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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・一章 春のホリデー

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ミシャの杖

 いったい何事かと思っていたら、目の前に細長い包みが差しだされる。


「ま、間に合った!」

「つ、杖が、完成したようで」


 どうやら私達の帰宅に間に合うように、大急ぎで作ってくれたらしい。

 受け取ると、信じられないくらい軽い。


「すごく軽いわ!」

「相性がいい証拠だろう」


 ロッコさんにはそれなりの重さを感じるらしい。

 なんでも相性がいい杖は、羽根のように軽く感じるようだ。

 見て確認してほしいというので、開封させていただく。

 ようやく雪属性の杖が手に入ったのだ、ドキドキである。

 無造作に包んであった包みを開くと、そこには純白のロットが出てきた。


「わあ、きれい……!」


 先端は菱形ロゼンジカットされた雪魔石が填め込まれていて、私が握った瞬間に六花模様が浮き出てきた。

 スノー・ディアの角で作られた柄部分はすべすべしていて、驚くほど手に馴染む。杖自体がまるで体の一部みたいだと思った。

 それから体中を巡る魔力の流れがはっきり自覚できるようになる。

 溢れる魔力量に驚いてしまった。


「――!」


 これまでは自分自身の魔力について把握できてなかったのに、手に取るようにわかるようになったのだ。


 変化はそれだけではない。


『――きれいな杖だあ』

『――お似合いだねえ』

『――どんな力があるんだろう?』

「え!?」


 ふわふわ降る雪を大きくしたような、白い塊が取り囲んでいる。

  この子達は精霊だ。

 私の周囲に雪の精霊達がたくさんいて、雪属性の杖を興味津々とばかりに覗き込んでいたのだ。


「ミシャ、どうした?」

「あ、えっと、その~~」


 精霊達の距離感から、きっとこれまでも傍にいたのだろう。

 私はずっと気付かないまま過ごしていたらしい。


「実は私の周囲にたくさんの雪の精霊達がいて」


 その言葉に雪の精霊達が反応する。


『――見えるの?』

『――本当に?』

『――信じられない!』


 私が雪の精霊達が見えることがわかると、ワッと辺り一面から出てきて取り囲んだ。

 飛び跳ねて喜んだり、頬をスリスリとすり寄ってきたり、歌を唄い始めたり、とお祭り騒ぎとなる。

 ここで、皆にも雪の精霊達の姿が見えるようになったようだ。

 両親は目を丸くし、クレアは精霊達に手を伸ばし、マリスは言葉を失っている。

 ロッコさんと奥方も、精霊達の姿を驚いたような表情で眺めていた。

 ヴィルは私の肩を抱いて警戒の姿勢を見せていたものの、すぐに悪い存在ではないと気付いたようだ。


「あなた達は、ずっと私の傍にいたの?」

『――そうだよ!』

『――生まれるより前から!』

『――導いたんだ!』


 ここでジェムがどこからともなく登場する。

 雪の精霊達を前に、誇らしげな様子でいた。

 まるで自分が引き連れてきました! とばかりの表情を浮かべていたのだ。


「ねえジェム、あなたにはこの子達が見えていたのね」


 ジェムは当然だとばかりの視線を向けていた。

 雪の精霊達はジェム公認だったようで、ホッと胸をなで下ろす。


 ここでロッコさんがある提案をしてくれた。


「その杖に名前を付けてくれないか?」

「いいの?」

「ああ! 一晩中考えたんだが、いい名前が浮かばなくてな」


 私も突然そんなことを言われても、ネーミングセンスなんて皆無である。

 ただ、杖を握った瞬間、お姫様みたいにきれいだと思ったのだ。


「決めたわ。この杖の名前は、〝スノー・ホワイト〟!」


 白雪姫に由来する名前である。


「スノー・ホワイトか! いい名前だ!」


 ロッコさんも気に入ってくれたようで、ホッと胸をなで下ろした。

 無事、杖を受け取って安堵しているところに、誰かが複数でやってくる。


「またミシャお姉様のお見送りですか?」

「誰かしら?」


 走ってやってきたのは、数日前に村で見かけた子ども達だった。


「ミシャお嬢様!!」

「大変なんだ!!」


 子ども達の顔色は真っ青だった。


「あなた達、どうしたの?」

「ポネが! ポネが!」

「シュネ山に行って、雪崩に呑み込まれたんだ!」

「なんですって!?」


 とんでもない事態に、くらりと目眩がした。 

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