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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・二章 王都での調査

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ガーデン・プラントにて

 その後、父がポネの両親に説明したり、子ども達の父親に注意喚起をしたり、シュネ山の入山を規制したり、と忙しく過ごしていたようだ。

 私とヴィルはポネを家に送り届けたあと、予定通り王都へ戻ったのである。

 ヴィルと別れ、一週間ぶりにガーデン・プラントに戻ったのだが、庭の草木は整えられている。もしかしたら出発前よりもきれいかもしれない。

 温室に向かう途中、リーダー格のチンチラがすぐに迎えにきてくれた。


『おかえり!』

「ただいま」


 お土産にラウライフでヴィルと一緒に作ったお菓子があると言うと、他の子達もぞろぞろとやってきた。


「スノー・ベリーのパウンドケーキに、クッキーに、マシュマロ、タルト、いろいろあるわ」


 皆、瞳をキラキラ輝かせながら聞いている。

 いそいそとした様子で大きな葉っぱを運んできてもらう。お皿代わりにして、ビュッフェスタイルで楽しんでいただこう。


「どうぞ、召し上がれ」


 取り合うことなく、仲間で分け合って仲よく食べていた。

 嬉しそうにお菓子を食べる様子を見ながら、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。


「みんな、一週間、ありがとう」


 おかげさまでガーデン・プラントの心配をすることなく、ラウライフで過ごせた。お菓子を食べ終えたあと、チンチラが届いていた手紙を運んできてくれた。


「薬局の納品書と、お茶会の招待状が五通……」


 ヴィルとの婚約を発表してからというもの、このようにお茶会のお誘いが届くようになっていたのだ。

 もちろん私とお近づきになりたいというよりは、未来のリンデンブルク大公夫人との繋がりを持ちたいと望む人々に違いない。

 今は学業で忙しいので、参加できないという旨を書いて送っているのだが、そろそろ返事が大変になってきた。

 もうすでに三十通以上はお断りの手紙を書いているだろう。

 ここで悪知恵が働く。

 つい先日、授業で複製コピーの魔法を習ったのだ。

 ただこの魔法は価値がある物を作ろうとすれば、失敗してしまう。

 手紙ならば成功するだろう。

 これまで同様、丁寧な断り文句を書いて複製の魔法を施す。

 用意するのはペンとインク、それから便せん。

 基本的な低位の魔法なので、何もない状態から複製することはできないのだ。

 完成したばかりの杖、スノー・ホワイトを構えて呪文を唱えた。


「――模倣せよ、複製コピー


 手紙の周囲に浮かんだ魔法陣が輝き、便せんに文字が浮かんでくる。

 成功か、と思いきや、黒くなって燃えてしまった。

 二回目も結果が同じ。


「どうしてかしら?」


 三回目を挑戦しようとしたところで、扉が叩く音が聞こえた。


「は~い、どなたでしょうか?」

「私よお~」


 この声はホイップ先生だ。扉を開くと、麗しすぎる笑みを浮かべていた。


「ごめんなさいねえ。あなたが戻ってきた気配を感じたから~」


 さすがホイップ先生である。おそらくだが、私の魔力を把握し、ガーデン・プラントに戻ってきたのだと察知したのだろう。


「どうかしたのですか?」

「いえ、あなたの魔力がこれまでにないくらい安定していたものだから、どうしたのかと思ってねえ」


 立ち話もなんだからと部屋に招いてお茶とお菓子を囲みながら話すことにした。


「魔力については、杖のおかげだと思います」


 完成したばかりのスノー・ホワイトを、ホイップ先生にお披露目する。


「まあ、きれいな杖! 雪属性の杖なんてとっても稀少レアだわ~」

「そうなんです」


 ヴィルと一緒に材料をせっせと集め、ロッコさんの職人技で仕上げてもらったのだ。


「この杖を仕上げられる職人がいるなんてえ。もしかして、ドワーフ族に依頼したの~?」

「いえ、ラウライフにいる職人なんですが」

「ドワーフ族ではないのねえ。人間の職人で、これを作れる人がいるなんて驚きだわ~」


 ホイップ先生の目から見ても、スノー・ホワイトの出来はかなりいいようだ。


「それはそうと、そこにある焦げた物体はなんなの~?」

「失敗した複製です。お茶会を断る手紙を複製しようとしたら、なぜか失敗してしまいまして」

「ああ、それは価値のある物だから、失敗したのよお」


 なんでも私が書いたお断りの手紙は、未来のリンデンブルク大公夫人の物と見なされ、価値がある物判定になってしまったらしい。


「そうだったのですね……」

「頑張って一通一通書くしかないわねえ」

「そうですね」


 楽をしようとするからこうなったのだろう。

 手紙は心を込めて書かなければ。


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