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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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約束の時間

 寝台は二台あったものの、ヴィルは私の隣で眠るわけにはいかない、と長椅子で寝たようだ。

 ロフト部分から、足がはみ出た状態で横になっている姿を見て、申し訳なく思う。

 私が長椅子で眠って、ヴィルが寝台で眠ったほうがいいのではないか、と言ったもののあっさり却下された。

 ならばジェムがウォーターベッドになってくれないか、と頼むも、すでに薄くなっていて反応すらしない。いつもの気まぐれが発動したようだ。

 今日のところは諦め、ヴィルのお言葉に甘えることにした。

 それから二時間ほど仮眠し、夕方に目覚める。

 すでにヴィルは起きていて、何かやっているようだった。

 髪と服を整え、一階に下りる。


「ヴィル先輩、お布団、ありがとうございました」

「よく眠れたか?」

「おかげさまで」


 ヴィルも問題なく眠れたというが、体の疲れは抜けきっていないだろう。

 申し訳なく思い、魔法薬入りのドリンクを作って飲んでいただいた。

 夕食はジェムに預けていた食材で簡単に作ってみる。

 クラッカーにチーズやピクルス、ハムなどを載せた軽食だ。


「すみません、こんな物しか用意できなくて」

「十分だ。ありがとう」


 軽く食事を済ませたあと、ヴィルが先ほど酒場で買い取った葉巻について教えてくれた。


「この葉巻についてだが、たしかに貴族が使うような品で間違いない。しかしながら、それは表面上そう見えるだけで、中身は粗悪品だ」

「偽物、ということでしょうか?」

「まあ、そうだな」


 通常、葉巻というのは三層で構成されており、味と香りを決める中心葉フィラー中間葉バインダー上巻葉ラッパーで包んだ状態で完成となる。

 けれどもヴィルが購入した葉巻には上巻葉の中に湿った枯れ葉とほんの少しの煙草葉がぎっしり詰まっただけの代物だったという。


「ミュラー商会がこのような品を売っていると耳にした覚えはなかったのだが」

「ええ……」


 なりふり構わず稼ぎたい事情があるのだろうか。

 とにかく、今回の潜入で詳しい状況を把握しておきたい。


「念のため、他の隠密機動局の応援も呼んでいる。何かあったときは、迷わず逃げるように」


 もしものときはレヴィアタン侯爵邸に転移し、落ち合う約束を取り交わした。


 時間になり、再度先ほどの酒場に向かった。

 昼間ほど人は多くなかったものの、それでも活気がある。

 治安も少し悪くなるのか、怪しい人達もいるようだ。

 なるべく目を合わさないように、慎重に進んだ。

 酒場の前に、先ほど約束を交わした男性が待っていた。


「ああ、来たか!」


 すっぽかされたらどうしよう、と思っていたものの、時間ぴったりに落ち合えて安堵する。

 いや、彼にとって私達はいいカモなので、なんとしてでも契約を成立させるのだろう。


「ミュラー商会の倉庫まで案内する。ただ、場所については口外しないように」

「わかった」


 男性の先導で進んでいった先は、昼間に見かけた立派なミュラー商会の倉庫ではなかった。


「こっちだ」


 案内されたのは強い風が吹いたら倒れてしまいそうな、倉庫である。

 一応、規模はそこそこありそうだが、かなり古い建物で見た目も怪しい。

 ミュラー商会はさまざまな倉庫を所有しているようだ。


 内部は灯りが点々と灯っているが、薄暗い。

 かなりカビ臭く、商品を保管している倉庫とは思えない。

 また木箱が天井に届くかと思うくらい積み上がっていて、倒れやしないか心配になった。

 そんな怪しさ満点の倉庫の奥に人影があった。


「あのお方は、ミュラー商会の幹部なんだ」

「お前達が新人か、よく来た」


 ボロボロの服を着た壮年の男性が私達を迎える。

 ますます怪しい、の一言であった。

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