表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

395/434

取引

 詳しい話は夜に教えてくれるという。同じ酒場で落ち合う約束を交わした。

 その後、二杯目の麦芽酒を水の魔石に吸収させたあと、代金をテーブルに置く。

 支払いはこれでいいらしい。

 給仕係の前を通って店から出たが、声をかけられることなどなかった。

 この会計方法で客がまともに支払うのか疑問だったものの、営業が続いているということは上手くいっているのだろう。


 地下は換気ができないからか、煙草や酒の臭いが混ざり、なんともいえない空気感だった。

 外の空気のおいしいこと、おいしいこと。

 路地を出て大通りに出たあと、人通りが比較的少ない倉庫街のほうに行き着く。

 赤煉瓦の立派な倉庫が並んでいるが、この辺りはほとんどミュラー商会が管理しているらしい。


「改めて、ミュラー商会って大きな商会なんですね」

「ここ数年の成長は本当にめざましい」


 現在のミュラー男爵に代替わりしてからは特に大きくなったと聞いていたが、ここまでだったとは。元騎士とは思えないくらいの商才である。


「ただ、先ほど聞いたような方法で商売をしているとなれば、また話は別ですよね」

「そうだな」


 倉庫街の中で、隠密機動局が拠点にしている倉庫があるという。そこでしばし休憩を取ることとなった。

 そこは倉庫街の端にあり、ミュラー商会の倉庫より規模は小さいものの、十分立派である。

 扉に隠密機動局の指輪をかざすと、解錠する仕組みのようだ。

 内部は大理石の床に瀟洒なテーブルや長椅子、棚などがある洗練された空間となっている。

 ロフトみたいな二階部分もあり、そこには仮眠用の寝台もあった。


「わあ、いいお部屋ですね」

「だろう?」


 隠密機動局は各地を飛び回り、情報収集に努めるので、このような拠点がさまざまな場所にあるという。

 床に魔法陣が刻まれており、清掃なども魔法で行っているようだ。

 ヴィルが淹れてくれた紅茶を飲んで、ホッと息を吐く。


「ミシャをあのような場に連れていきたくなかったのだが」

「いいえ、お気になさらず。いろいろ勉強になりました」


 単独で足を踏み入れることはないだろうが、次に同行することがあれば、もっと自然に振る舞えるはず。


 ジェムも姿消しの魔法を解いて、猫が背伸びをするようにびょーんと伸びていた。


「ジェムもお疲れ様だったわね」


 酔っ払いがジェムにぶつかりそうになるたびに、迷惑そうに避けていたのだ。


「それにしても、ミュラー男爵があのような商売をしていたなんて」

「連鎖販売取引を取り締まる法律はないものの、聞いていていい気持ちにはならない」


 なぜ、そのようなやり方で商売をさせているのか、謎でしかない。


「しかし、初めて耳にした話で、正直戸惑っている」


 奴隷商との付き合いがどうこうという噂を確かめるためにやってきたのに、別の問題が浮上したのだ。ヴィルが戸惑うのも無理はない。


「ひとまず、夕方辺りまで仮眠したほうがいいな」

「お昼寝ですね」


 あの酒場帰りの状態で清潔な布団で眠るのはどうかと思ったものの、ここにはお風呂もあるようだ。

 入浴後、仮眠させていただくこととなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ