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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・二章 王都での調査

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ミュラー男爵の屋敷へその②

 なぜ裏門に回ったかと言うと、これだけの警戒体制を展開している屋敷の住人が、正門から出入りするとは思えないから。

 五分ほどかけて屋敷をくるりと回り、裏門に到着した。

 裏門は正門ほど門番はいないものの、結界を展開しているような魔法陣が塀に描かれていた。

 ミュラー男爵は魔法に精通しているのだろうか?

 それとも魔法使いを雇うようになったのか。

 わからないことだらけである。

 私は怪しまれないよう、物陰から裏門の様子をうかがった。

 こんなこともあろうかと、あんパンも用意していたのだ。

 先ほどのエッグタルトのお店で瓶入りの牛乳も買っていたので、あんパンと牛乳を持って張り込みを開始する。

 一昔前の刑事ドラマのように見張っていたものの、ミュラー男爵側に変化などなく。

 二時間ほど待って諦めかけたそのとき、裏門が開き始めた。

 すぐに駆けていくと、守衛の制止するような声が聞こえた。


「お嬢さん、これから馬車が戻ってくるんだ! 危ないよ!」


 その辺も対策を考えている。

 手にしていたブリザード号に跨がり、大地を蹴った。

 馬車が通りを走ってやってきた。商会の紋章が入っているので間違いないだろう。

 どうやらミュラー男爵はこれまで屋敷にいなかったようで、帰ってきたようだ。

 上空を旋回し、馬車に並んで窓を覗き込むと、ミュラー男爵の姿が確認できた。

 彼は私に気付き、ギョッとした表情を浮かべる。

 ミュラー男爵は窓を開くと声をかけてきた。


「ミシャ・フォン・リチュオル! そこで何をしているのですか?」

「ミュラー男爵とお話ししたくて! 手紙を送ったけれど、返事がなかったものですから」

「買い付けに出かけていて、半月ぶりに帰ってきたんです」

「そうだったのですね」


 どうやら私からの手紙をスルーしていたわけでなく、そもそも不在だったようだ。


「いったいなんの用事なのですか?」


 相変わらず、エアには優しいのに私には冷たい。

 未だにエアに悪影響を及ぼすクラスメイトとでも思われているのだろうか。

 信頼を勝ち取っていたとは思っていなかったが、想定していた以上の警戒っぷりであった。


「エアについて、話したいことがあるんです」

「エアさん、ですか?」

「はい!」


 エアの名前を出した途端、目の色が変わる。


「手短に済ませてください」

「いえ、その、ここではちょっと」

「話せないようなことなのですか?」

「はい」


 このままでは断られてしまいそうだ。

 意を決し、あるワードを口にしてみた。


「エアの母親について、お伺いしたいことがありまして」

「あなたが知る必要などないことです!」


 完全な拒絶である。

 ミュラー男爵はそれについて触れることなど絶対に許さない、とばかりの強い眼差しを私に向けた。

 もともとあったミュラー男爵の心の壁が、高く厚くなったように思える。

 この機会を逃したら、二度とミュラー男爵と面会の機会など得られないだろう。

 こうなったら、と最後の手札を切ることにした。


「実は、エアから母親の形見である宝石をいただきまして、それについての価値をお聞きしたいなと思っているのですが」

「なっ――!?」


 ここでようやく、ミュラー男爵は馬車を止めるよう御者へ指示を出した。


「ミシャ・フォン・リチュオル、あなたは本当にエアさんの母君の形見を所持しているのですか?」

「はい、入学前にいただいたんです。エア本人に確認しても問題ありません」

「それは……いいえ、必要ありません」


 ミュラー男爵は馬車の扉を開け、中に入るように促す。


「話は屋敷でお聞きしましょう」

「はい!」


 どうやら私はチャンスを掴んだようだ。

 

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