表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

397/435

ヴィルの作戦

「俺はミュラー商会の幹部、ロルフ・ブールだ」


 ロルフ・ブールと名乗った男性はヴィルとだけ握手を交わし、私は無視だった。

 きっとおまけか何かと思われているのだろう。


 私達をここまで案内した男は、報酬と思われるお金を受け取ったあと、いなくなった。

 どうやら働き手を紹介しても、ああやってお金が貰えるらしい。

 ますますねずみ講のようだ、と思ってしまった。

 ヴィルが前に出て、自己紹介する。


「モーリッツ・ベルファルだ」


 ヴィルは偽名と任務用の身分証を持っている。私も〝カタリナ・ヴィズマン〟という偽名と身分証を作ってもらったのだが、今回に限って使う機会はなさそうだ。


「モーリッツ・ベルファルか、いい名前だな、採用!!」


 呆れた、身分証を確認せずに採用するなんて。

 下町の食堂でさえ、働くには身分証の確認が必須だというのに。


「よし、早速だがモーリッツ、話は聞いているだろうか?」

「葉巻を売る、ということか?」

「ああ、そうだ。話が早いな。まず、葉巻を買い取ってもらうのだが、最大五箱までで、いくらいける? 一箱金貨一枚で、上手く売れば一箱につき金貨十枚以上儲けることができるが」

「商会長であるミュラー男爵に会えるのであれば、十箱買い取ることができる」


 ロルフ・ブールの目が驚きで見開かれる。

 ここにミュラー男爵を呼び出し、粗悪品の葉巻を斡旋していることについて、問いただすというのか。


「できるのか? できないのか? 手持ちがあるのが、今日だけなんだが」

「わ、わかった、少し待っていてくれ!」


 ロルフ・ブールは慌てたように言うと、倉庫の奥へと消えていった。


「おそらく、ミュラー男爵は出てこないだろう」

「私達が来ているからですか?」

「いいや、違う」


 さほど待たずに、バタバタと足音が聞こえてきた。


「モーリッツ、ミュラー男爵が特別に会ってくださるようだ!」


 遅れてやってくる人物がミュラー男爵らしい。

 けれども足音を聞いて、疑問が生じる。

 あんなふうにバタバタ足音を立てて歩く人だっただろうか、と。


 ついに、ミュラー男爵が私達の前に現れた。


「モーリッツ君! 君が、十箱も買いたいと言っているのを聞いて、ぜひとも会ってみたいと思って」


 絶句する。

 その人物はミュラー男爵とは似ても似つかない、まったくの別人。

 というか、見知った顔で、もっともっと詳しく言うのであればあの人はリジーの父親であり、私の叔父であるガイ・フォン・リチュオルだ。


「――っ!!」


 驚きのあまり叫びそうになったが、なんとか堪える。

 なんで? どうして? 何ゆえ?

 わかることは、叔父がミュラー男爵を騙っているので、葉巻を売り捌く元締めがミュラー商会ではないということだろう。


 ヴィルの表情は怒りで染まっていた。


「詳しい話を聞きたい。ここではなく、いいところを紹介したいのだが」

「おお、うまいもんか?」


 のんきな叔父は私とヴィルに気付いていないらしい。

 頭巾を深く被っている上に、薄暗いからだろう。けれどもヴィルとは一度会っているのだから、声で気付いてもいいだろうに。


「一緒についてきてくれるだろうか?」

「もちろん!」


 ここでヴィルが魔法で合図を出す。すると、足音と共に武装した人達が押し寄せる。

 おそらく、ヴィルが話していた隠密機動局の応援部隊なのだろう。

 ロルフ・ブールと叔父はあっという間に拘束される。

 外に出ると、私達をここに案内した男も捕まっていた。

 続けて騎士隊も駆けつけたようで、港町で暗躍するねずみ達を、一網打尽にしたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ