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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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騎士隊へ①

 騎士隊は〝血塗れ候〟と名高いレヴィアタン侯爵相手でも怯まなかった。

 私達が行っても、取り合ってもらえない可能性が高い。

 どうしようか考えていたら、ヴィルが苦渋の決断を下す。


「父を頼ろう」


 王弟であり、リンデンブルク大公でもあるお方であれば、騎士隊もないがしろにはできないだろう。

 そんなわけで、ヴィルは早急に動き、リンデンブルク大公が同行するようにこぎつけたようだ。

 まさか当日に叶うとは……と、駆けつけてきたリンデンブルク大公を前に思う。


「お忙しい中、申し訳ありません」

「気にするな。今はクッキー生地を休ませている時間故、手が空いてた」


 いったい何をされていたのか……。まさか料理クラブで覚えたお菓子作りを自宅でしていたなんて。

 ヴィルは呆れた表情でいる。 

 まあ、何はともあれ、リンデンブルク大公の申し出は騎士隊も断れないだろう。

 レヴィアタン侯爵も護衛として同行するというので、圧が強い一団になってしまった。騎士隊には先触れなどなく訪問するという。ミュラー男爵を隠される可能性があるからだろう。すっかり信用はゼロである。

 馬車で向かうと思いきや、リンデンブルク大公の竜が引く竜車で連れて行ってくれるようだ。

 リンデンブルク大公が召喚の術を唱えると、深紅の巨大な竜が下り立つ。

 ヴィルと契約しているセイグリッドより遙かに大きいので圧倒された。

 背中には鋭く尖った突起があり、目つきもぎょとりと力強い。

 挨拶をすると、ふん! と鼻息を返された。


「父上の紅竜こうりゅうは気性が荒いから、あまり近づかないほうがいい」

「そ、そうだったのですね」


 なんでもこの竜は赤竜よりも稀少な紅竜と呼ばれる種らしい。

 たしかに、鱗は燃えるようなあかである。

 そんな紅竜の体にはすでに車体が吊されており、すぐに乗って飛び立つことができるようだ。

 車の内部は大人が十名くらい余裕で乗ることができるくらいの広いものだった。

 内装も凝っていて、毛足の長いふかふかの絨毯に、革張りのシックな座席、銀細工で縁取られた窓枠など、オシャレなサロンという感じだった。

 リンデンブルク大公は竜の背中に乗って操縦するという。


「レヴィアタン侯爵も竜の背中に乗ってみるか?」

「殿下、よいのですか?」

「ああ、もちろん」

「では、お言葉に甘えて」


 そんなわけで、ヴィルと私、それからどこかに潜んでいたジェムが車に乗り込むこととなった。


 リンデンブルク大公から御者席と車内が繋がった伝声管越しに『出発するぞ』という声が聞こえた。ヴィルが応じると、車体が少しずつ浮かんでくる。

 あっという間に空中へ飛び立つも、まったく振動などない。

 ヴィルは複雑そうな表情を浮かべながら、窓の外を眺めていた。


「どうかしましたか?」

「いや、父を頼りたくなかったと思って」


 本来であれば、ヴィルの力だけで解決したかったという。


「ただ、今の私はなんの実績や影響もない、ただの若造だ」

「それは仕方がないですよ。若かりし頃は、誰だってそうですから」


 王太子であるレナ殿下だって尊い身分のお方なのに、誘拐事件について大きくならず、犯人捜しも行われなかったのだ。


「権威を思うがままに使うには、年齢を重ねたさいに覚えるズル賢さというものも必要になるんです」

「そういうものなのか?」

「ええ!」


 だから上手くいかなくても気にすることはない。そうヴィルに伝えておいた。

 そんな会話をしているうちに、騎士隊へと到着したようだ。 

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