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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・二章 王都での調査

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ミュラー男爵の屋敷へその①

 待てど暮らせど、ミュラー男爵からの返事が届かない。

 送ってから四日ほど経ったが、レヴィアタン侯爵からの「いつ屋敷に帰ってくるのだ?」という手紙も届き始め、これ以上ガーデン・プラントでの待機が難しくなった。

 転送依頼を出しておけば、私宛の手紙はレヴィアタン侯爵邸に届くようになる。

 手続きをしてから、レヴィアタン侯爵邸に向かおうか。

 もしかしたらホリデー期間中にミュラー男爵との面会は難しいかもしれない。

 大きな商会の商会長で、買い出しなどで忙しいというのはエアから聞いていたが。エアのことについて話をしたい、と言ったらすぐに会えるものだと思っていたのだ。

 エアに聞いたら近況などわかるだろう。

 けれども「どうしておじさんに会いたいんだ?」なんて聞かれたら、なんと答えればいいのかわからなくなる。

 エアに黙って会うのはどうかと思ったものの、わからないことだらけな中、憶測を伝えるわけにはいかない。

 いつか話をしようとは考えているが、そのタイミングは今ではないのだ。

 こうなったら直接ミュラー男爵のお屋敷を訪問して、ご在宅か確認できないものか。

 もしもいるのであれば、外出時を狙って少しでもいいから話をしたい。


「こうなったら行動に移さなくちゃ!」


 レヴィアタン侯爵邸に滞在する準備はしている。必要な服や参考書、宿題などはジェムの中に収納しているのだ。

 もしもいないときには、手紙を守衛の人に渡して届けてもらおう。そのほうが本人の手に渡る可能性が高くなるかもしれないから。

 ホイップ先生にはレヴィアタン侯爵邸に向かうというメッセージカードを送り、不在を伝えておく。

 ガーデン・プラントの草花をお世話するチンチラ達には、ご褒美のお菓子の在り処を教えておいた。


「よし、準備ができたわ!」


 魔法の箒、ブリザード号に跨がると、ジェムが柄の先端に巻き付く。


「出発進行!」


 とん! と軽く跳び上がって呪文を唱えた。


「――飛び立て、空中飛行フライト!」


 ふわりと体が浮かんだ。

 チンチラ達の見送りを受けつつ、ガーデン・プラントをあとにしたのだった。


 スイスイ空を飛び、上空に表示される本人確認もなんなくクリアする。

 もう慣れっこだった。

 郊外の森の上空を飛び、あっという間に王都に到着する。

 ミュラー男爵の屋敷に近い場所にある、渡り鳥の風見鳥がくるくる回る屋根に降り立った。

 手ぶらでいくのもどうかと思い、途中にあった菓子店でお土産を買った。

 おいしそうなエッグタルトである。レヴィアタン侯爵夫妻の分も購入し、店を出る。

 久しぶりにミュラー男爵の屋敷を訪問したのだが、屋敷を取り囲む塀には複数の門番が立っていて、以前よりも物々しい雰囲気だった。

 私が近づくと、すぐに声がかかる。


「お嬢さん、ここに何か用事かね?」


 腰に剣を佩いた門番が、柄に手をかけつつ話しかけてくる。

 ずいぶんな警戒っぷりだと思いつつ、言葉を返した。


「ミュラー男爵はご在宅でしょうか?」

「それを君に教える筋合いはないのだが」


 物腰は丁寧だが、私を探るような鋭い目で門番は見つめてくる。


「お嬢さんみたいな年若いご婦人が、なぜミュラー男爵を訪ねてやってくるのか」

「私、ミュラー男爵が後見人を務める、エアと友達なんです。それで、少し相談したいことがあって」


 手紙を渡すだけでもいい。そう伝えたものの、受け取ってもらえなかった。


「それはしかるべき機関を通して届くようにしてくれ」


 まあ、正論である。そして主人であるミュラー男爵の情報は一切漏らさない。

 仕事ができる門番であった。


「わかりました」


 諦めた振りをして、私はそのままミュラー男爵の屋敷の裏門へと向かった。 

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