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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・四章 叔父を捕まえろ!

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叔父の確保へ②

 見つけた!!

 叔父は勝手知ったる我が家のように、ドアをガチャガチャ鳴らして中へと入ろうとしている。


「んん? 鍵がかかっているな。灯りも点いていないし、まさかもう寝ていがやるのか?」


 叔父はどんどん! と扉を叩いて「ヘルタ!!」と叫んでいる。

 その扉の叩き方はトイレに誰か入っているか確認するものだ――と、そんなことはさておいて。

 ヘルタの肩を叩いて合図を出す。すると彼女は頷き、玄関のほうへ回って叔父へ声をかけた。


「あんた、お帰り」

「うわ!! ヘルタか!! いきなり現れるからびっくりした!!」


 暗闇の中、無理矢理叔父を捕まえることもできたがしなかった。

 というのも叔父は魔法学校出身で魔法が使えるので、どう出るかわからないため、ヴィルが考えたおびき寄せる作戦に出たのだ。


「こんな夜遅くに、どうしたんだ?」

「あんたがこの前話していた、花街の仕事をしに出かけていたんだよ」

「そうだったのか! いや、大変だったな」


 婚約者に花街での仕事を斡旋するなんて、どんな外道だ、と思ってしまう。


「お金がたくさん入ったから、今日はどこかいいところに食事に行かないか?」

「おお、いいな! いったいどれくらい稼げたんだ?」

「金貨三枚ってところかな」

「おお……すごいな」


 ヘルタが革袋を取りだし、中に金貨があると示すためにカチャカチャと音を鳴らす。

 叔父は実に悪どい笑みを浮かべつつ、よくやったと声をかけていた。暗闇で見えないと思って、あんな顔をしているに違いない。

 暗視の魔法をかけたヘルタに見えているとは、夢にも思っていないのだろう。


「少しめかしてくるから、ここで待っていてくれないか?」

「めかす?」

「ああ。いい店に行くんだ。おしゃれくらいしないと」

「そのままでも十分きれいなんだが」

「これは仕事着なんだ。少しここで待っていてくれよ」

「わかったよ」


 強引に出発したらどうしようかと思っていたが、叔父は待てを命じられた犬のごとく、外で待機し始める。

 その間、ヘルタは家に戻り、最低限必要な物を持ち出す。

 叔父には姿が見えない状態の私とジェムが同行する。


「急がないと!」


 ヘルタがどかどかと足音を立てつつ、自らの部屋へ駆け込む。


「静かにしなくて大丈夫? お父さん、起きない?」

「ああ、一度寝てしまったら、大きな物音を立てても起きないんだ」


 一応、ミュラー男爵がヘルタのお父さんを見張っているので、目覚めるようなことがあったら声をかけてくれるだろう。


 ヘルタがまず、しゃがみ込んで床板を剥がす。そこにあったのは、母親の形見だというサテンのリボンだった。これだけは奪われないよう、日替わりで隠す場所を変えて死守していたらしい。

 あとはワンピースなどの服を数着、まとめてジェムに預ける。


「これで大丈夫」

「もういいの?」

「ああ。あとはガラクタばかりだ」

「そう」


 服は着替えずにそのまま出て行ったが、叔父は変化がないことに気付いていないようで、「きれいだ」なんて適当なことを言っていた。


「大通りに馬車を待たせているんだ。そこまで歩こう」

「おお、準備がいいな」

「任せてくれ」


 ヘルタは上手く叔父を誘導していた。

 暗闇の中進んで行き、ミュラー商店の馬車へ乗り込む。

 叔父は姿消しの魔法がかかった私達があとに続いたことも知らず、「いい馬車だな」なんてのんきに話していた。

 御者が扉を閉め、ガチャンとしっかり施錠する。


「ん、今、鍵を閉めたのか?」

「この辺りは物騒だからねえ」

「まあ、たしかに」


 馬車は走り始める。

 無事、叔父を連れ出すことに成功した。

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