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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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再会

 ミュラー男爵はレヴィアタン侯爵の誘導には抵抗せず、大人しくついてきた。

 竜車に乗るさい、レヴィアタン侯爵はお目付役なのか同乗してくる。

 騎士達は誰もリンデンブルク大公に反抗的な態度を見せることなく、恭しい態度で見送ってくれた。

 無事、リンデンブルク大公の竜が飛び立つと、安堵のため息が零れる。

 しんと静まり返る中、沈黙を破ったのはミュラー男爵だった。


「ミシャ・フォン・リチュオル、なぜ、私を助けるようなことをしたのですか?」

「悪いのは私の叔父なので当然です」


 あのとき、リンデンブルク大公のご威光の下だったので、犯人が私の叔父だと言わずに証言することもできた。

 必要以上に恩を売りつけることもできたのだが、さすがに良心が痛んだのである。


「それに、エアが心配していたんです。何がなんでも、助けたいと思いまして」

「この茶番はあなたが発端だったのですか」


 リンデンブルク大公やレヴィアタン侯爵を巻き込んでおきながら、茶番と言うなんて。

 しかしながら、騎士隊のねつ造、隠匿体質を前にしてしまえば、そう思ってしまうのも無理はないだろう。


「私は、平和な世の中で安心して魔法学校に通いたいんです。それが叶うのならば、なんだってします。それに関しては、きっとエアも同じです」

「エアさんも……」


 と呟いたあと、ミュラー男爵はハッとなる。


「そういえばエアさんは!?」

「我が家で保護している」

「レヴィアタン侯爵の屋敷に?」

「ああ。安心されよ」


 無理に押し入るような輩が現れたら、庭のマンドレイク達が全力で妨害し、動く落とし穴も発動して捕らえるという。

 レヴィアタン侯爵の屋敷の庭にそんな機能があったなんて驚きである。ただのレヴィアタン侯爵夫人が趣味で作った、ホラー風味のお庭だと思っていたのに。


 それから会話もなく、無言のままレヴィアタン侯爵の屋敷に到着した。

 リンデンブルク大公は国王陛下に報告すると言って、ヴィルも同行するよう命じる。

 リンデンブルク大公家の親子は颯爽と去って行った。

 客間に通されたミュラー男爵に、私は魔法薬を差しだす。


「顔の傷に使ってください」

「必要ありません。そこまで痛むわけではないので」

「その傷を見たら、エアが心配します。使ってください」


 エアの名前を出した途端、ミュラー男爵は大人しく従う。

 傷がきれいさっぱり治ったタイミングで、客間の扉が開かれる。

 やってきたのはエアだった。


「おじさん!」

「エアさん」

「よかった!!」


 エアはミュラー男爵に駆け寄り、ぎゅっと抱きつく。

 ミュラー男爵は驚いた表情でいたものの、エアがあまりにも心配する様子を見せていたので、安心させるためか抱き返していた。


「間違っておじさんを拘束するなんて酷い!」

「大丈夫ですよ。あなたの親友、ミシャ・フォン・リチュオルに助けてもらいましたから」


 ミュラー男爵がエアの親友と言ってくれたことに関して、びっくりしてしまった。

 エアが私のことを友達と呼ぶことすら、嫌がっていたというのに。


「そうなんだ! ミシャはすごいんだ!」

「いえ、私がすごいわけでなく……」


 今回、スムーズにミュラー男爵を助けることができたのは、リンデンブルク大公のご威光とレヴィアタン侯爵の鋭い眼光、二つの輝きのおかげである。

 私はただの虎の威を借る狐、もしくは金魚の糞だったのだ。


 ミュラー男爵は私のほうをまっすぐ見つめ、思いがけない言葉を口にした。


「ミシャ・フォン・リチュオル、あなたのおかげで助かりました。感謝します」

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