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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・四章 叔父を捕まえろ!

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潜入!

 バーチは畑が広がる平坦な台地と、標高の低い山々が連なる丘陵が特徴的な、自然が豊かな場所に位置する。

 王都よりも広く、街中にも緑が溢れ、のほほんとした空気が流れる。

 そんな場所だ。

 今はライラックが花盛りのようで、至る場所に紫色の美しい花が咲いている。

 ライラックを見にやってくる観光客も多いようで、皆、お花見を楽しんでいるようだった。

 私もじっくり眺めたい気持ちに駆られていたが、バーチへやってきた目的は叔父の捜索である。

 ミュラー男爵曰く、身分証がない叔父は日雇いの仕事をどこかでしているだろうとのこと。


「身分証を必要としない職場の情報を掴みました。各々、潜入して探してみましょう」


 四カ所ほどあるようで、繊維工場、酒場、賭博場のボーイ、倉庫番だという。


「繊維工場は女性が大半だというので、ミシャ・フォン・リチュオル、お願いできますか?」

「はい、問題ありません」


 ヴィルは賭博場、ミュラー男爵は酒場、部下は倉庫番の仕事を担うこととなった。

 単独行動なのでヴィルが心配していたものの、彼みたいな育ちのいい青年が女性ばかりの職場にいったら大騒ぎとなるだろう。悪目立ちしてしまう可能性が高い。


「大丈夫ですよ、もしものときはジェムがいますし、危機感を覚えたらレヴィアタン侯爵邸に転移巻物を使って逃げますので」


 ヴィルはしぶしぶといった様子で「わかった」と言葉を返す。

 その後、各々別れて行動開始となった。

 ミュラー商店で働く諜報員がやってきて、現場まで案内してくれる。

  工場で働く前に、相応しい格好と仮の身分証が手渡された。


「これからこちらの服を着て工場までいっていただき、マヤ・チョーカーという名で、夕方まで働いていただきます」


 ミュラー商店が経営する衣装店でくたびれたワンピースに着替え、ブラウンのカツラを被り、そばかすを散らした地味な印象の化粧を施してもらう。

 ジェムには何かあったときのための対策として、姿隠しの魔法を展開させ、常に傍にいるようにお願いしておいた。


 乗り合いの馬車で向かった先はバーチの郊外にある、かなり大きな工場だった。

 ここでは千人以上の人々が働いているらしい。

 すでにミュラー商店からも数十名潜入し、叔父を探しているようだが、それらしい人は見つかっていないようだ。

 働く人の大半は女性といっても、千人規模の工場であれば、調査も難航するのだろう。 乗客はすべて、繊維工場で働く人々だったようだ。

 集合場所には大勢の人達がいて、係の人の案内で敷地内に案内される。

 身分証を確認することなく、配属を振り分けられていた。


「あなた、名前は?」

「マヤ・チョーカーです」

「細かい作業は得意?」

「ほどほどに」

「だったら、あっちの人達についていって」

「わかりました」


 向かった先はリネンを叩いて繊維を取りだす工程だった。

 皆、棍棒のようなものを握って、リネンの茎をガンガン叩いている。

 新入りがやってきても気にすることなく、無心でやっているようだった。

 作業は白衣を着て行うらしい。髪の毛が落ちないように、キャップも深く被るという。

 作業場は五十人くらいの人がいるだろうか。皆、同じ格好で帽子を被っているため、性別すらわからないという状況である。

 果たして、この中に叔父はいるのだろうか。

 あまりキョロキョロすると怪しまれそうなので、今は作業に集中しなくては。

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