立ってくる。
一刻も早く、ツィルド伯爵の尻尾を掴みたいところだが、今回の目的はジルヴィードだった。
集中しなければ。
改めて気合いを入れた。
周囲には真っ赤なドレスにクジャクの羽根を付けた仮面を装着した人や、熊の着ぐるみ姿、全身金ぴか鎧姿の参加者など、私達の仮装が霞むほど派手な装いをした人ばかりだった。
悪目立ちしたらどうしよう、なんて考えが一気に消え去る。
「その、このような状況で、ジルヴィードを発見できるでしょうか?」
ヴィルは本日二度目の遠い目をしながら、会場を眺めていた。




