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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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騎士隊にて③

 警邏部隊の隊長、アイナー卿が部屋を出た途端、廊下がバタバタと騒がしくなる。

 おそらくミュラー男爵の件をリンデンブルク大公に指摘され、面会まで強要されるとは思ってもいなかったのだろう。

 相手は王弟。拒否すれば不敬罪となる。

 ヴィルはこうなるのがわかっていて、最初からリンデンブルク大公に頼んだのだろう。

 プライドもあっただろうに、早急に解決するため、折り合いをつけてくれたのだ。感謝したのは言うまでもない。


 しかしながらミュラー男爵をどこに拘置していたのか。いつまで経ってもやってこない。

 思いのほか、リンデンブルク大公とレヴィアタン侯爵は文句も言わずに待っていた。

 ヴィルは父親とレヴィアタン侯爵が一緒にいるという空間が耐えきれなかったのか、窓際に立って話しかけるなオーラを放ちながら外を見ていたのである。

 私はと言えば、リンデンブルク大公から料理についての質問攻めに遭い、白目を剥きかけていた。

 そんなこんなで三十分後――やっとのことでミュラー男爵がやってきたのである。

 犯罪者のように両手を縛られ、顔には布が被されていた。

 表情が見えていなくとも、ミュラー男爵の怒りの感情がビシバシと伝わってくる。


「殿下、お待たせしました」

「丁重に扱え。彼は犯罪者ではないのだから」

「いえ、しかし、取り調べもまともに行っていない状態でして」

「ミュラー男爵はえん罪だと言っているだろうが!」


 リンデンブルク大公は事件についての話を聞いただけだというのに、強気な対応を続けてくれた。騎士達も萎縮しきっている。

 さすがの威厳としか言い様がない。

 顔に被せてあった布を取ると、ミュラー男爵は眩しそうに目を細くした。

 瞼は腫れていて、頬には殴られた痕のような内出血があり、唇には血が滲んでいる。

 なんとも痛々しい姿だった。


「なにゆえ、このように負傷している?」

「連行時に抵抗したので、大人しくさせるための処置、です」

「魔法や薬で大人しくさせることもできただろうに、暴力で従わせるとは何事だ!」


 本当にその通りである。しかもミュラー男爵は今回の事件に限ってはえん罪だ。

 気の毒になってしまう。

 ミュラー男爵の名を騙り、騎士隊の拘束から逃走した叔父への怒りが倍増となった。


「ロルフ・ブール、確認しろ。彼は昨日拘束された犯人か?」

「いいえ、違います」


 アイナー卿の顔色がみるみる悪くなっていく。


「続いてミシャ・フォン・リチュオル、確認しろ」


 私の名をリンデンブルク大公が呼んだ瞬間、ミュラー男爵は弾かれたようにこちらを見る。

 驚いた表情を向けていた。


「彼は叔父ではありません」

「お、叔父、ですか?」


 アイナー卿に聞き返されたので、はっきり説明した。


「ええ。昨日、騎士隊に拘束され、連行されたのは私の叔父、ガイ・フォン・リチュオルでした。姪の私が目撃したので、間違いありません」


 叔父はツィルド伯爵のもとで働いていたこと、また下町にある酒場も潜伏先の一つだということ、多くの女性と関係している可能性があり、さらに娼館にもいる可能性があることはしっかり伝えた。

 レナ殿下の誘拐事件についても訴えたかったが、相手は疑惑の騎士達である。

 言っても無駄だろう。そう思って喉まで出かかっていた言葉をごくんと呑み込んだ。


 リンデンブルク大公が追い打ちをかける。


「お前達は、罪のないミュラー男爵を拘束し、連行した。誰が責任を取るのだ?」

「ひっ、そ、それは……」

「騎士隊の内部についても、調査させる。国王陛下にも報告するから、覚悟しておけ」


 リンデンブルク大公はレヴィアタン侯爵にミュラー男爵を連れて行くよう命じた。

 アイナー卿は引き留めることなどせず、「ではまた……」と弱々しい声で見送ったのだった。

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