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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・二章 王都での調査

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ミュラー男爵の屋敷にてその②

「実は、魔法学校に入学する前に、エアからお礼の印として、母親の形見を受け取りまして」

「以前、そんな話をしていましたね。あのときはエアさんがいたので、詳しく聞けなかったのですが」


 なぜそのような状況になったのか、とばかりにミュラー男爵は眉をひそめる。


「あのとき、よく見ることができなくて。よく見せてください」

「はい」


 ジェムに言って取りだしてもらったのだが、あろうことかジェムはロッコさんと奥方から買い取った、ルドルフの母親が所持していた銀の首飾りを出した。


「ああ、ジェム――」


 それではなくて、と言おうとしたら、ミュラー男爵が勢いよく立ち上がった。


「その首飾りをよく見せてください!!」

「え、はい」


 ミュラー男爵は勢いよく立ち上がると、私から奪うように銀の首飾りを手に取る。


「これは……これはあの御方が身につけていた……!」

「え!?」


 ミュラー男爵の言うあの御方というのは、エアの母親のことだろう。

 けれどもその首飾りは、ルドルフの母親が所持していた品物だ。


「あの、その首飾りは珍しいお品物なのですか?」

「一点物です! あの御方が花嫁道具として、この国へ運んできたもので――!」


 そう口にしたあと、ミュラー男爵はしまった、という表情でいた。

 興奮のあまり、口が滑ったらしい。


「すみません、今のは忘れてください」


 忘れられるわけもなかったが、ここでは素直に「はい」と言って頷いた。


「これは、とてつもなく貴重な品で、あなたが所持していい品ではありません」

「わかっています。いずれ、エアに返すつもりでした」


 返すのは銀の首飾りではなく、王太子の証のほうであったが。


「では、私のほうからエアさんに返しておきますので」

「いいえ、私から渡しますので」


 手を伸ばしたものの、ミュラー男爵はサッと避けた。


「ミュラー男爵、返してください」

「返すも何も、これはあなたの物ではない」

「ミュラー男爵の物でもありませんよね?」

「そうですが、私はエアさんの後見人ですので」

「そんなの理由になりません。今の持ち主は私ですので」

「心配せず。こちらは私がエアさんに渡しますから」

「私から無理矢理取り上げて、返したとエアに言うのですか?」

「いいえ、あなたから渡すように言われたと説明しますよ」

「なんでそんな嘘を吐くのですか?」


 やっていることは、ミュラー男爵の屋敷に忍び込んだ盗人と変わらないというと、プチンと堪忍袋の緒が切れたような音が聞こえた気がした。


「以前からあなたは、エアさんの友達に相応しくない、と思っていたんです」

「どうしてですか?」

「生意気で、上から目線で、素直じゃない。一緒にいたら、いずれエアさんの悪影響になると」

「友達を選ぶのは後見人の仕事ではなく、エアの意思ですので。過保護が過ぎると、エアを潰してしまうのでは?」


 ミュラー男爵がぶるぶる震えているのを見て、言い過ぎてしまったと後悔した。

 エアを大事に思う気持ちは一緒なのに、お互いにいがみ合うことなんてなかったのに。


「あの、ミュラー男爵――」

「許しません」

「え?」

「やはり、あなたは〝私の計画〟の邪魔になる!!」


 ミュラー男爵が片手を挙げた瞬間、 足下に魔法陣が浮かんだ。


「なっ!?」


 魔法陣から黒くうねる長い蔓のようなものが勢いよく伸び、私とジェムを拘束して――。

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