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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・一章 春のホリデー

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帰宅

 前回ヴィルと共に訪問して以来、実に四ヶ月ぶりの実家である。

 たった数ヶ月しか経っていないのに、懐かしく感じてしまうのが不思議だった。

 家族はみんな元気だろうか。わくわくした気持ちを胸に抱いての帰宅となる。

 我が家は敷地だけは広いので、セイグリットも場所を選ばずに着地できた。

 屋敷の前に下りると地面の雪が舞い上がる。

 着地の振動で屋根や木々に積もっていた雪もドサドサ落ちてきた。

 若干屋敷全体も揺れたからか、誰かが慌てた様子で外に出てくる。よくよく見たら、父だった。


「いったい何事――こ、これは!?」


 初めて目にするであろうセイグリットを目にした父は、目を丸くしていた。


「お父様、私よ!」

「ミシャなのか!?」

「ええ、ただいま!!」


 ジェムが先に下りて着地用のクッションに変化したので、そこをめがけて飛んだ。

 父はさらにギョッとしたが、無事、下り立ったのを確認すると大きなため息を吐いていた。

 続けてヴィルも下りてくる。

 それに気付いた父の表情に緊張が走った。


「ヴィルフリート君、久しいな」


 父の言葉に対し、ヴィルは深々と頭を下げた。


「リチュオル子爵、急な訪問を許していただきたく」

「は、はあ、これはどうも丁寧に……」


 父はしどろもどろと挨拶を返していた。


「予定が早まったと連絡してから訪問したかったのですが」

「まあ、そうだね。春のホリデーはもう少しあとだと聞いていたから」

「いろいろあったの」


 魔法学校での騒動は、北の最果てであるラウライフにまでは届いていなかったらしい。


「いやはや、立ち話もなんだから、部屋で話そうではないか」

「お邪魔します」


 そんなわけで、ヴィルと共に客間へ向かうこととなった。

 父は母や妹クレアに私の帰宅を報告するというので、しばし待っておくようにと言われる。ジェムはラウライフの景色が珍しいからか、窓に張り付いて外を眺めていた。

 父の足音が聞こえなくなると、隣に座っていたヴィルは「はーーーーー」と深く長いため息を吐く。


「ど、どうしたのですか?」


 ヴィルにとって雪深いラウライフは再訪だが、春の積雪に驚いたのかと思ったが違った。


「いきなり父君が現れたから驚いた。まだだろうと思って、完全に油断していた」


 たしかに、私も父が様子を見に来たので驚いた。

 普通の屋敷であれば、異変があった場合まず使用人が出てきて確認するだろうから。


「うちの使用人は最低限しかいなくて、その上、父は一日中動き回って働くような人ですので、あのように偶然すぐ外に出られるような場所にいたのでしょう」

「そうだったのだな」


 屋敷の最深部でどっかり構えているような、ヴィルの父であるリンデンブルク大公とは真逆の存在なのだ。


「とても緊張した。失礼など働いていなかっただろうか?」

「ぜんぜん! とっても丁寧に接していましたよ」

「そう見えたのならばよかった」


 いつものヴィルにしか見えなかったのだが、かなり動揺していたようだ。


「緊張するような親ではありませんので、どうか気楽に接してください」

「ミシャの父親相手に、そんなことできるものか」

「どうしてですか?」

「嫌われたくないし、あわよくば気に入られたいと思っているからだ」

「そ、そうだったのですね」


 そんなふうに思ってくれていたとは気づきもせず。なんだか嬉しくなる。


「ミシャ、よければなんだが、母君や妹君についても知りたい」


 前回も挨拶したものの、軽く行う程度だったので、しっかり知っておきたいという。


「いいだろうか?」

「はい、喜んで!」


 母は柔軟性があって、社交好きで、領民とも気さくに会話している。貴族女性としては珍しいタイプだろう。


「母は父と違ってどっしり構えているタイプで、性格に裏表もありませんので、身構えるような相手ではないと思います」


 妹クレアは私よりもしっかりしていて、両親のいいところ取りみたいな性格である。


「クレアはもしかしたら、少し生意気な態度を取るかもしれません」

「楽しみにしておこう」


 そんな会話をしているうちに、両親とクレアがやってきたようだ。 

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