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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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真実をエアに

 翌日、ミュラー男爵はエアを連れてレヴィアタン侯爵の屋敷を訪問した。

 宣言していたとおり、たった一日で気持ちの整理が付いたらしい。


「ミシャ、遊びにきたぜ! 今日はなんかおじさんが改めてお礼を言いたいってのと、大事な話があるって言っていたんだが」

「ええ、そうなの」


 案内した客間に、レヴィアタン侯爵とヴィルがいたので、エアは少しだけ緊張した面持ちを浮かべる。

 隣にいた私に小声で「このメンバーで何を話すんだろう?」と少し不安げな様子だった。 安心させるために背中をぽんぽん叩くことしかできなかった。

 ここで本題へと移る。


「実は今日、エアさんに初めてお聞かせする話があるんです」


 エアは緊張の面持ちで頷く。

 レヴィアタン侯爵やヴィルがいる状況で聞かされることもあって、重要な話だと理解しているのだろう。


「何から話せばいいのかわからないのですが、一つ、大事なことから」


 エアがごくん、と生唾を呑み込んだあと、ミュラー男爵は彼に真実を伝えた。


「エアさん、あなたの亡くなった母君は、王妃様でした」

「――え?」

「あなたが生まれた日、何者かに襲撃を受け、逃げてきたんです」

「俺の母親が、王妃って」


 エアも母親が貴族のお嬢様かもしれない、というのはわかっていたという。

 しかしながら王妃だったというのは想像できていなかったようだ。


「え、なんで……? そんなの」

「ずっと言い出せずに、申し訳なく思っています。私はかつて王妃様の護衛をしていた騎士で、あなたのことを王子だと思い、今日まで守ってきました」

「俺が王子だって!? ありえないだろうが」


 エアは信じがたいという表情で私を見てきた。


「なあ、ミシャ、信じられないだろう?」


 なんて言っていいのかわからなくて、エアの震える肩を支えることしかできなかった。


「そんな……俺が王族だったなんて……信じられないよ」

「エアさん、あなたが所持していた母君の形見である緑色の魔宝石は、王太子の証だったんです」

「え、あれが!?」


 もっと立派な宝飾品であればわかりやすかっただろうに、見た目は完全にただの裸石ルースにしか見えなかったので無理もないだろう。


「俺、あれ、ミシャにあげてしまった!」

「ええ、存じています」

「母さんが、世話になった人に渡せって」

「ええ。王妃様は持っていても、無駄だと思ったのでしょう」


 頭を抱えるエアだったが、「そっか、そうだったんだ」と小さく呟く。


「母さんがさ、貴族だか王族だかって話題のときに、顔面蒼白になって、取り乱していたんだ。ずっとどうしてだろうって思っていたんだ」


 その疑問が今日、きれいさっぱり晴れたという。


「王妃の立場を追われて、生きながらえている状況だったら、誰だって怖いよな」


 もっと取り乱すかと思っていたのに、エアは思っていた以上に落ち着いていた。

 その後も、ミュラー男爵の話を淡々と受け入れていたように思える。

 レナ殿下が女性だと聞かされても「そうだったんだ」と言って、あっけらかんとしていた。


「いや、男にしては線が細かったし、物腰もやわらかかったからさ」


 女性だと聞いて納得できたという。


「ずっと黙っていて、すみませんでした」

「おじさん、謝らないでよ。俺、おじさんにはずっと感謝していて、でも、どうしてここまでよくしてくれるんだろうって、疑問だったからさ」


 話を聞くことができてスッキリしたという。

 今にも泣きそうなミュラー男爵に、エアは感謝の気持ちを伝えた。


「これまで守ってくれて、ありがとう」

「はい……エアハルト殿下」


 ミュラー男爵の頑張りが報われた瞬間だろう。

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