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付与魔法

 雪属性の杖が完成したら、それは今後一生かけて使うことになるだろう。

 だからありったけの魔力を詰め込んで、完璧なものにしたい。

 ヴィルの魔法陣が私の魔法を支えてくれる力を感じていた。

 大丈夫、絶対上手くいく。

 そんな思いを込めつつ、雪魔法を完成させた。

 目の前にダイヤモンドダストみたいなキラキラ輝く雪がはらはら舞う。

 いつもの雪魔法とはぜんぜん違った。

 すさまじい力を含んでいるように思える。

 思わずヴィルのほうを見ると、いい調子だとばかりに頷いてくれた。


 次なる魔法に取りかかる。

 具現化させた雪を魔鉱石に封じ込めなければならないのだ。

 集中し、呪文を唱えた。


「――授け与えよ、付与エンチャント!!」


 ぱきん、と何かが弾けた。

 何かと思ったら、ヴィルが展開してくれた魔法陣が破損している。

 それに気付いたのと同時に、目の前が真っ白になった。

 くらくらと目眩も覚える。

 この脱力感を伴う感覚は、授業で習った。

 確実に、魔力が枯渇している状態なのだろう。

 魔力は十分に残していたはずだ、それなのにどうして?

 今すぐ魔法を中断させないといけないのに、魔力の放出を止めることができなかった。 握っていた杖がガタガタ揺れていたが、その様子を他人ごとのように見てしまう。

 このままではいけない。杖を落としてしまったら、魔法が暴走する。

 わかっているのに……意識がだんだん遠のいていく。


「ミシャ!!」


 ヴィルが杖を持つ私の手を強く握った。

 ばちん! と杖が反抗するように衝撃破を放つ。

 私はダメージを受けないが、ヴィルはそうではないだろう。


「――ッ!!」


 ヴィルの手に血が滲んでいた。

 離して、と言いたいのに、言葉にならなかった。

 魔法は失敗だ。

 せっかく発見した魔鉱石も無駄にしてしまう。

 それよりも、なんとか抑えなければ。

 なんて思った瞬間、目の前にジェムが躍り出る。


「ーーーー!!」


 ジェム、ダメ!! と叫びたかったのに、ヒューヒューという息づかいしか出てこなかった。

 何をするのかと思いきや、ジェムは触手を伸ばし、私が完成させた雪魔法と付与魔法を物理的に掴むと、魔鉱石へぶち込んでいるように見えた。

 地下部屋が眩い輝きに包まれる。

 ヴィルが私を強く抱きしめ、守ってくれるのがわかった。


「……?」


 光が収まると、ヴィルが描いた魔法陣が消え、代わりにダイヤモンドのように輝く石が落ちているのに気付く。


「これは……」

「待て、鑑定魔法で先に調べよう」


 ヴィルは私を支えながら、鑑定魔法を展開させる。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!」


 目の前に鑑定結果が表示された。


 アイテム名:雪魔石

 希少性:★★★★★

 説明:雪属性の魔鉱石から作られた上位魔石


「ヴィル先輩!」

「どうやら成功したようだな」

「やっ――!」


 喜びを口にしようとした瞬間、目の前が真っ暗になる。

 どうやら無理をしすぎたらしい。

 その場で意識を手放してしまった。


 ◇◇◇


「ん……?」

「ミシャお姉様!?」

「クレア?」

「どこか気持ち悪いところはありませんか?」

「いいえ、なんとも」

「よかった」


 どうやら私は雪魔石を作ったあと、気を失っていたらしい。


「リンデンブルクさんがミシャお姉様を抱きかかえたまま、血相を変えてお父様のところにやってきたそうよ」 

「あ、そうだったのね」


 どうやら迷惑をかけてしまったようだ。 


「リンデンブルクさん、ミシャお姉様に無理をさせてしまったことに対して、責任を感じているようで」

「ヴィル先輩のせいじゃないの。完全に私のミスだから」


 最高レベルの雪魔石を作ろうとして、雪魔法に魔力を込めすぎてしまったのだろう。

 大きな力を付与するには、大きな魔力を必要とする。

 わかっていたのに、魔法に集中するあまり、計算ができていなかった。


 起き上がろうとしたら、まだくらくらしていた。


「ダメですよ、安静にしていないと」

「そ、そうね」


 魔力を大量に消費したので、回復までしばしかかるのだろう。


「ミシャお姉様が目覚めたと、報告してきますね」

「ええ、お願い」


 クレアがいなくなったのを確認すると、はあ、とため息を零してしまった。 

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