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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・二章 王都での調査

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ミュラー男爵の屋敷にてその①

 馬車に乗っていたのはミュラー男爵だけではなかった。ミュラー商店の人だろうか。男女がいて、会釈する。

 ミュラー男爵は腕組みし、話しかけるなオーラをびしばしと放っている。

 押しかけるようにいきなりやってきたので、迷惑だったのかもしれない。


「あの、手短に話しますので、馬車の中でも結構ですよ」

「いいえ、エアさんの大切なお客様ですので、そのような失礼を働くわけにはいきません」


 先ほどまで私を拒絶していた人物の言葉とは思えないのだが。

 まあいい、こうして話す機会を得たのだ。

 ミュラー男爵のもとへはヴィルと一緒に行こう、と話していたが約束を破る結果となってしまったのが気がかりである。

 簡単に会える人物ではないので、許してほしい。


 ミュラー男爵は使用人が出入りするような裏口から入っていく。当然ながら、出迎えなどない。


「ミシャ・フォン・リチュオル、申し訳ないのですが、ここにエアさんはいません」

「あ、そうなのですか?」


 その理由については驚くべきものだった。


「一ヶ月ほど前、我が家が盗人に荒らされまして、用心のために私の不在中は中央街にある宿に滞在するようにお願いしておりまして」

「それは大変でしたね」


 過剰なくらい警戒している理由は、盗難被害に遭ったからだったようだ。


「ミュラー商店は大きくなりすぎたようで、よからぬ輩に目を付けられてしまいました」


 魔導カードの大ヒットがミュラー商会の躍進を後押しするきっかけとなり、それ以外の商品も飛ぶように売れているという。

 まさかミュラー男爵に商才があるとは、意外だった。

 ミュラー男爵は商人らしくなく、体格や雰囲気だけ見れば騎士や傭兵といった戦う人の体格である。

 また、商人の持つ野心なども感じない。

 生気のない瞳はエアを前にしたときだけ輝きを放つのだ。

 そんな人物なので、なぜ商人をしているのか謎でしかなかった。


「こちらです」


 客間に案内され、しばし待つように言われる。


「お土産を持ってきたのですが」

「必要ありません」


 私に向けられた冷たい目は、誰からの好意も受け付けないというわかりやすい拒絶であった。

 適当に受け取って使用人にあげたらいいのに、断るなんて。

 改めて、とてつもなく気難しい人物だと思った。


 しばらく待つと、メイドは紅茶と茶菓子を運んできてくれた。

 誰もいなくなったあと、念のため鑑定を行ってみる。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!」


 アイテム名:スウィー茶

 属性:無

 希少性:★★★

 説明:すっきり爽やかな一番茶。紅茶の中でもハイクラスな品種の一つ。


 アイテム名:ディアマンサブレ

 属性:無

 希少性:★★★

 説明:王都でもっとも人気のある菓子店、〝ティティ工房〟の人気商品。


 もしかしたら自白剤とか入っているかもしれないなど疑っていたが、口にするものに仕掛けなどなかった。

 疑ってしまい、途端に申し訳なくなる。

 紅茶とお菓子はありがたくいただいた。


 それから五分と経たずに、ミュラー男爵がやってくる。


「お待たせしました」

「いえ」


 ミュラー男爵は一人ではなく、先ほど馬車に乗っていた傭兵みたいな筋骨隆々の男性と、細身で眼鏡をかけた知的な女性を伴って登場した。


「あの、彼らは?」


 ただの従業員であれば、客の前まで連れてこないはずだ。そう思って尋ねる。


「護衛です」


 なんでもここ最近、命を狙われるような機会があったため、傍に付けているという。

 できたらミュラー男爵と二人で話をしたかったのだが、そうもいかないらしい。

 今日は核心を突くような話題には触れないほうがよさそうだ。


「それで、話とは?」

「え、ええ……」


 ミュラー男爵はエアが所持した王太子の証については把握していたのか。

 その辺も探ってみる。


「ミュラー男爵は、エアが母親の形見を所持していたことについて、何かご存じでしたか?」

「いえ、何らかの品は持っているだろうな、とは思っておりましたが」


 王太子の証について、把握しているわけではないようだった。

 彼はいったいどれだけの情報を知っているのか。

 もう少し探ってみよう。

 

お詫び

エアのことを両親に相談するとか言いながら、せずに帰っておりましたことが、ご指摘により発覚しました。381話『両親からの呼び出し』に加筆を行いました。

ご指摘に関して感謝と共に、お詫びを申し上げます。

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