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依頼

「すまない、話を逸らしてしまったな」


 依頼を受けてもらえるのか、今一度聞いてみた。


「もしも可能なら、作っていただきたいのだけれど」

「俺なんかでいいのか?」

「ロッコさんだから、安心して素材を預けて、依頼できるのよ」


 王都でも雑貨店などで武器の類いを見たときは、ロッコさんが作る以上の武器なんか置いていなかったように思える。

 私が知る限りでは、もっとも腕のいい鍛冶職人だろう。

 どうかお願いします、と頭を下げた。


「そこまで言われたら、やるっきゃないな!」

「本当に!?」

「ああ!」

「ありがとう!!」


 王都で鍛冶職人を探すとなれば難航しそうだ、と思っていたのだ。

 ロッコさんが引き受けてくれるとのことで、ひとまず安堵する。


「ただ、製作は少し時間がかかるかもしれない」


 急ぎではないので大丈夫だ。じっくり時間をかけて作ってほしい。

 ロッコさんに何度も頭を下げ、依頼は完了と思いきや、ヴィルが思いがけない相談をし始める。


「このお守りアミュレットを直せるだろうか?」


 そう言って懐に入れていたハンカチの包みを開く。


「これは……」

「ミシャ、すまない」


 私が出発前にヴィルに渡した雪の加護を付与したお守りアミュレットだった。


「先日、雪魔石を作ったさい、ミシャの杖を握ったとき、砕け散ってしまったみたいで」

「そうだったのですね」


 他人の魔法に干渉したら大ケガを負う、という話は魔法学校の授業で何度も聞いてきた。

 ヴィルのケガが思っていたよりも酷くなかったのは、私が渡したお守りアミュレットの加護があったからだという。


「ずっと言い出せなくて」

「いえいえ、どうかお気になさらず!」


 お守りアミュレットはきちんと役割をこなしたのだ。

 ただヴィルはこれを元通りにしたいようで、ロッコさんに修繕できないか話を持ちかけたようである。


「どうだろうか?」

「ああ、この程度だったら元通りにできる」

「感謝する。依頼料はどれくらいになるだろうか?」

「二人の愛の結晶なんだろう? 婚約祝いに無償で引き受けてやるよ!」


 ヴィルはいいのか、と戸惑っている様子だったが、お言葉に甘えることにしたらしい。


「いつ王都に戻るんだ?」

「まだ決まっていないのだが」

「だったら滞在中になんとか直しておこう」


 ちなみに雪属性の杖に関しては、成功報酬だという。


「失敗して素材を無駄にしてしまう可能性があるからな」


 引き受けてもらう代わりに、失敗しても失った素材については不問とした。


「本当にそれでいいのか?」

「ええ、また集めたらいいだけの話だから」


 雪魔石だけは今ある品が最高級の物だろうが、これもまた作ればいいだけの話である。


「できる限りのことはする」


 ロッコさんはそう言って手を差し伸べてきたので、しっかり握手を交わした。

 鍛冶工房をあとにしたと、ヴィルはしばし考え込むような素振りを見せていた。


「何か気になったことでもあったのですか?」

「いや、あそこまで腕のいい鍛冶職人が、どうして王都ではなく、ラウライフにいるのかと思って」


 王都で商売をしていたら、もっと稼げるだろうとヴィルは言う。


「まあ、ここは各地からさまざまなワケアリの人々が集まる、最果ての地みたいな場所ですので」


 ロッコさんも何かしら事情があって、この地を永住地に選んでくれたのかもしれない。

 私が物心ついたときからいたので、なんの疑問にも思っていなかったのだ。


「そういえば、ロッコさんとの会話中にもなんとも言えない顔をしていましたが」

「ああ、それは、レナハルトの使い魔が竜ではなかったから……」


 たしかに、言われてみればそうである。

 王家の血を引く者達の傍には、竜が侍ることが多いようだが、レナ殿下の使い魔は一角馬ユニコーンだ。


「竜を使い魔として従えているのは、男性が多いのでしょうか?」

「その辺も調べたほうがよさそうだな」


 今はあまり深く考えないほうがよさそうだ。

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