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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・四章 叔父を捕まえろ!

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叔父の確保へ③

 向かった先は私とヘルタが夕食を食べた、ミュラー商店が経営するレストランである。

 通常、この時間帯は営業していないようだが、叔父を捕獲する作戦を実行するために開けておいたのだとか。

 叔父は馬車から降りるなり、上機嫌で「いい店だな」なんて言っていた。


「今日はたくさん飲んで、食べてくれ」

「もちろん、そのつもりだ」


 叔父はこのあと捕まるとは夢にも思わず、ウエイトレスの誘導に従って歩いていた。

 なんの疑問も持たずに、地下へ繋がる階段に下りる。


「こちらへどうぞ」

「ああ、ご苦労!」


 偉そうにそんなことを言って個室へ入ったので、すぐさまウエイトレスが扉を閉める。

 そのあと、しっかり施錠された。


「お、おい、どうして――鍵、閉まっているじゃないか!!」


 叔父は閉じ込められたのに気付いて、扉をどんどん叩いていた。

 地下へ連れていかれた時点で、異変に気付くかもしれない。

 そう思っていたが、まったく問題なかった。

 ネズミ取りに引っかかった野ネズミのように、あっさり捕獲に成功する。

 ここはミュラー商店に盾突く者を監禁するために作られた地下空間らしい。

 内部の様子はマジックミラーのような窓から確認できるという。

 ヘルタの協力はここまでである。

 ミュラー男爵の部下が宿に送ってくれるようなので、彼女の身柄は任せておこう。


「ヘルタ、ありがとう」

「無事、成功してよかった」

「ええ。もう大丈夫だから、今日はゆっくり休んで」


 ヘルタは安堵の表情を浮かべ、宿へ帰っていった。

 一方、叔父はしばらく扉を叩いて壊そうとしていたが、頑丈な金属製の扉なのでびくともしなかった。

 手が痛くなったのか即座に叩くのを諦め、ヘルタの名を叫ぶも、答えるわけがなく……。

 途中で喉の渇きを覚えたのか、テーブルの上に置かれていた酒を一気に飲み干す。

 二本目に手を伸ばす前に、ミュラー男爵が声をかける。

 なんでも窓に触れると中に声を届けることができるらしい。


「ガイ・フォン・リチュオル、聞きたいことがあります」

「うわっ、なんだ、どこにいる?」

「あなたの脳内に直接語りかけています」

「な、なんだと!?」


 ミュラー男爵も冗談なんか言うんだ、と思ったものの、深刻な状況なだけに笑うことはできなかった。


「あなたは騎士隊に拘束されたはずですが、どうやって抜け出してきたのですか?」

「そんなの知るか――〝それは、ツィルド伯爵の名を出したら、簡単に釈放されて……〟」


 叔父はすらすらと答える。

 実を言えば、先ほど叔父が飲んだ酒に自白剤が入っていたのだ。

 効果抜群だったようで、ミュラー男爵の問いかけにあっさり答える。


 それはそうと、騎士隊からの逃走にツィルド伯爵が関わっていたとは。その可能性があると考えてはいたものの、実際に本人から聞いて呆れた気持ちになる。


「ツィルド伯爵に、保護を求めなかったのですか?」

「〝ああ。もう庇いきれないって言われてしまって……〟」


 さすがのツィルド伯爵も、今回叔父のやったことを正当化し、このまま傍に置くことはできなかったようだ。 


「そもそも、ミュラー男爵の名を騙ってしていた商売は、あなたのアイデアだったのですか?」

「〝いいや、違う。ツィルド伯爵が、がっぽり儲けることができると、紹介してくれた……〟」


 ミュラー男爵の名を騙って行っていたネズミ講のような犯罪行為は、ツィルド伯爵の斡旋のもとで行っていたものだったらしい。

 利益の四割を受け取っていたという。

 自分の手を汚さず、他人に犯罪行為を働かせるなんて、狡猾な男である。


「他、彼に聞きたいことはありますか?」


 すぐさま挙手する。

 魔法学校への入学前に、叔父はレナ殿下を誘拐した。

 それについて、ずっと聞きたいと思っていたのだ。


「レナハルト殿下の誘拐について聞きたいの! あれは誰の命令で――」

「ぐう!」


 あろうことか、叔父は立ったまま眠っていた。

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