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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・二章 王都での調査

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レヴィアタン侯爵邸にてその⑤

 王妃殿下を巡る問題について、何かが引っかかる。

 重要な情報を忘れているような……。


「ミシャ、どうした?」

「いえ、何か忘れているように思えて――あ!!!!」


 キャロライン! キャロライン・ド・サーベルト。

 たしか、サーベルト大公の姪で、ジルヴィードの従姉でもある。

 以前ジルヴィードが言っていたのだ。

 従姉のキャロラインが王妃殿下の侍女だった、と。


「そのキャロライン・ド・サーベルトが、子どもを産んだという話を聞いておりまして」

「むう!? ミシャ嬢、ではその者がエアの母親ということなのか?」

「いえ、父親はうちの国の大貴族だと言っていました」


 思い出した。たしか、年齢はヴィルと同じくらいだったと聞いている。


「ですので、子どもというのはまた別の人物かもしれません」

「そうか」


 キャロライン・ド・サーベルトは現在行方不明。

 サーベルト大公が所在を掴んでいないということは、まだ国内のどこかにいる可能性がある。


 これらについて、馬術大会のあとにも、その可能性についてヴィルと話したばかりだったというのに。うっかり忘れていた。


 ヴィルが考え込むような仕草を取る。何か思い出したというのか。


「ミシャ」

「は、はい」

「もしかしたら、キャロライン・ド・サーベルトと、キャロライン・アンガードは同一人物かもしれない」

「あ!!!!」


 とっさに口を手で覆ったのに、間に合わずに叫んでしまった。

 キャロライン・アンガードというのは、ルドルフの母親である。

 彼女は王妃殿下の所持品だった銀の首飾りを持っていたのだ。

 そのことから、同一人物である可能性が浮上した。


「だったらジルヴィード先生が探していたのは、ルドルフ……だったわけですね」

「おそらく」


 そうとわかれば、ルドルフからも話を聞きたい。母親について、何か覚えているだろうから。


「キャロライン・ド・サーベルトは誰の子を産んだのか」

「大貴族というのは限られていますからね」


 なんて口にしたあと、またしてもハッと思い出す。

 そんな私の挙動を、ヴィルが見逃すわけがなかった。


「また何か思い出したのか?」

「そうなのですが、その、えーっと」

「どうした?」


 言えない。少し前に、ルドルフとリンデンブルク大公の顔が少し似ているな、と思っていたなんて。

 ヴィルとレヴィアタン侯爵の視線が私に集中する。

 根拠のない話だから、言わないという選択はなさそうだ。

 もうどうにでもなれ。そんな思いで打ち明けた。


「実は、ルドルフととあるお方の顔が似ているな、と思ったときがございまして」

「では、その人物がルドルフ・アンガードの父親なのだろう。誰だ?」

「それがリンデンブルク大公なんです」


 まさか父親の名が出てくるとは思っていなかったのだろう。ヴィルの顔が盛大に引きつる。

 一方、レヴィアタン侯爵は冷静だった。


「なるほど。リンデンブルク大公であれば、王妃殿下の侍女と接触するのは難しくない」


 レヴィアタン侯爵は大貴族の中で関係が持てる者を絞っていたらしい。

 五名まで思い当たったようだが、唯一、リンデンブルク大公のみ逢瀬を重ねるのに無理がないと考えていたようだ。 


 生まれたのはルドルフよりもヴィルが先である。


「ということは、父は母が妊娠期間中に、不貞を働いたというのか?」


 レヴィアタン侯爵はいたたまれないような表情を浮かべつつ、なんて答えたらいいのかわからない、といった様子だった。

 助けを求めるように私を見るも、同じように返す言葉が見つからない。

 しばし、気まずい時間を過ごしたのだった。

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