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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・一章 春のホリデー

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大ピンチ!

 事の発端は、再度子ども達の間で父親が成し遂げたシュネ山での武勇伝の話題になったことらしい。

 ポネは一人黙っていたそうだが、途中で子どもの一人が彼をからかってしまったのだとか。

 それに怒ったポネが、自分がシュネ山をソリで駆け抜けて見せると宣言。

 子ども達は面白がって、行くのを禁じられていたシュネ山へと向かった。


「ポネは中腹から滑ってくるとか言って、一人で登っていったんだ!」

「おれらは途中で泣いて戻ってくるに違いない、と決めつけていて……」

「でも、いつまで経っても戻ってこなくて」


 待ちくたびれた子ども達は、一度昼食を食べに村に戻った。

 そろそろ戻ろうかと集合し、シュネ山に向かおうとしたら、やってきた商人が信じがたいことを言って子ども達を止めた。


「シュネ山で雪崩が起きたから、近づかないほうがいいって!」


 ラウライフでは雪崩に呑み込まれたら、死を覚悟しなければならない。

 圧倒的な自然の中では、人の命の灯火はすぐに消えてしまうのだ。


「ポネの家族には言ったの?」


 子ども達は首を横に振る。

 ポネの家族どころか、自分達の親にも言えなかったようだ。


「だって、雪崩に呑み込まれたんだ! 助けられるわけがない!」

「でも、ミシャお嬢様だったらできるかもって、急いでやってきたんだ!」

「なんでそうなるのよ!」


 頭を抱えたくなったものの、ここで躊躇っている暇はない。

 ジェムに預けていたブリザード号を取りだし、子どもの一人を指差して道案内役に指名する。


「この箒に跨がって、ポネが登っていったほうを教えるのよ!」

「もしかして、それで空を飛ぶの?」

「そうよ」

「こ、怖い……」

「雪崩に呑み込まれたポネのほうが怖い思いをしているの! つべこべ言わずに一緒についてきなさい!」

「わ、わかった」


 他人を乗せて飛んだことなどないので、怖いのは私も同じである。

 腹を括るしかないのだ。


「ミシャ、セイグリットに乗って現場に行こう。そのほうが安全だ」


 風が強くなってきたので、箒での飛行は危険だという。


「急ごう」

「はい」


 子どもをセイグリットの背中に乗せると、落ちないようにジェムがシートベルトのようなものに変化してくれた。


「これで大丈夫だから」

「う、うん」


 セイグリットはヴィルの指示で飛び立つ。

 地上はそうでもなかったが、空の上は強風が吹き荒れていた。

 ヴィルは雲の流れで上空の風の強さを読んだらしい。

 セイグリットはまっすぐシュネ山まで飛んで行き――。


「あ、あの辺りだと思う」


 子どもが指さしをした方向に、雪崩が起きた形跡を発見する。

 それは春先の気温の変化によって起きる雪崩で、川が流れたような跡があった。

 すぐにヴィルはポネの生命反応を探るため、鑑定魔法を広範囲に展開させた。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!」


 地上に巨大な魔法陣が浮かび上がると、いくつもの鑑定結果が目の前に表示される。


 名前:エルク

 属性:雪

 希少性:★

 説明:雪国にのみ生息するトナカイ。使役動物にできる。


 名前:スノー・ラビット

 属性:雪

 希少性:★

 説明:雪国にのみ生息する魔物。角は薬の素材になる。


 名前:スノー・ウルフ

 属性:雪

 希少性:★★

 説明:雪国にのみ生息する魔物。群れで行動する。


 名前:スノー・ベア

 属性:雪

 希少性:★★★

 説明:雪国にのみ生息する魔物。凶暴なため、討伐のさいは注意が必要。


 シュネ山には魔物も多く生息しているので、鑑定結果を見ながらゾッとしてしまう。 

 ポネの情報はどこかと探していたら、ヴィルが発見した。


 名前:ポネ・ルーク

 属性:無

 希少性:★

 説明:ルーク家の長男。臆病に見えるものの、実は勇敢。


「向こうだ!」


 ポネは生きているようで、すぐに上空へと向かった。

 子どもはセイグリットに乗せたまま、私とヴィルのみ地上に降りる。

 一刻も早く助けないといけない。


「ポネ! ポネ! いる!?」


 声をかけるも反応はない。

 ジェムがスコップに変化する。が、掴んで掘ろうとするも、雪は岩のように固かった。


「火魔法で溶かしながら掘るのがいいのだろうが」

「ポネがどこにいるのかわからないから、危険ですよね」

「ああ」


 どうしたものか、と思っていたらピンと閃く。


「ヴィル先輩、少し下がっていてください」


 私に任せてほしい、と目で訴えると、ヴィルは頷き後退していく。

 私はスノー・ホワイトを手に取り、思い浮かんだ呪文を唱えた。


「――いでよ、スノーマン!」


 ぐらり、と地面が揺れると、巨大なスノーマンが這い出てくる。


「お願い、ポネを助けて!」


 スノーマンは頷くと、ざっくざっくと雪を掘り起こす。

 そして――。


「ミシャ、いたぞ!」

「ポネ!!」


 ポネはソリの下に隠れていた。


「もう大丈夫よ」


 それを聞いて安心したのか、大粒の涙を零す。

 ひとまず助けることができてよかった。

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