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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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ミュラー男爵を助けよ

 ヴィルとレヴィアタン侯爵がいるという応接間に向かうと、ズーンと重たい雰囲気だった。

 そうなるのも無理はない。騎士隊が拘束した犯人を取り逃がし、関係のない別人を拘束したのだから。


 エアから話を聞いたレヴィアタン侯爵が、騎士隊へ事情を聞きに行ったという。

 国内の大商人と言っても過言ではないミュラー男爵の大捕物のあとでバタバタしていたらしく、取り付く島もない様子だったという。

 レヴィアタン侯爵から事情を聞いたヴィルは、眉間に深い皺を刻み、腕を組んだ姿勢で重たいため息を吐いた。


「解決したものだと思っていたのに、まさかこのような事態になっていたとは」

「本当に恥ずかしい話で……」


 叔父は何度、リチュオル家の体面に泥を塗れば気が済むのだろうか。

 今後一切、リチュオルと名乗らないでほしい、と思うくらいである。


「その、叔父が起こした犯罪行為は今回ばかりではなくて」


 受験シーズンに、叔父はレナ殿下の誘拐未遂事件を起こしている。

 この件については父に任せ、口外しないようにしていた。

 父が叔父を拘束し、調べてほしいと打診しても、騎士隊は調査に応じなかったのだ。

 別組織とはいえ、騎士隊に所属しているレヴィアタン侯爵の前でこれを言うのは心が苦しい。けれどもはっきり考えを伝える他ない。


「今の騎士隊は、信用できないのかもしれません」


 よからぬ思考を持つ者と犯罪者が、内通している者がいるに違いない。

 そうでないと、あのうっかり者の叔父が騎士隊の拘束から逃れられるわけがないから。


 レヴィアタン侯爵は険しい表情を浮かべながら言葉を返す。


「我も、そのように考えていたところだった」


 レヴィアタン侯爵も私と同じ印象を抱いていたようだ。

 叔父については勤務先であるツィルド伯爵のもとへレヴィアタン侯爵の部下を放ったという。


「発見次第、ここへ連れてくるように命じているのだが」


 先ほど、レイド伯爵の屋敷にはいなかった、という報告が届いたようだ。


「他に思い当たる場所などあるだろうか?」

「叔父は下町の酒場――叔母の実家を拠点にしていたこともあったようで、そこも調べたほうがいいかもしれません」

「なるほど、わかった」


 レヴィアタン侯爵はすぐに部下を呼び、調査させるために下町へ派遣したようだ。


「あとは、どのようにしてミュラー男爵を助けるか、だな」

「私が証人として騎士隊に出向します」


 ヴィルには叔父を拘束したさいに使っていた偽名、ロルフ・ブールとして同行してもらい、私はミシャ・フォン・リチュオルとして、現場にいたのは叔父で間違いないと訴えるのだ。


「なるほど、その手があったのか」


 レヴィアタン侯爵はこの作戦に賛同してくれたものの、ヴィルは「待て」と制止する。


「ミュラー男爵の疑惑が晴れていない。真実が明らかになるまで、拘束させていたほうがいいのでは?」


 ヴィルはミュラー男爵が私にしたことをまだ許していない、とも主張している。


「しかし、えん罪で拘束されているのは、気の毒としか」


 レヴィアタン侯爵も「たしかに」と頷く。

 エアもミュラー男爵が捕まって心配していた。早く助けたい気持ちがあるのだ。


「お願いします、どうか」

「ミシャ、どうしてそこまでミュラー男爵のためにできる?」

「叔父が起こした事件だということもありますが、ミュラー男爵の信用を勝ち取りたい気持ちもありまして」


 ミュラー男爵は完全に心を閉ざしており、私達に欠片も気を許そうとしていない。

 そんな相手に恩を売る絶好の機会なのだ。

 ヴィルは盛大なため息をついたあと、「わかった」と言ってくれた。  

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