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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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港町へ

 その後、ヴィルの使い魔である聖竜セイグリットに乗って、港町を目指す。

 山を越えるので馬車で向かえば数時間かかるのを、三十分ほどで到着できた。


 国と国を船で結ぶ国内の重要地点である港町は、思っていた以上に大きく栄えていた。

 商品を荷車に積んで運ぶ商人や、買い付けにやってくる店主、ここで購入したほうが安いからとやってくる人々など、たくさんの人達が行き交っていた。


「わっ!」


 あまりの人混みにヴィルとはぐれそうになる。


「ミシャ!」


 ヴィルが差しだしてくれた手を掴もうとしたら、なぜかジェムが伸ばした触手を掴んでしまった。


「ジェム、あなた、どうして?」


 ヴィルと私が手を繋ぐのを阻止したかったのか。ただいい感じになって手を繋ぐわけではないので、ここは許してほしい。


「ジェム、何をしているんだ」


 ヴィルとジェムはにらみ合い、バチバチし始めた。

 彼らのほうこそ、何をしているのだと言いたい。

 その後、ジェムが私のエスコート役を勝ち取ったようなのだが、人にぶつからないようぐいぐい引いてくれたので、思いのほか歩きやすかった。


 ヴィルと共に向かった先は地下にある酒場である。

 外から店内の様子が見えない上に薄暗いからか、皆、噂話に花を咲かせているようだ。

 ヴィルも何度か、情報収集をするためにやってきていたという。


「ミシャ、これを」


 ヴィルが手渡してきたのは、ボロボロの外套だった。

 なんでも仕立てのいい服を着ていたら悪目立ちしてしまうという。


「歩き方も少し速度を速めて、猫背気味にしていると場に馴染むだろう」

「が、頑張ってみます」


 ジェムは姿隠しの術を展開させ、ついてきてもらうようにお願いしておいた。

 くだんの酒場は裏路地にあり、地下へ繋がる階段を下りて入店する。


 扉を開いた途端、「おら!!」と叫ぶ声が聞こえたのでギョッとした。

 出入り口付近で客同士がケンカしているようだ。

 他の客は止めるどころか、やんややんやと応援している。

 ヴィルは私を守るように前に立ち、ケンカをする男性陣から離れた席に誘導してくれた。

 店内は薄暗く、全体を見渡すことはできないのだが、円卓が少なくとも百個くらいあるだろうか。

 椅子はなく、立ち飲みするようだ。

 胸が露出したドレスを着た給仕係がやってきて、オーダーを聞いてくる。

 メニューなどないのだが、ヴィルは慣れた様子で「麦芽酒を二つ」と注文してくれた。

 愛想の欠片もない給仕係は返事もせずに去って行った。


「なんていうか、こういう場所にやってきたのは初めてなのですが……すごいですね」

「ここは特別治安が悪い」


 その分、客の口は軽く、情報を入手しやすいという。


「まあ、望む情報について聞き出せるかわからないがな」


 ちょうど近くにいた男性三人組がやってきて、話し始めた。


「いやはや、酷い目に遭った!」

「あのお貴族様、俺達のことを家畜かなんかだと思っているな」

「やはり貴族は信用ならん」


 たった少数の貴族が横暴な態度を取っているせいで、貴族全体のイメージが悪くなっている。

 善良な人達のほうが多いというのに酷い話だ。

 それにしても、いったい誰について話をしているというのか。


「ツィルドの野郎、うちの嫁さんにも色目を使いやがって」

「俺の娘にも、あの女は花売りか、なんて聞いてきやがった」

「俺なんて、お下がりの女を売りつけてこようとしてきたんだ」


 ツィルドの野郎――彼らははっきり口にした。

 こんな場所でツィルド伯爵の名前を聞くことになるとは。

 彼の悪評については、まあ、意外でもなんでもなかった。 


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