ミシャの家族と
お詫び
9カ月ぶりのラウライフへの帰郷とありましたが、3部4章でヴィルと共に帰り、両親へ挨拶するエピソードをすでに書いておりました。
349話『荷造りをしよう』350話『ラウライフへ!』352話『帰宅』も修正しております。
大変申し訳ありませんでした。
「ミシャお姉様~~~~!」
クレアが私めがけて走ってきて、思いっきり抱きついてくる。
「お会いしたかったです!!」
「私も!」
数ヶ月間会っていない間に、大人っぽい雰囲気になっている。
爵位を継ぐために勉強と経験を重ねているからだろうか。
背も少し高くなっていて、いつの間にか私の背丈を追い越していた。
ただ中身は変わらない、私のかわいい妹である。
母はヴィルと言葉を交わしていた。
「リンデンブルク大公のご子息、ヴィルフリートさん、お久しぶりね」
「ヴィルフリート・フォン・リンデンブルクです。お会いできて光栄です」
「まあ、ありがとう。クレアもご挨拶なさい」
クレアは探るような視線を向けたあと、素っ気なくぺこりと会釈するだけだった。
そんなクレアを父が注意する。
「こらこらクレア、しっかりヴィルフリート君に挨拶するんだ」
父に言われてクレアはしぶしぶといった様子で自らを名乗る。
「どうも、お久しぶりです」
クレアはこれでいいかと父をひと睨みしてから、長椅子にすとんと腰を下ろしていた。
メイドが紅茶を運んでくる。ラウライフでよく飲まれている、スノー・ベリーの葉っぱから作ったものだ。
少し赤みがかるのが特徴で酸味がある。これを飲むと、故郷に帰ってきたんだ~と実感した。
一息つくことができた、と思ったのは私だけだったらしい。
父は緊張しているのか目が泳いでいた。母はクレアを見てため息を吐いている。クレアはなぜかヴィルを睨むように見つめていた。ヴィルは少し居心地悪そうにしている。
なんとも言えない気まずい空気に気付いてしまった。
「あー、えーっと、ヴィル先輩、疲れていませんか? 少しお休みになったほうが」
「いいや、問題ない」
大丈夫だと言われ、どうしていいものかわからなくなる。
そんな中、クレアが思いがけない質問をヴィルに投げかけた。
「リンデンブルクさん、前回は時間がなくて聞かなかったのですが、ミシャお姉様と本当に結婚するつもりなのですか?」
ヴィルの眉がぴくんと動く。
クレアは私を心配するあまり、少し反抗的な態度にでるかもしれない。そう思っていたが、想像以上にツンケンしていた。
「もちろん本気だ。伝わっていなかっただろうか?」
「ええ! 何か裏があるのかと思って心配なんです」
「どうすれば信じてもらえる?」
「それは長い期間をかけて、態度で示していただかないと――」
父はぱんぱんと手を叩き、お開きだと言う。
「ミシャ、クレアと二人っきりでゆっくり過ごしなさい。私達はヴィルフリート君と話をするから」
「わかったわ」
食い下がろうとするクレアの腕を取り、ずるずると引きずるように部屋をあとにする。
私室に向かい、クレアを解放した。
久しぶりとなったマイルームだが、きれいに清掃されているようで、埃の一つも落ちていなかった。いつでも使えるように、整えてくれていたのだろう。心の中で感謝する。
クレアは腕組みし、頬を膨らませていた。
「あの、クレア、どうしたの?」
「まだいろいろ聞きたかったのに!」
十分ヴィルを追い詰めていたように見えたが、クレア的にはまだまだだったという。
「クレア、座って。お話ししましょう」
「……」
言うことを聞かないクレアを、背後から優しく抱きしめる。
「あなたはいい子ね」
「ミシャお姉様の婚約者相手に、生意気な態度でいたのに、どうしてそう言えるのですか?」
「私のために、厳しい態度でいてくれたのでしょう?」
クレアが理由なく、他人を嫌うわけがない。
きっと私を思っての言動だったのだろう。
「違う、違うんです」
クレアに回した腕に、涙がぽた、ぽたと流れ落ちてきた。
「まあ、どうしたの?」
「――っ!」
しばらく話せそうにないようだ。ひとまず励ますようにぽんぽん叩いて落ち着かせることとなった。




