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情報収集

 帰り道、ヴィルにルドルフの母親の事情について語って聞かせた。


 ルドルフの母親はとある高位貴族のメイドとして働いていたようだが、屋敷の主人のお手つきとなり、結果ルドルフを妊娠してしまったらしい。

 その後、ルドルフを産むといじわるな夫人が屋敷から追いだし、各地を転々とした挙げ句、最終的にラウライフの地へ流れ着いてきた。


「それからルドルフの母親は妻帯者と恋に落ちて、別れさせたあと正妻の座に収まったようですが」


 別れた前妻から嫌がらせを受け、商人の男と共に失踪したと聞いたのが最後。


「その後、魔王騒動のさいにルドルフ・アンガードから、母親の死を知らされた、と」

「ええ」


 ルドルフの母親について調べないといけないだろう。


「まずはお父様とお母様に聞いてみましょう」

「そうだな」


 夕食後、両親に時間を作ってもらった。

 いまだヴィルを前にすると、二人とも緊張しているように見える。

 大貴族の息子なので、そうなってしまうのも無理はないだろう。


「それで、話というのは何かね?」

「ルドルフの母親について聞きたくって」


 話し始めた途端、両親の表情が曇る。


「お父様、お母様、どうかしたの?」

「いいや、彼女はすでに亡くなっているという知らせをルドルフから受けていたものだから」


 なんでもルドルフは私が知らないところで、父の同情を買うために母親の死について告げていたらしい。


「しかし、君達はどうしてルドルフの母親について聞きたいと思ったんだい?」

「それは――」


 ヴィルの顔を見ると、説明してくれた。


「実は彼女が生きている、というのはご存じでしたか?」

「なっ――!?」

「生きてるですって!?」


 どうやら生存については把握していなかったようだ。ロッコさんと奥方とだけ接触し、そのあと上手い具合にラウライフを脱出したのかもしれない。


「キャロライン・アンガードは息子であるルドルフの所在を探しているだけでなく、魔法学校の騒動の元凶となったあるアイテムの所持について探っていたようで」

「待ってくれ……。情報量があまりにも多くて」

「魔法学校の騒動については気にしないで。たぶん、学校側は隠すつもりだろうから」

「なんてことだ」


 事情を聞いた両親は顔色を悪くし、ぐったりしていた。


「巻き込まれる前に、キャロライン・アンガードの情報について把握しておきたく。何かご存じでしたら、教えていただけますか?」

「彼女については……はあ、よくいる事情を抱えた王都からの移住者だと思っていたよ」


 両親とルドルフの母親の付き合いは深いものではなく、一度だけ私とルドルフの婚約が決まったさいに家に招待し食事を共にした程度である。


「そのあとも誘っていたんだがね、体調不良を理由に断られていたんだよ」


 息子同様に、ルドルフの母親もラウライフの環境に適応できず、体を壊してばかりだったようだ。


「私達も心配して、いろいろ支援をしたかったのだが」


 なんでもルドルフの母親は他人から施しを受けることを酷く嫌っていたらしい。


「ミシャと結婚したら家族も同然になるのだから気にしないでくれ、と言っても、頑なに受け入れてくれなくて」


 ルドルフの母親が心を許すのは、唯一味方になってくれる者だけ。


「この地で見つけた伴侶は、前妻の味方になりつつあったから、見切りを付けたのではないか、と思っていてね」


 ルドルフの母親は計算高く、警戒心が強い人物だとわかる。


「何かとんでもない事情を抱えていて、自分を守るためにそういうふうに振る舞っていたんだろうな、とは思っていたんだけれどね」


 両親はルドルフの母親が王都のどこで働いていたのか、誰と関係があったのか、などの情報も把握していないらしい。


「彼女については、ルドルフから話を聞いていたミシャのほうが詳しいだろう」

「そう、かもしれないわ」


 新たな情報は入手できなかったものの、ルドルフの母親の人となりを理解できた。


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